第参十壱話! ばななちゃんのファンの男女比率は7:3と偏ってる! 中には一部過激なファンが束になって襲い掛かって来る事もある!
4月14日 午前8時30分 和光第二高等学校 1階 職員室
朝練が無いのはホントに楽でいい、前は7時にはグランドに立ってコーチの鬼練をこなしてた。終わる頃には汗びっしょり、授業受けるの気分が悪かった。
昇降口で上履きに履き替え、今日は職員室に向かう。理由はただ一つ、昨日奪われた学生証の再発行の為。1回目はなぜか会長が持ってて情けでタダで発行してくれたけど、2回目からは3000円しかも税別だから3300円もかかる。中々財布に痛い・・・
「失礼します、1年の日脚です。学生証の再発行に来ました」
「おう、日脚こっちだ!」ドアを開け、窓際の島根先生の席に歩み寄る。「はい、3300円な」先に手を出して金を要求してきやがった。
「思うんすけど、学生証に3000円は高すぎじゃないすか?」
「妥当な値段だとは思うぞ、俺の大学もそうだったし」
「いや、高校生の学生証としては高いって話ですよ。お小遣いでやりくりしてる身としては300円が妥当だと思うんすけど」
「しょうがないだろ。この値段はうちだけじゃなく他の4校全部この値段になってるんだ」
「確かささやかな抑止力でしたっけ?」学生証はヤンキーの命みたいなモノ、暴利値段に吊り上げる事で間接的に精神的苦痛を与えていると会長に聞いた。
「そうとも言うな、四の五の言わず払え」
「はいはい」渋々財布を中から3300円を出して渡した。
「じゃあこれな・・・出来ればこれで最後に欲しいな」引き出しを開けて中にある学生証を俺の渡す。
「俺も・・・」受け取って職員室から出て自分の教室へと向かう。
入学してまだ2週間、うち学校に来たのは今日を入れてまだ6日。濃すぎるよ・・・毎日喧嘩ケンカの日々。毎日どこかしらズキズキするし、制服はすぐ汚れて母さんに心配されるしでホントに落ち着きがない・・・でも今日を乗り切れば休みの土日が待ってる! 重い脚どりで鋭い視線が飛び交う教室に脚を踏み入れる。
「あ、キタキタ! う~す日脚!」朝からバカみたいに高いテンションだな・・・頭に来るからやめて欲しいな。
「う~す・・・」とりあえず挨拶されたから返しといて、自分の机にカバンを置いて椅子を引いて・・・あれ? いつも入れて帰ってる椅子が無い?!
「ちょっと~何その手の動き、寝ぼけてんの?」
「いや、椅子が無いんだよ、椅子が・・・あぁ?!」慌てて後ろに後ずさる!
「椅子ならあーしが座ってんじゃん、お前朝弱いな」ば、ばなな?! 本来いるはずのない制服を着た女が俺の座るべき席に座ってやがる!
「な、なんでお前がここにいんだよ!」いや、俺が間違ってるのか? 寝ぼけて西高に来ちゃった?! 周りを見ても俺と同じ制服を着てる奴が俺とばななを直視してるから間違ってはない!
「う~ん、なんか来ちゃった」
「なんか来ちゃったで人の学校に来るな!」
「それよりさぁ、会長の鍵貸して」
「持ってるわけないだろ! 会長とはそこまでの関係じゃねぇよ!」
「そういう関係でいつも使ってるじゃん・・・ってクラスメイトが言ってた。いいから貸してよ」そう言って俺のブレザーのポケットを物色し始める。
「だ、バカ! やめろ!」強引に胸元を開いて内ポケットにある会長の部屋の鍵を奪われた。
「持ってるじゃん! 何勘違いしてんの」クソガキが馬鹿にしてくるような顔でこっちを見て来る。
「誤解を招く言い方やめろよ・・・てか勝手に盗って」
「しばらくの間あの部屋使うね~」盗ったらウッキウッキで廊下に出てい行く。
「使う?! おい待ってて!」すぐに俺も廊下に出るが、もう階段まで行かれてこのまま追うか躊躇し「あ~もう! 隣作業してるから騒ぐなよ!」結局大声で月美先輩がいる事だけ警告した。
もう知らない・・・誰かなんか文句言おうが俺は何も知らない。何事も無かったように自分の席に戻る。
「日脚! なんで西高の生徒がうちにいるんだ?!」
「俺に聞かんでください・・・」HRの為、教室にやって来た島根先生に聞かれたが、寝たふりをして強引に誤魔化す・・・
同日 某時刻 和光第二高等学校 某所
「私だ、本日計画を遂行する」
「今日?! いつだよ、こういうのは前日に教えるもんじゃ・・・」
「これが現状の最適解だ。始まったら追って指示をだす」
「お、おい!」また強引に切られた、いよいよ始まる俺のささやかな復習が・・・
同日 午後11時50分 和光第二高等学校 1-1教室
授業終わりのチャイムが鳴って昼休みに入ったが・・・アイツが待ってるのか。ホントなんでこういう日に限っているんだよ、絶対「毎日ここでボッチ飯してんの~」ってゲラゲラ笑いながら横やり入れて来るよ・・・行くか、お腹空いたし。
カバンからおにぎりの入ったタッパーを取り出して席を立とうとした途端、鼻息の荒い集団に席を囲まれた。「な、なんだよ」4人全員メガネでデブ2人にガリ2人、全員もじもじしてて俺を一点に見つめる。
「お、おい。早く言えよ」
「い今言おうとしてんだろ・・・ややあひ日脚君、いいかない今」久しぶりに近藤が話しかけて来やがった。
「いや、時間ないんだけど」普段から交流のない奴の今いいかなは高確率で何かの頼みごとを押し付けられる、だからいつも何か理由を付けて聞かないようにしてる。
「ま待ってよ、き昨日のばななちゃんの配信み見たよ、ままさか知り合いだなんて」
「別に向こうが一方的に知り合ってきたんだよ」クソ、立てないよう四方をふさいでやがる。「で、何か用があるんだろ、早く言えよ」
「い、今からお昼デートなのかな? 2股とか許せないでありますね・・・」
「2股してるように見えるか? ある事ない事言ってんじゃねぇぞオタクどもがぁ」ふざけた事言った奴を下から睨んだ。
「ひぃ、な、なんでこんな奴がばななちゃんと知り合いなんだよ」
「変な事言うな、サイン貰えないだろ!」
「バカ、声でけぇよコイツに聞こえるだろ!」
「はぁ?! バカはお前だろ!」
「おい、丸聞こえなんだが」これが狙いかよ・・・「俺がはいわかりましたって言うわけないだろ」少し強引だが、オタクを押しのけて無理やり席を立つ。「邪魔!」そのまま教室から出る。
「お前嘘つきやがったな、なにがアイツと友達だ! 陽キャアピしてんじゃねぇよ!」後ろで近藤がオタク仲間に責められてるが、ほっといて会長の部屋に向かう。
あのばななそんなに人気なのかよ、意外と身近な奴にあの配信見られたなぁ・・・「えぇ?!」ファンはあのオタクどもだけかと思ったら、部屋の前で10人ほどカメラを片手に生徒が群がっていた。「マジかよ・・・」どいつもこいつも念力で壁を透視するかの様に目を見開いて小声でなにかブツブツ言っている。
「ばななちゃんいるんだろう・・・いるなら出て来てご飯食べようよ・・・」
「この基地外の中なら俺がまだましだから俺と一緒に食べようよ・・・」
「ㇸへ・・・オレツオイよ、勝ったら付きやってやるよってマエドウガデイッテタヨネ・・・」
こいつら教科書で見た食糧難の絵巻の人間そっくりだな・・・プライドってものは無いのか。「イヤァ! 日脚日脚!」横のアトリエで作業していた月美先輩が怯えて出てきてしまった。「なにこの気持ち悪いゾンビども! 追い払ってよ!」
「これは俺の管轄外じゃあ・・・」
「いいから追い払ってよ!」
「わかりましたよ・・・」めんどくせぇ、やるしかないか。近づいてなるべく全員に聞こえる声で「あのぉ、迷惑なんで辞めてもらってもいいですか?」
すると一人が振り向いて「あぁ! 勃起マンだ!」
「その呼び名はやめ・・・」
「ホントだ、勃起マンだ!」
「昨日の配信で舎弟になった奴だ!」連鎖して全員俺の方を向いて連呼してきやがった。
「うっ・・・! め、迷惑になってんの気づかないのか・・・お前ら」ブちぎれそうになるが、ここは耐えろ。「先輩が集中できなくて困ってんだろ」
「邪魔すんな勃起マン! 推しがこの壁の向こうにいるんだ・・・一生に一度しかないチャンス・・・思う存分の愛を伝えてんだよ・・・」目が完全にいっちゃってるよコイツら、どうすれば追い払えるんだ?
「何が推し活よ、これじゃあただのストーカーじゃん」
「あぁ? なんか言ったかブス女!」一人が先輩の言葉に反応し敵意を向けたような事を言って慌ててアトリエに隠れた。「誰からも推されないからってひがんでんじゃねぇよ!」
「おい、先輩は何一つ悪い事言って無いぞ、やってる事まさにストーカーと変わんねぇよ!」
「うるせぇよ黙れぇ!」
「うるせぇのはお前らだろ、クソ陰キャどもがァ!」我慢できず思わず怒鳴ってしまい全員こっちを向いてしまった。「自分が邪魔な存在だってわかないのかゴラぁ?! 迷惑なんだよ! さっさと俺の前から消えろやァ!」1歩踏み出すとビビッてぞろぞろと散っていく。
「う、うっせぇよぼっきまんが~」逃げるぐらいなら最初から言う通りにすればいいのに調子乗んなよ。
「もう大丈夫すよ、先輩」いなくなった事を伝えにアトリエをのぞき込もうとすると・・・
「待って! ストップ! それ以上近づかないで!」
「先輩?!・・・大丈夫すか?」凄い慌てるけどどうした?!
「大丈夫! そしてありがとう!」
「あの~もう絵って完成しました?」
「うん! 完成した、後は先生に渡すだけ!」
「完成したんすか! なら見して・・・」
「いやぁ! ダメダメ、絶対にダメだから!」
「俺まだ見てないんすよ、少しぐらい見しても」
「物分かり悪いなお前! 3日ここで寝泊まりして風呂入ってねんだよ! そのぐらい分かれよこの変態!」
「・・・・・・」なんか、すいません・・・静かに後ずさりして会長の部屋にはい・・・って、鍵掛かってるじゃん!
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