第15話、弟子が増えた?
探索実習の学生たちが続々とダンジョンに入っていく。
一般の探索者になった今だから気が付いたが・・大迷惑だ。
獲物の奪い合いは勿論だが少し進むたびに探索者とニアミスしたのでは精神的に疲れるのだ。
特に今日のように初心者のレベル上げを目的とした場合、効率を上げようとするなら危険な深さまで潜らなくてはならなくなる。
それなら日を改めれば良い話なのだが、姉のレベル上げはとっとと終わらせてお帰り願いたいので今日でけりをつけたい。
おっと、ダンジョンに入る前に言っておくべき大事なことが有った。
「姉ちゃん、入る前に大事な事を約束してくれ。これが守られないなら一緒にダンジョン入らないし戦いも教えないからな」
「なっ、何よ急に」
「魔法使いの特性はレベルが上がった時に最初に表示されるのが炎属性魔法のスキルを取るかどうかの確認だ」
「あっ、知ってる。OKすれば良いのね」
「ちがーうう。逆だ逆、絶対にOKするなよ」
「「どうしてダメなの?」」
ん??、声がハモった。何だ・・
「早く教えて・・」
俺の服を引っ張る女の子がいる。誰?
身長は140㎝前後五分刈りの頭で・・一見すると男の子。
声や雰囲気で女の子と分かるかな。
これで男の娘だったら姉さんが狂喜しそうだけど・・。
「かっ、可愛いぃぃ。君、名前は?」
やはりか・・
「私は・・
茉莉野さんの妹?じゃあ、この子が先日の全裸少女?
言われなければ分からなかった。
「貴方が藤原 真さんですね。助けてくれてありがとうございます。
そして・・私の全てを見た責任を取ってください」
おいおい言い方ぁ‼
「真・・貴方こんな子供に手を出したの?弟がまさかのBLなんて・・」
ほら見ろ、バカが勘違いするし。
説明するのもめんどくさいレベルの勘違いだし
「責任って何・・結婚しろって事か?」
「えっ‼あの、その・・(それも悪くないけど)このままだと私ダンジョンに入るの禁止になりそうなの。私もお姉ちゃんといっしょにダンジョンで冒険したい」
戦い方を教えてって事か? そう言えばこの子も魔法使いの特性持ちだったな・・
しかも一度死にそうになったし、そりゃあ親ならダンジョン禁止にするだろう
昨日
彼女も心配してるんだろう。
でもなぁ・・ただ禁止したら反発して家族崩壊しそうな熱意があるぞ、この子。
「分かった、俺が責任もって
「ん♡お願い。あ、でも結婚も捨て難いかも・・」
夢見るお年頃か、下手に反対意見を言うと余計に熱くなるから放置で。
「姉さんも妄想から帰って来い」
バシッ☆
「イタイ」
「話を戻すぞ、炎属性魔法のスキルを取ると最初に覚えるのがファイヤーボールの魔法だ。大抵はこれに皆が飛び付く。でも、強くなりたいなら手を出すな」
魔法使いのレベル2で覚えるのが炎属性魔法のスキル、レベル3で水属性、4で風属性、5で土属性と選択が増えていく。
それぞれ最初はスキルレベル1でボールを打ち出すタイプの魔法を使える。
本来ならこれらの魔法だけでパーティでも充分活躍できるはずだった。
しかし、スキルを司る女神の嫌がらせで魔法使いの派手な攻撃魔法はカスのような威力しか無い。
どんなにスキルレベルを上げてもだ。
その役に立たない魔法に ほぼ全ての人が引っ掛かる。
早くパーティで役に立ちたいと思う気持ちが攻撃魔法を選ぶからだ。
レベルが上がるたびに手に入るスキルポイントをさらにつぎ込んでも魔法の威力は上がる事は無い、結果として役立たずの魔法使いが量産されてきた。
今では魔法使い特性持ちは最弱ジョブだと子供でも知っている。
俺がこの泥沼に填まらなかったのは前世で魔法使いだったから。
魔法の種類と習得の順番を知っていたからに過ぎない。
「うぅ、私 最初に炎属性魔法取っちゃった、もうおしまいなんだね」
「
「うん」
「ならまだ間に合うよ。要は魔法付与というスキルが出たらそれに全て使いたいだけだから 一つくらい使っても大丈夫だ」
「でも、私たちはスキル無しなのにどうやって戦うの」
そうなんだ、俺も最初は苦労したんだ。地味に弱い魔物を倒してコツコツとね。
でも、今日は時間無いからパワーレベリングするけど
「俺が戦って二人のレベル上げるから、それまでは我慢してくれ」
「私でも強くなれるの?」
「ああ、直ぐにとはいかないけど一人でも探索できて金持ちになれるぞ」
「それなら私も配信で稼がなくても生きていけるのね」
「配信すればバグるかもな。自分が魔法使いなのを証明してから魔物をガンガン無双すれば見てる人は驚くぞ。強くなる方法を秘密にしておけば謎の魔法使いとして売れるかもな」
「良いわね。そのアイデア。使わせてもらうわ」
二人とも目がお金マークで輝いてきた。やる気になってけっこうな事だ。
「さあ、行こうか」
「「うん」」
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「あっ、お姉ちゃんだ」
「えっ、まさか莉々奈?って何でこんな場所に」
ここはダンジョンの4層目、此処までは最短ルートをほぼ駆け足で進んで来た。
もう少しで次の階層に行けるのだが、他のパーティが道を塞いでいる。
成績優秀なパーティとされる毬奈たちのグループが戦っていた。
相手はコブリンとオークの混成集団。
通路の分岐点で魔物に挟み撃ちされて不利な状況らしい。
左右に10匹ほどの魔物と戦っているのは学生が7人。
学生側はほとんどが前衛タイプの脳筋パーティか。
状況だけ見ればかなりピンチかな・・
「一応聞くけど助けは要る?」
「藤原君?。えーっと・・うん助かるよ、牽制してくれるだけで良いから」
毬奈(まりな)のチームは三人で左手のオーク3匹をを相手にしている。
反対の右手のチームは男四人。
当然援護するのは毬奈のチームに対してだ。
「あぁ?、助け何ていらねぇよ。俺たちの獲物に横殴りするなよ」
聞いてもいない右手から怒鳴られたし。
「おい、あれ、女のパーティに寄生して有名になった魔法使い野郎だぜ」
「今度は俺達に寄生する気か?役立たずの魔法使いは帰れ」
「能無しでも死なれたら俺たちの寝覚めが悪いからな」
「だいたい年下のくせに生意気なんだよ」
戦いの最中にギャーギャー煩い奴らだ。
それだけ元気なら助けは要らないだろう。
それに奴らは上級生らしい。この程度の相手は自分で何とかしろ。
そもそも偉そうに騒ぐ暇が有ったらさっさと雑魚をかたずけて欲しいものだ。
「そんじゃ、
「えっ、何言って・・」
ザシュッ、ビシュッ、
この階層のモンスターは資金的にも経験値的にもショボイので流す程度でいい。
素早く間合いを詰め、園芸用のクワを振り回しオーク三匹の首を切り飛ばす。
「えっ、うそっ」
驚く毬奈さん。前衛職の自分たちが苦労していた相手を瞬殺されて混乱している。
ここはダンジョンだ、言わば実社会。
学校みたいに同じ土俵、同じ条件下での競い合いなど存在しない。
学校を卒業したての社会人が最初にぶち当たる壁がこれだ。
ダンジョンではレベルの差も有れば武器での差も出てくる。
彼女たちが使っている学校から支給されている武器は量産品のノーマル武器だ。
人間相手なら立派な武器だが魔物に対しては力不足。
えっ、俺のは武器ですらない?
そこは工夫もしてある。
以前 手に入れた千剣ミミズの牙を先端に取り付けているので切れが良い。
少しの魔力を付与するだけで立派な武器になる。疑似的な魔剣だ。
「ほらっ、行くぞ」
俺はもう学生じゃなくプロの探索者だ。
無駄な時間を使わずに金になる階層まで行く。
戦いを見て呆けている弟子?、姉さんと
後ろで男たちの叫び声が聞こえるが知らん。
暫く進むとまた通路が分かれている。左に行けば下に降りる階段だ。
目指していたレベル上げの階層に到着したのだ。
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