第参十参話! 報復のマリオネット

 て......転校?! まだ入学して2週間も経ってないぞ?!「もう次入る高校も決めてあるんだ」


 「そ......そうなんだ」成り行きじゃなくて、前々から決めていたんだ。じゃあ今日学校に侵入したのも......俺からしたらほんの数時間ほどしか付き合いがないけど......そう思うとなんか寂しくなるな......


 「に入ろうかなって」


 「って言うんだ」へ~どこにあるんだろう。


 「いやって言う名前じゃなくて。、アンタの通ってる高校に入るって話! 和光第二高等学校だっけ?」ひあしの高校じゃなくて、日脚の高校に入る?! それを聞いた瞬間、耳の裏が熱くなって生唾が口の中に溢れ出る。


 「えぇぇぇぇぇぇぇ?! な、なんでよりによって俺の学校なんだよ!」


 「あーしってさぁ強い奴と闘いたくてヤンキーやってんじゃん。強い奴が集まりそうな所ってどこか考えたら、カモ高って事に気づいてさぁ。だから入ろって思って」


 「そんな理由で高校を選ぶなよ!」選ばれた方はたまったもんじゃねぇよ.....


 「このままパイセン達にホステスまがいな事され続けるぐらいなら、日脚と会長ちゃんと一緒に恨まれる道の方が楽しいじゃん!」


 「しれっと俺と会長を巻き込むな! どっか知らない高校で勝手にやってろよ!」


 「もう決めたもん。明日編入手続きするし」失敗して卒業まで大人しくこのカラオケで働いてろよ。などと思っているとさっきのバイトが醬油ラーメンを運んで来た。


 「う~す! 趣味の醬油ラーメンお待たせしやした~」ちゃんと店長の手作りって言わないと、お前が趣味で作ったって思われるぞ。「ねぇねぇ俺もそろそろ休憩なんだけど、一緒にここでまかない食べていい?! いいよね!」テーブルに置いた途端食い気味に俺たちに言ってきた。


 「う~ん、今友達と食べてるからダメ~」こういうのはあえて濁して言うのに、ハッキリと言えるのすげぇな......


 「え~......かしこま!」このバイトも落ち込むそぶりを見せた途端、人が変わったように明るく部屋から出て行った。


 「あのバイト薄っぺらで有名だからあんまし好きじゃないんだよね」


 「へ~」あんな大学生にはなりたくないなぁ......まぁ食べるか。割りばしを割いて麺を掴んで口に運ぼうとした時だった、ブレザーのポケットに入れたスマホがぶるぶると小刻みに鳴り出した。


 タイミング悪いな......ビデオ通話? 画面には会長の名前とリクトモのアイコンが表示されていた。


 「どした?」


 「悪い、ちょっと電話に出るわ」右にスワイプして通話を始めた。「もしもし? どうしたんすか」向こうの映像がぼやけて映る。


 「......1年1組本田日脚......」スマホから流れる声を聴いた瞬間全身に寒気が走った。会長の声じゃない?! 


 「だ......だつ......」得体の知れない恐怖で上手く言葉が出ない。


 「うん? 会長ちゃんこんな声だっけ? 今の完全に男の声じゃねぇ」だからこそ俺は今固まってんだ! とんでもなく嫌な予感がする......


 「お前は......俺たちを騙し......混沌と恐怖をもたらすため......村人の皮を被る悪魔め......」


 い、一体何を言って「ちょっと変わるけださぁ、それアンタのスマホじゃないよね。どうやって持ち主から奪った!」いてもたってもいられなかったのか、横からばななが割り込んで来た。


 「......今宵......審判の時が訪れ」


 「だからどうやって持ち主から奪ったって聞いてんだろ! 耳ついいてねぇのか! 答えろや!」さっきまでのおちゃらけたキャラとは一変、マジギレして怒鳴り出す。


 「......お前が悪魔でないと証明しろ......」突然通話が切れ無数の写真が送られてきた。場所は全部和光第二高校の校内、しかしそこに映っていたのは学ランを着た無数の生徒が木刀で校内を荒らしまくっていた。


 「なんだよこれ......」こういうのは映画でしか見た事がない。机はひっくり返され、窓ガラスが1枚1枚割られて廊下に散乱している異様な光景だ。


 「サイテー......」次に送られてきたのは生徒が襲われて逃げ回ってる写真だった。どれも写真越しに悲鳴が聴こえて来そうなものばかりだった。


 そして最後に送られてきた写真で俺たちは......内側から滲み出る怒りに囚われてしまう......




 同日 午後12時28分 和光第二高等学校 食堂


 この学校に来て早2週間。少しづつではあるがこっちでの生活に慣れてきた。見知らぬ土地で最初は不安だったが、俺みたいなやつにも話しかけてくれる友達が出来てそいつらといつもこの食堂で談笑しながら昼食をとるのが日常となっていた。


 でもそんな日常は窓ガラスが割れる音共に突然崩れ去って行った。


 「今の聞いたか?!」


 「あぁ」それまで穏やかだった空間を黙らせる不吉な音......賑やかな話し声が消えて静まり変える。


 そして数秒の沈黙の中一人の生徒が慌てて食堂に駆け寄って「おい大変だ?! 大量の不良が攻めてきた!」一瞬何を言ってるのか理解が出来なかった。しかし徐々に外から聴こえてくる素行の悪い怒号が中にまで響き渡る頃には、少しだが理解して窓から正門前の様子を見る。


 「カモ高が調子乗ってんじゃねぇぞ!」


 「やられっぱなしじゃ俺ら2年のメンツが立たねんだよ!」


 「おいゴラァ日脚! 出てこいぶっ殺してやる!」


 なんだよこの数?! 正門から校舎にまで一面黒の学ランで埋め尽くされている! この規模の襲撃は戦争以外ありえんぞ?! 


 でも何でこんな時に? 「どけゴラァ! 日脚どこだ!」考える猶予も無かった、東高のヤンキーが食堂になだれ込んできやがった! 「耳にネギでも詰まってんのか! 日脚はどこか聞いてんだろうがァ!」一人のヤンキーが近く似た生徒を金属バットで殴り倒した。鈍い金属と共に地面に倒れた瞬間、その場にいる全員一斉に悲鳴を挙げパニックに陥っる。


 「喋んねぇなら一人ずつぶっ殺してやる!」食堂のテーブルを思いっきり蹴り飛ばし3人ほど武器を掲げ生徒に襲い掛かろうとする。


 「冗談じゃねぇ、おい止せ!」気づいた時には口と体が同時に動いて、女子がバットで襲われる寸前に間に入って、左手の甲で受け止める!


 「なんだお前!」攻撃を止められて驚いた顔で俺を睨む。


 つい......間に入っちまった。もう腕は使わないって約束したのに......妹にも......先輩にも誓ったのに......


 「おいどうした? 何睨み合ってんだよ?!」やっぱり逃れれられないのか......せっかく手に入れた平穏な生活を潰した代償......


 「ち、ちげぇよ......コイツが女守って睨んでんから睨み返してんだよ!」お前ら関東の軟派野郎には到底敵わない、格の違いってのを体に叩きこんでやる!


 (!闘魂技発動 一撃 SHOTワンショット!)


 みぞおちを正確に下から突き上げ一撃で気絶させ地面に叩き捨てる。久しく使ってないが、腕は落ちてない。


 「な、なんだと?!」次はお前だ、一撃で沈めてやる! 素早く2人目の間合いに入り同じ個所に右拳を突き刺し無力化する。


 「き、聞いてねぇよ?! カモ高にいるヤンキーは日脚1人のはずだろ!」やけになってしっちゃかめっちゃかに振り回すバットをかわし、同じ個所に拳を突き刺し鎮圧した。


 東高の中枢勢力も所詮こんなチンピラ共の集まりか。「お......おい、安西? お前......」ホントは見せるつもりは無かったんだが、見られたからには......


 「おい! 俺が出て行ったら、このドア閉めて入ってこれないようバリケード作れ!」


 「こんな時にどこ行くんだよ安西?!」


 「......ヤンキーども全員沈めに行ってくる!」そう言い残し食堂を出て行く。

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