第参十六話! 報復のマリオネット 4

 同日 午後12時38分 和光第二高等学校 グラウンド


 蹴りを喰らったヤンキーが地面に打ち付けられ、口から血を流して死んだようにピクリとも動かなる。


 「く、クソがァ! 数じゃこっちが有利だ! 袋叩きにしちまえ!」


 殺す......全員残らずぶっ殺してやる! 乱れていた陣形をまとめ上げ、身構え始める。


 「舐められたもんだな......行くよ日脚!」横で馴れ馴れしくばななが俺に話しかけて来る、今更どのツラして俺の横に立ってんだ! 「三下がいくら束になったってあーしらには、か......」


 「三下のヤンキーが俺の横に立つな......ぶっ殺す!」ばななの顔面目掛けて左脚を蹴り込み! 直撃を受けて地面に倒れた。


 「うっ......ひ、日脚......」まだ息があるみたいだ、悪運の強い女が......近くに転がったコイツ愛用のバットを拾い、横たわる頭の側面に強い一撃を振りかざした! バットの折れる衝撃音が鳴り響き、頭から血が流れ今度こそ動かなくなった。


 「ま、まじかよ......アイツ自分の仲間のばななを!」


 「死んだよな......あの血の量! 絶対死んだよなァ?!」


 折れたバットの破片を地面に捨て振り返り、ヤンキーの集団を睨む。


 「に、逃げろ! 殺される! 殺されるゥ!」俺も見るや否や、慌てて後続が正門に向かって走り出す。


 「何逃げてんだよ!」全員殺してやる! 俺は全速力で走り、逃げまとうヤンキーの後頭部に飛び蹴りを喰らわす! 「殺す! 殺す! 殺ォす!」一人、また一人と動かなくなって地面に倒れていき、正門前で追ったが半分以上取り逃してしまった!


 「おいテメェら! 何逃げてんだよ!」振り返ると校舎の3階......会長の部屋?! 「げぇ?! 日脚だ! 日脚がいたぞ!」


 「そこは......会長の部屋だ、土足で踏み込んでんじゃねぇ!」窓から顔出したヤンキーを追って校舎に入る! 1階や2階はほとんど廊下に人が倒れている、学ランを着たヤンキーもいれば、うちの学校の生徒もちらほら見える。


 無抵抗の生徒をよくも......会長もこんな風に! 体の内からふしふしと殺意が湧き出てくる! 


 (!殺せ殺せ殺せ殺せ!)


 階段を駆け登り3階に上がる。「出て来い畜生がァ! 土足で会長の部屋に入りやがってェ! 全員まとめてぶっ殺してやる!」廊下に出るが誰一人いなかった。「出て来やがれ! ヤンキーが尻尾巻いて隠れてんじゃねェ!」


 そっちがその気なら! 順番に教室の扉を開けて隠れてないかあぶり出す! 「出て来い畜生がァ!」


 「きゃあ?!」


 「おい止まれ! それ以上近づくとこいつらボコすぞ?!」女子生徒を盾にヤンキーが立て籠もっていた。


 「なに人質なんか取って......そういう事か」


 「な、何がだ!」


 「そうやって人気のない狭い場所に閉じ込めて、いたぶって恐怖心植え付けて......殺したのか!」いてもいられずヤンキーに飛び蹴りを喰らわす! 


 「や、やめろ......やめてくれ頼む......」鼻と口から血を出しながら俺に命乞いをしてくる。


 「黙れェ!」容赦なく倒れた頭を強く踏んでとどめを刺す! 「死んで詫びろクソヤンキーが!」


 「きゃあぁ!」頭から血が流れ、靴底が血で染まる......部屋中から悲鳴が鳴り響きながら俺は部屋を出て隣の部屋に入った。


 「ひ、日脚?! なんじゃいつもと違う!」底には生徒の姿は無く、キモロン毛含めた3人のヤンキーがいた。


 「ようやく本命だ! 死ねひあ......!」正面から無防備に突っ込んで来るヤンキーの喉に一撃蹴り込む!


 「クソったれが!」倒れた瞬間、仲間が仇撃ちと言わんばかりに無策で突っ込んで来る。


 「おい待つんじゃ!」顎を横に蹴り、骨がきしむ音を発して床に倒れ込む。「お、お前......なんか今日いつもとちがっ!」キモロン毛の胸倉を掴んで壁に叩きつける!


 「会長をどこにやった......」


 「なに?!」


 「会長をどこに攫ったって聞いてんだァ!」


 「ごほっ!」キモロン毛の腹に膝を蹴り込んで無理やり吐かせる!


 「どこにいるんだ......答えろ!」更に腹に蹴り込む!


 「ごっはぁ! ......し、知らん。なんのことかわからん?!」


 「しらばっくれんな! この畜生が! 吐け! 吐け! 吐けェ!」居場所を喋るまで蹴り込む。何度も......何度も......何度も......!


 「げっ......はぁ......はぁ......わしゃ......知らん......なんも知らんのじゃ!」


 「なら......死んでろォ!」手を放し、腹に全力の一撃を蹴り込む!


 「ぐっ......」腹を抱え込み、胃の中の物を全部床にまき散らして倒れた。


 どいつもこいつも......口を割らねぇ。「どこだ......どこにいるんだぁぁぁぁぁ!」教室を飛び出して、残りの部屋を無作為に開けて調べる。


 2-1......いない! 


 多目的室......ここにもいない!


 月美先輩のアトリエ......先輩が寝てるだけ、いない!


 会長の部屋......ここから顔出したヤンキーがいたのに、もぬけの殻だ!


 3階にはいない! なら4階だ! 階段を駆け昇り、4階に脚を踏み込む!




 同日 午後12時44分 和光第二高等学校 4階


 「がはっぁ!」なんて脚力だ?! 目を開けると視界が赤く染まった、恐らく日脚の靴に付着した血が目に入ってしまった......


 クソ......それでも何とか起き上がると、もうすでに日脚が目の前まで迫って蹴り込む寸前だった! 「なっ?!」寸前で両腕で防ぎ押し返しす!


 「よくも......よくも会長を!!!」休みなしにまた蹴りこんで来る!


 「違う! 俺じゃない!」とてもじゃないが聞く耳を持ってくれない......やるしかないか。


 (!闘魂技発動 ライオット・アーム!)


 悪く思うなよ......とてもじゃないが今のお前を止めるには、お前を倒すしかない! 迫りくる日脚の蹴りをかわし、横腹を強く小突く!


 「ぐっ......!」痛みをこらえ、少し体制が崩れる。続けて弱るまで絶え間なく体に拳を打ち込む! 顔や腹痛みが蓄積する部位を集中的に狙う。


 「沈めェ!」数分間の打撃の末、とどめの一撃を顎に当て床に倒れる。これで脳震盪が起きて立ち上がれなくなるはず。


 少し様子を見て起き上がらないと確信して、屋上に続く階段を昇ってドアを開こうとしたが、内側から鍵をかけられ屋上に出れない。クソがっ! これ以上追えない、なら会長を保護するか。会長さえ見つかれば日脚も正気を取り戻すはず!


 急いで来た道を引き返し、あの開かずの部屋へと向かうと廊下を走った時、「なっ?!」足首を掴まれ、バランスを崩して足が止まった。


 ま、まさか?! 「かい......ちょう......」振り返ると日脚が俺の足を掴んでいた! 涙を流し、焦点の定まらない朦朧とした目で俺を睨む。


 「離せ......」前に進むたび、日脚も一緒に引きずられている。「もういい離せ! 後の事は俺に任せろ!」だから離してくれ! 痛々しくて見てられない!


 「い、嫌だァ......離さない......絶対に離さねぇ!」


 「ぐあっ!」バランスを崩して床に倒れてしまった。その隙に日脚が俺の服を掴んでよじ登って来る。「これ以上は......! 目を覚ませ日脚!」


 「お前を......殺す......会長を殺した......お前を殺すまで! この手は離さねェ!!!」胸倉を掴んで最後の力を出して俺の顔面を殴りかかるが、その拳は虚しくも、狙いが逸れ、床に打ち付けられた。


 「警察だ! 全員大人しくしなさい!」そして後ろから警察官がやってきて、日脚を引き剥がして拘束された。


 「離せェ! 離せよクソ!」必死に暴れるも、本職のデカに敵うはずもなく押さえつけられる。


 「いい加減にしないかこの悪ガキがァ!」


 「あまり強く抑え付けないでください、脳震盪を起こしてます......」


 「何言ってる、こんなにの元気じゃないか?!」


 「さっき制止するために顎を強く打ってわざと起こさせたんです。元気なのが不思議なぐらいですよ」理由を話してもガキの戯言として受け止めらる、どこのデカも見下すクズばっかだ!


 「暴徒を起こしたとみられる生徒一名確保。救急隊を校内に送り込んでください!」


 「離せ! 会長が......会長がまだ!」


 「大人しくせんかバカモンが!」


 少しして水色の制服を着た救急隊二名が担架を持ってやって来た。「大丈夫ですか? 立てますか?」


 「はい......それより、一緒についてきてください」立ち上がって二人を開かずの部屋に通ずる階段まで先導した。


 「どこ行くんだよ畜生がァ!」


 「この上の部屋に生徒がいます。状況は分かりませんが、もしかしたら重体の可能性も......」


 「わかりました。確認してきます」


 「お願いします」二人は階段を昇って行く。少しして「大丈夫ですか? ......要救助者一名確保!」担架に人を乗せて階段を降りて来る。


 担架には石浦瑛馬が乗せられていた。すれ違いではあったが頭を固定され気を失っていた......


 「あぁ......ああああ......!」そして遠くからではあるが、日脚の目にもそれが見えた。「ああああああああああああぁぁぁ!!!」現実を目にして落胆する悲鳴が廊下に響き渡る。



                                   4高統一編 END

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