第23話、点と線
オンラインゲームで異世界の女神様に遭遇してから半月ほどの今日。
あれから何度かゲームを介して話をするうちにフレンド登録までする仲になった。
『これは凄いぞ。負ける気がしない』
「うわっ神様、そんなに一人で突っ込んでいかないでくれ。支援できないよ」
『むう、遅いぞ、もたもたするでない』
今日は二人でパーティを組んで狩りに来ている。
ちなみに自分のキャラはアークビショップ。ヒーラーの上位職だ。
こっちのキャラも早く上の職業カーディナルに進化させたい。
しかし、ソロでそこまで上がるには厳しすぎる。
それはともかく、
今現在 女神様のルーンナイトに色々とブーストを掛けて支援している。
やはり、と言うか何と言うか・・パーティプレイを知らない女神様は回復役を気にせず無視して自分だけ怒涛の快進撃をしている。二人だけだし まぁ良いけどね。
『はぁーっ、最高に気分が良いのだよ。
今日は0.2ポイントも経験値が稼げたんだよ。また今度付き合う事を許します』
「ダンジョンで攻撃魔法を使えるようにしてくれたら 何度でもやりますよ」
相変わらず俺がチャットに文字を打ち込まなくても会話が成り立っている。
さすかみである。
『まーだそれ言ってるのですか。諦めが悪いです(# ゚Д゚)』
「だって、探索楽しめないし。俺も弱いの嫌いなんだよね」
『最強の魔導士ともあろうものが情けないのです』
それとこれとは話が別だぞ。
『今更、設定を変えれば世の中大混乱になりますよ。それでも良いのですか?』
「そりゃあ最初は混乱するだろうけど・・しゃーないだろ」
『ふむ、分かりませぬか?。アホですね』
おい、
『もし攻撃魔法が解禁されたら・・十中八九こちらの世界の言葉で言うところの
大規模なテロが起きますよ。そして魔法使いは危険視されます。良いのですか?』
「テロって・・?ダンジョンの外では魔法が使えないだろ」
『ダンジョンの一階は町みたいに成ってて人が多いですよね、ねっ』
「っ‼・・・・。ありえる」
平和とされる日本ですら刃物を持って無差別殺人する狂人は存在する。
毒ガスを使って無差別殺人を平気で行う教団を名乗るテロ集団まで実在する。
そんな奴らが銃を手すれば銃乱射で大量殺人するだろう。
まして魔法が使えるなら広域殲滅魔法を群衆に使う事は間違いない。
さらに、資源を不法に持ち出したい国が破壊工作に使う可能性すら有る。
日本の平和は盤石では無いのだ。
結果として世間が【魔法使い】や【探索者全体】に向ける認識は最悪となる。
たしかに、それはまずい。
『そもそもマコトは今でも強いです。私の規制の抜け道を的確に突いていますよ。
砂を使って点の攻撃をするなんて驚きました。まさに盲点でした』
「でもなー・・・工夫はしてるけど複数の敵に弱いし、目が無い魔物には通用しなかったり、今でギリギリなんだよ」
攻撃以外のスキルなども活用してはいるけど、火力が無ければ今後 深い階層のモンスターには通用しない。今のままでも生活には困らないけど・・
何と言うか、限界を見せ付けらるのは さびしい。
『しょうがないですねぇ。でも仕様は変えられません』
だろうな・・・。
『何を落ち込んでますか、魔法使いが使える火力の高い攻撃方法はまだまだ有るのです。ただ、まぁ・・マコトにしか使えないテクが必要ですけどね』
俺だけ・・うわっ、草
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そのころ
「これまでで最大の規模ですか?」
「はい。先日規模の変動を確認しました北海道南部にございます七飯ダンジョンですが大気中に存在する成分や魔物の強度、ほかにも細かな変化が観測されています。
他のダンジョンのそれと比較しましたところ・・最大と言われた大阪ダンジョンの二倍の規模は間違いないと推測されます」
「すでに当社も産出品の良い階層にはセーフティエリアを確保する為に調査チームを数組ほど送り込んでおります」
「面白い事になったわね。これからの時代はダンジョン産の資源をいかに的確に手に入れるかで決まるわ。大量生産で安物を売る時代は終わったのよ」
とある企業のオフィスではダンジョンの変化に伴い、野心を滾らせた熱い会議が開かれていた。
「ただ、やはり一番の問題は資源を集められる有能な人材が不足している事でしょう。わが社が契約している探索者を担当する秘境から動かす訳にまいりません。
優秀な学生の青田買いにも限界がございます」
予期せぬダンジョンの変化によって優秀な探索者の争奪戦が行われていた。
特に、物品鑑定のスキルを持つ斥候職はそれだけで大企業にスカウトされ、レベルが低くても安定した収入が約束された。
それもそのはずで、例えばミスリルという幻想とされていた金属を現地で判別出来るのは今のところスキル持ちの独壇場であり必須な能力なのである。
高価なレアメタルは少量でも価値が高い。
年俸や契約金などが高くとも採算は取れるのだ。
今後はさらなる新しい資源が発見される可能性が高く企業は獲得に必死だ。
そして、それらを採集できる強い探索者も引く手数多であった。
「近代兵器が使えないなんて皮肉よね。結局 最後の決め手は人・・ですか。
優秀な狩人が時代の最先端とか、原始時代にでもなったのかしら?」
「他国の軍部と癒着が噂される大企業ほどこの問題は大きいようですから必ずしも逆風とは言えません」
「人間どもは科学を信仰して思い上がっていたからね。良い薬だわ。
だいたい、この星の表面に這いまわり寄生して生きている人間ごときが世界の全てを知っているかのように考える自体が思い上がりも甚だしいのよ。
百歩譲って、もしもこの世界が人間ごときが全てを知れるような世界だったら?、そんな底が浅くて薄っぺらで深みも無い単純な世界なんて気持ち悪くて住んでられないじゃない」
「しかしながら人間は科学の発展によって宿り木たる母星をも滅ぼす力を持ちましたから思い上がるのも無理は無いかと・・。同族を焼き殺して世界を滅ぼすとは・・
魔族よりも魔族らしい存在です。転生した我々も住み易いと言うものです」
「転生できて喜んでたのに、また世界が滅びたら他の世界に転生出来るかしらね。やれやれだわ」
「そう言えば、一部の宗教には極楽という異世界が有ると言われておりますな。
老人たちはその世界を夢見て転生したいと念仏を唱えるらしいです」
「何ッ、異世界転生はオタク達の妄想だけでは無いの?。面白いですね」
「そのようです。若者の創造をバカにしている老人達ほど熱心に異世界を夢見ているようです。
「他の世界にアニメやゲームが有ると思ってるのかしら。
有ったら奇跡だわ。そんな つまらない所に行きたいのかしらね、バカだわ」
「いえ、何でもその世界に行けば坊主になれるそうです。
しかもスパルタな指導者の弟子と成って一生坊主の修行をさせられるとか・・。
それを自ら望むとは、この国の老人は恐ろしいほどのドМです」
「絶対に行きたくないわ。この世界を死守しないとね・・」
「その心配には及びません。その世界に行けるのは異世界まで思いを飛ばして案内を頼める魔王様レベルの強い念力が必要なのです。異世界まで念を飛ばせる大天才を弟子にスカウトしたい者の魂胆が透けて見えますな」
「とりあえず現地に行くわ。この好機は我が
「しかし・・・」
「他の会社も既に動いているはずよね、何か文句あるのかしら?」
「この件に関しましては既に会長である
「おじいちゃまとは別でダンジョンの調査をするわ。魔王の四天王だった私が行けばチョロイものよ」
「お嬢様、そのような妄想は10年早いかと・・。それに3歳の子供をダンジョンに入れていた、など噂されては当社といたしましてもいささか外聞が悪くございます」
「年齢制限するなんて失礼しちゃう。要はダンジョンに入らなければ良いのね。
この
「お嬢様、誘拐されないでくださいね」(3歳で篭絡とか言うなし)ぶつぶつ
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ところ変わって七飯ダンジョンの1層、大セイフティエリア。
ダンジョンの規模が大きくなりこのスペースも大幅に広くなった。
そんな訳で広くなった場所は新築ラッシュで賑わっている。
場所を抽選で勝ち取った企業が倉庫や自前の買取受付を建設しているからだ。
基本的に資源や素材の管理は国に一括される。
独自の買取り受付を作る企業は国の審査や税金の支払いを明確にすることで事前に資源の数量を確保する事が許されていた。
日本の企業と言えどダンジョンからの不正な持ち出しができないのは当然な事と言える。
そして、一層が賑やかなのは他に各企業の探索者勧誘が激化している為でもある。
その過熱ぶりたるや まるで大学の入学式でサークルや運動部が新入生勧誘に躍起になる姿を彷彿とさせた。
「あ?、魔法使いかよ、必要ねえな他を当たりな」
「そっちから馴れ馴れしく声をかけて来たくせに偉そうにすんなよ。三流企業が」
「うっせえな、こっちは忙しいんだ。役にも立たないゴミは邪魔するなよ、営業妨害だぞ」
「俺がゴミならそれに集るお前らはハエだろが」
その日、俺こと藤原 真は何日か振りに探索に来たのだが・・・七飯ダンジョンはその姿を変えていた。もうグダグダである。
女神様よ、魔法解禁してくれたら こいつ等 全部吹き飛ばしてやるのに・・・
まずい、テロリストの心が分かって来たかも・・・
人は過剰な力を持つと狂気も持つらしい
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