第参十弐話! ばななちゃんの告白

 「おいばなな! 開けてくれ中にいるんだろ?!」何度ドアをノックしてもうんともすんとも反応がない。しょうがないなぁ・・・スマホを出してリクトモで会長に電話をかける。「頼むよ・・・出てくれ・・・」


 ポップな着信をが流れた後「もしもし、どうしたの?」


 「会長、ばななちゃんに生徒会長室の鍵奪われて中で立てこもってるんで、鍵開けに来てもらってもいいですか?」


 「え~なんで奪われちゃうのかなぁ・・・」


 「しょうがないじゃないですか、突然だったんで状況の理解が追い付かなかったんで」


 「これからご飯食べようと思ってたのに・・・わかった、ちょっと待ってて」電話が切れて待つこと数分、「まったく・・・何のために毎朝生活指導の田中さんが立ってるんだろうね日脚君」会長の耳にも情報入ってたんだ、着た途端学校のセキュリティに文句言い出した。


 「ホントですよ、ばななじゃなかったら大問題ですよ」


 「十分大問題だけどね・・・はいこれ」ブレザーのポケットから瓜二つの鍵を渡され、鍵を開けて返した。


 中に入って、会長の席に座って優雅にスマホをいじってるのを見て「ばなな・・・お前なァ!」いてもいられず怒鳴りつけた。


 「お、やっほ~日脚。もうお昼? 食堂行こうぜ!」イヤホンを外してこっちに近づいて来る。


 「何が食堂行こうぜだ! さっきまで大勢のファンに取り囲まれてたんだぞ、気づかなかったのかぁ?!」


 「家と配信以外、スマホいじるときイヤホン付けてるもん。それにあまり騒ぐなって言うからずっと静かにしてたし」


 「えぇ、頭の中に一般常識あるの、お前?」こんなにしっかりした奴だっけお前。


 「アンタギャル何か勘違いしてない、常識やぐらい持ち合わしてるし。ネットでキモイ事言ってる奴らの方がよっぽで常識ないよ」常日頃バット持って町にいる奴に言われたけねぇよ・・・「鍵机に置いといたから早く取って食堂行こう、ここのきつねうどん美味しんでしょ」


 「西高にも噂が広まって大変うれしんだけど、うちの生徒以外食堂使えないの知らないわけじゃないよね?」


 「そこは生徒会長の特権かなんかでなんかで食べれたりしない?」


 「えぇ! なんでよなんでよケチンボ!」なんか今初めてまともに仕事してる会長見てる気がする・・・


 「いいから出て行きなさいよ! 普通に警察呼んでもおかしくないからね、この状況」


 「お願い! 今日だけでいいからここにいさせて! お願い~会長、ばななちゃんのサイン書いてあげるから」


 見るからにあざとい顔で会長におねだりするが、「げっとあうと! 追い出して、日脚君!」通じるはずもなく、拙い英語を喋って俺に追い出すよう指示された。


 「そういう事だから早く出て行け、ばなな」


 「ぐぬぬ・・・わかったよ。でも一人でご飯食べたくないから、何か食べに行こうよ日脚」


 「俺は弁当あるから無理だよ」


 「ちょうどいいじゃん、どっか公園のベンチ座って一緒に食べよう! ねぇ食べようよ~食べようよ~」今度は子供みたいに駄々をこね始める。なんでこうめんどくさい女しか周りに寄ってこないんんだ?!


 「日脚君、しょうがないから一緒に行ってあげて」


 「なんですか! 忘れてるかもしれないですけど、一応敵ですよ!」


 「日脚君がうんって言わないと永遠にどっかいきそうにないもん、それにもしかしたらあのばななちゃんとワンチャンあるかもよ」近づいて耳打ちで知らせてきた。


 「コイツとくっついたらファンに四肢もがれますよ・・・」う~ん・・・わかったよ! 行くよ、行けばいんだろ!「今回だけだぞばなな、急いで食べて戻るからな」


 「やった~じゃ行こうよ!」途端に顔を変えて俺の手を引っ張って部屋から連れ出される。


 「バカ、引っ張んな!」またあのキモイファンにでも見られたら、今度こそ俺殺されるぞ! そんな事お構いなしに校内を引きずり回され学校の外に出てしまった。




 同日 午後12時23分 カラオケザ・ワン 特別VIPルーム


 連れて来られたのは、公園とはほど多いいコンクリートに囲まれた昨日の部屋だった。「公園って言わなかったか? 地面は土じゃないし、緑の草木も無いし、座ってるのもベンチじゃなくてソファーだし・・・」


 「よく考えたらあ~しら専用のプライベートスペースあったの忘れてたわ」


 「昨日の事忘れたとは言わせないぞ・・・」恨み辛み込めった眼で睨む。


 「日脚が最初からマジで闘ってたらあんな余興せずにすんだんだけどなぁ~」もう一遍行ってみろ、その顔ぶん殴って。


 「う~す、お待たせしやした~」昨日のバイトの大学生がドアを開けて、料理を運んで来た。「え? なになに昨日の奴じゃん! 配信見たぜ、お前有名人じゃん!」俺を見た途端馴れ馴れしく色々言ってきやがる。


 「コミュニティでアンタバズってるよ! このままうちのチャンネルの準レギやんね?」


 「絶対にやだ」あんな不名誉な名前で有名になりたくもねぇ!


 「じゃあ俺2代目やる!」勝手にやってろよバイト。


 「あのキャラは日脚じゃないと出せないんだよねぇ~ナッシングで」


 「え~ぇ・・・かしこま」残念そうに部屋から出て行った。


 「じゃあ食べよっか、いっただきま~す」テーブルに並べられた茶色い揚げ物を橋で掴んで食べ始めた。


 「いただきま~す」揚げ物ばっかじゃん・・・ニキビ出るぞ。など思いながら、タッパーを包む風呂敷をほどく。


 「おにぎり2個?! お昼それだけ、足りるの?」俺の弁当の中身を見て横から口出す。


 「足りるよ」その分水がぶ飲みしてカバーしてんだよ。


 「ねぇそれママの手作り? それとも毎朝自分で握ってんの?」


 「いつもはそうだけど、今日は母さんが作ってくれた」たまたま今日仕事が無くて朝代わりに作ってくれた。疲れてるのに無理しなくても・・・


 「なら安心、1個貰い!」割りばしでおにぎりをぶっ刺して奪われた。


 「盗るなよ!」それと安心ってなんだよ・・・


 「う~ん、おふくろの味だ~」


 「ただの塩むすびだよ」


 「テーブルの好きに食べていいよ、それとも何か頼む?」


 「カラオケの食べ物って高いんだろ?」


 「あ~しらここの店の売り上げに貢献してるから飲み食いタダなんよ、だからいろいろ頼めるよ。ここのしょうゆラーメン店長の趣味でスープから手作りだからうまいんだよね~頼む?!」


 趣味でそこまでこだわるもんかねぇ・・・「そこまで言うならひと」てかもう受話器で頼んでるし。てかそれよりもってのが気になるなぁ。「なぁ店に貢献って、普段から何してんだ?」戻ったタイミングで聞いてみた。


 「うん? 昔東高のヤンキーの溜まり場で閉店寸前の時に呉羽パイセンが追い出したの。そこからは徐々に人が入るようになったんだけど、それでも潰れそうだからパイセンが店長に持ちかけてね」


 「ある話?」


 「金持ってそうな客に自分たちのギャル同席アテンドして金とって半分を売り上げに献上する代わりに、タダでここをたまり場に使わせろって。渋々呑んだ結果、売り上げが回復してこの部屋使えてるってわけ」


 「・・・・・・俺帰るわ」聞いた感じ、これって売春の1個下にあたる行為・・・


 「大丈夫だよ、今は売り上げが安定して店は金取ってないし、バレたらパイセンらが責任取るって去年あたり話が付いてね」


 「だとしてもだよ」


 「あーしが西高に入ったのもパイセンのスカウトなんよね。強い奴と沢山闘わせてやるとそそのかれて入学したのに、実際はこのカラオケで客と接待される毎日。結局欲しいのはあーしの戦力じゃなくて、フォロワー数の影響力だったって気づいたんだ・・・」


 彼女の口から出た驚愕の事実。さっきまでの柔らかい表情から一変硬く真剣な顔で話してくれた。口に入れたからあげが急に喉を通らなくなった・・・


 「だからさぁ、転校しようと思うんだ。西高を・・・」

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