第参十五話! 報復のマリオネット 3
同日 午後12時35分 和光第二高等学校 4階
片っ端から潰した甲斐あって、徐々にコイツらの目的が分かった。目的は日脚と会長石浦瑛馬の無力化。話によると、以前から西高のスケバンを率いる成田万葉との密会を重ねており、昨日両者の間で協力同盟が結ばれたと情報が入り、危機感を感じ急ごしらえで攻めてきたという話だ。
にわかに信じがたいが、美保のスケバンも自衛のために作ったヤンキー組織という経緯を知っているため、ありえない話ではない。
真実は後だ、これだけの騒ぎなのに日脚と会長の姿が見えないのはおかしい! たまたま学校にいない? 日脚はともかく、昼休みの初めに食堂で会長がうどんを食べてたのをこの目で見た!
「いたぞ! 囲め囲め!」クソ......廊下の両脇から昇って来たヤンキーどもに囲まれた!「真澄! 日脚見つけたぞ!」
真澄?! 人込みを潜り抜けて背の高い金髪マッチョが俺の前に姿を現した。「あぁ? 誰だコイツ! 全然違うやんけ!」俺を日脚と間違えたヤンキーが真澄に頭を殴られ人込みの後ろに消えてった。「日脚がこんなカッコイ、イケメンな訳ないやろ! どない目しとるん?!」
「す、すいません......でもさっきからアイツ片っ端から仲間倒してるんすよ」
「ほぉ......なんや、正義の味方気取りかお前?」やりたくは無かったが......無関係な奴が殴られるのは癪に障る。
「コイツ無口なんすわ! うんともすんとも言いませんぜ!」
「きっとぶっさいくな声やからコンプレックス抱えとるんやろうて!」喋り終わるとこっちに向かって全速力で走って来た。見た目のわりに脚が速い......けどそのスピードで向かってくることを呪うんだな。
(!闘魂技発動 一撃SHOT!)
右手を腰の位置で引いて走りながら拳を突き出す。上手く体に隠したつもりだろうが、もう見飽きた。奴の拳を交わすと同時に俺の拳をみぞおち突き刺し、一撃で倒し奴は廊下に倒れた。
「ま、マジかよ......真澄が破れただと?!」この真澄ってのは相当強いらしい、目の当たりにした取り巻きが固唾を飲んだ顔をしている。
俺が一歩前に出ると怖気づいた様に揃って後ろに下がる。雑魚が勝てないと悟ったのだろう一歩、また一歩下がるが、勿論これが罠であることも知っている。息を殺して静かに忍び寄って闇討ちするつもりなんだろうが、気持ちが高ぶっているせいで肝心の気配を殺し切れていない。
なら、今から秒で目の前の奴ら沈めたら、お前らどんな反応するよ? 俺はすぐに前の集団に向かって走り出した。「な、なんでこっちに?!」身構える隙も与えない、集団を素早く壊滅させ振り返ると、闇討ちを企てた後続の集団が唖然として立ち止まっていた。
声も出せないほど怯え切った集団に向かって一歩前に出ると、「ま、マジかよ勝てねぇ逃げろ!」尻尾巻いて階段を降りて逃げ出した。
よし、これで邪魔はいなくなった。この階にいなかったら、後は屋上と体育か......
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
「な、なんだ?!」 突然外から人の叫び声がした。見てみるとグラウンドで東高のヤッキー集団相手に誰かが一人で闘っていた。遠くから見て日脚なのを認識したが......いつもと何かが違うと感じた。
「なんだ? この嫌な感じは......」口に出した直後、上の階から生徒3人が慌てて降りてきた。怯えた様子で、トイレ前の手洗い場に駆け寄って全員泣きながら嘔吐しだした。「おい! 大丈夫か?!」いてもいられず近寄った。
「嫌だぁ......捕まりたくない! 俺は何もしてないのに......」
「こんなことになるなんて思わなかったんだ! 僕は無実なんだ信じて......」
「もう嫌だよ......帰りたい、おぇっ......!」
全員狂ったように懺悔しながら泣き崩れている......「何があった! 答えてくれ何が?!」すると1人が階段の上を指さした。この階段の上には確か......古い空き部屋! 何年も使われなくなって鍵が無いと入れないはず! なんであんな所を指さす? 「あの空き部屋がどうしたんだ?」訳を尋ねても何も言ってはくれなかった。
自分の目で見ろって事か......屋上は反対の階段からでしか行くことが出来ない、意を決して階段を昇り始める。1段ずつ上がるにつれ、明かりが入らない薄暗い空間が不気味に感じ徐々に足取りが重くなる......昔博多の廃ビルで死体を見つけた記憶が脳裏をよぎる。不気味な事思い出してんじゃねぇ! ここは学校だ、そんなもんある訳が......
「あれ? 困ったな......道ふさがれちゃった」最後の段に足をのせた瞬間、開かずの部屋から一人の男が出てきた。同じ制服を着ているが......
「お前、この学校の生徒じゃないな......誰だ?」一目でこの学校の生徒じゃないと見抜く。
「お前こそ誰だ? データーじゃ......ヤンキーはいないはずだろ!」
「なっ?!」突然蹴られ、階段から一気に転げ落ちる。「がっ......! させるか!」俺が倒れた隙に逃走を図ろうと素早く階段を駆け下りるが、起き上がり道半ばで進路を塞ぐ。
背は少し低めで茶髪のボブ髪。顎に黒い布マスク......今の時期花粉症でマスクつけても違和感がない、それでうまくこの学校に侵入できたのか。「邪魔だな......まぁ弱そうだし、3分で片づけるか」手をクロスさせた後、腰付近で拳を突き出し構える。
「空手の構え?!」どうかわからんが武術を会得してると見受る。東高のヤンキーはこんな芸のある事は出来ない。厄介だ......今までのでは通じない!
「シッペアジャヌ......」小刻みにジャンプしながら徐々に間合いを詰め、右脚を横腹目掛けて蹴りこんでくる! 後ろに引いて避けるが、またそのまま横腹目掛けてまた蹴りこんでくる! 今度は避けきれず腕で防いだが、間髪入れずまた同じ個所を蹴り込んでくる!
クソッ! またか......! また同じやり方で防いだ。3回同じ攻撃、何か裏があるに違いない......防がれて脚が地面に付いた瞬間、またすぐに同じ攻撃を仕掛け、また同じように防いだ! また同じ攻撃......もしかしてコイツ、俺を倒す気が無い? コイツが蹴るたび俺は防ぎ、距離を取ろうと俺は少し後ろに下がる。するとすぐに次の攻撃の為に前に出て蹴る......
そういう事か! また次の攻撃がきたが、今度は防がずもろに喰らう「ぐっ!」
「なに?!」横腹に突き刺さる痛みをこらえ、すぐさまコイツの脚を腕で挟んでロックする。
動きが読めればこっちのもんだ! 胸倉を掴みもう片方の脚を払い、地面に倒し馬乗りになって顔面を1発殴る!
「クソがッ! 邪魔だ!」拳を振りかざした際に腹を素早く5発も殴られ攻撃が止まり振り降ろされる。 起き上がって走りだした。
なんて速さだ......! すぐに走って追いかけるが、打撃の痛みもあってうまいことスピードが出ず追い付けない......「クソっ......逃がすか!」それども何とかスピードを出して走り、奴が階段まで差し掛かった所で下から昇って来た人とぶつかった。
「そいつを捕まえろ!」
ぶつかった奴に向かって捕まえるよう叫んだが、「邪魔だァ! どけェ!」あろうことか無視してこっちに走って来る!
「クソッ! そいつこの学校の生徒じゃない! だから捕ま......」
「会長をどこにやったァァァァァァ!!! 出てこい畜生共がァァァァァァ!!!」この声......グラウンドで聞いた叫び、その正体は日脚のものだった。
「日脚......お前」そこにはいつもの日脚はいなかった。運動靴が血で染まり、目から涙が流れている。そして全身から謎のオーラに包まれ、とてもじゃないが正気には見えない。見ているだけで何かが体に突き刺さる感覚に襲われる。
「うっ......ねぇキミ知ってた? あの
「なっ?!」この状況で日脚になんて嘘を! 「でたらめだ! アイツの言葉を信用する......!」日脚に話した途中、気づいたら目のに血まみれの靴底が広がり、次の瞬間には激痛とともに赤く染まった廊下の天井が映っていた......
「悪く思わないでよ、こっちは所詮お仕事でやってるだけだから」
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