第弐十八話! ばななちゃんにとって、ライブ配信はただの道具でしかない!

 同日 16時12分 ザ・ワン VIPルーム


 駅前にあるカラオケ。聞いた話では一部屋500円で楽しめるとてもリーズナブルなお店。しかし・・・「おまた~言われた通り、ドリンクバー全部混ぜたモン作って来たわ」昔からどこかしらのヤンキーの溜まり場として悪名高いため、大人に近づかないようにと言われている。


 「おっけ、コイツの前に置いといて」俺の前に置かれた特性ドリンクが絵の具のを洗った水みたいな色をしている・・・三種類のコーラどもがいい味を出してやがる。


 「飲めよ」横に座るばななちゃんが睨んでくる。


 「やだよ」


 「あっそうか! 今飲んだら配信のネタ消えるからか、いや助かるわ~流れ壊すつまんないオタクみたいな事しなくて」そう言って学生カバンを俺の膝に置いて自撮り棒をスマホに付け始める。


 無理やり詰め込まれたこの異様な空間。って言うのか? 10人以上入れそうな広い部屋。全面ピンクの壁紙で、凹型の大きな机が中央にあって、それを囲むようにソファーと椅子が並んである。


 ばななちゃんを入れて部屋には7人のギャル、外にも2人ほど見張りとして立っている。俺はドアから一番離れた席に座られ、左右にばななちゃんと知らない茶髪のギャルが逃げられないよう挟まれる形で座っている。


 「失礼しま~す」入った途端勝手に注文された食べ物が運び込まれた。からあげ、ポテト、ピザ、焼きそばといった茶色い食べ物にパフェ、アイス、チョコなどのスイーツが大量にやってきた。


 「さんきゅ~」ギャル2人がバイトの大学生のお盆から料理を取ってテーブルに置く。


 「おいやめろって、絶妙なバランスで乗っけてんだから」


 「ごめんごめん!」バイトもグルなのかよ、仲良くじゃれ合ってる。


 「にしてもアイツ羨ま、クソハーレムやん。今度俺にもやってよ」何が羨ましいだ、お前の死角に立てかけてあるバットの群れが見えてないからそんな事が言えるんだ! 


 まぁでも、どれを見ても美女でパンツが見えそうなミニスカ履いてて悪くは・・・「あ、このからあげに付いてるチョコとよくわからん臭いスゥートチリソースもアイツの飲みモンに入れね?」


 「マジお前オニすぎっしょ!」ゲラゲラ笑いながら俺の飲み物にアルミホイルごと入れやがった・・・


 前言撤回、地獄の空間だよここは・・・「うわっ、コイツ勃起してる!」


 「は、はぁ?!」横を向くと茶髪のギャルが俺の膝に置いたバックに手を突っ込んでいた。「おまっ! なにいって?!」


 「う~わ、キモっ!」


 「この状況でエロい事想像するとかマ?!」デカい声で直ぐに広まって部屋中のギャルが俺を軽蔑した目で見てくる。


 「だからちげーって!」


 「うっそ~リップでした!」バックから小瓶を出した瞬間全員ゲラゲラとまたバカ笑いし始めた。


 「ネタ提供あざ~す!」


 「あいよ~!」はめられたのか・・・またしても。部屋中に響き渡るバカ笑いが耳に入りイライラが蓄積されていく。


 「なめてんじゃ・・・!」


 怒りに身を任せ逃げだそうと立ち上がった瞬間、「配信始めるから座れ」素早く制服の襟を掴まれて、ソファーに戻される。そして首に腕を回され「ハロウ~ガイズ諸君! ばななちゃんで~す!」自撮り棒を掲げて配信を始めた。「今緊急で配信回しているんですけど、なんと! なんと! 画面に映ってるんですけど、カモ高の線香花火こと日脚ボコして舎弟にしちゃいました!」スマホの画面に俺とばななちゃんが映って、端にはコメントが高速で流れている。


 「いつ舎弟になったんだよ・・・」


 「舎弟の分際で勝手に喋ってんじゃねぇ!」首に回してた手で髪を思いっきり掴まれ、激しく前後に揺らされる・・・


 「痛い、やめろって!」


 「もうコイツあーしらの舎弟になったんだし、新しい名前付けね? なんか案ある人~」待って、この流れは?!


 「は~い! さっきまで勃起してたから、勃起マン!」やっぱこうなるよな・・・やだ! これネットに流れてるんだろ、一生消えねいじゃん・・・


 「嫌だわ~コイツ呼ぶたんびに勃起マンって呼ばなきゃいけないじゃん!」またゲラゲラ笑い、呼ばれるこっちの身にもなって見ろよ! 「じゃ名前も決まったとこで、さっき作ったこの特性ドリンク飲ませたいと思いま~す!」


 「ちょ!」茶髪のギャルがコップを口まで運んできた。「おえっ!」さっきまで甘い匂いの汚い水だったのに、一気に生ごみに変貌しやがった。


 「くさ! こんな臭かったけ?!」


 「さっき誰かが、からあげのソース入れやがった・・・」


 「マ?! めちゃ臭いんだけど! はい飲んで」


 「うんっ?!」強引に口にコップを押し当て流し込まれる。生臭いけど何とか飲める・・・が、元凶であろうスゥートチリソースが口に入った瞬間耐え切れず吹き出してしまう。


 「いやっ?!」


 「マジ最悪!」噴き出したほとんどが膝上の誰かのカバンの中とテーブルの上の料理にかかってしまった。


 「ゲホ・・・ゲホ・・・おえっ!」


 「マジうけんだけど! 勃起マン写生してるよ、みんな!」俺の顔にカメラを近づけてくる。「ねぇねぇどんな気持ち? ねぇ教えてよ勃起マン!」必要以上に煽って来る・・・「ほら、コメントで勃起マンチョー人気だよ」


 もう・・・我慢ならねェ! 「いい加減にしろや!」スマホを奪って、ドアに向かって投げつけた! ぶつかった衝撃音が部屋中に反響した瞬間ゲラゲラ笑いが止んだ。正直今なら怒りに身を任せれば、コイツの顔面殴れる! そう思い左手でばななちゃんを殴ろうとした時だった。背中に強い痛みと衝撃を喰らい攻撃の手が止まってしまった。


 「いっ!・・・」その瞬間にばななちゃんに素早い右ストレートを顔面に喰らってしまった。そしてそのまま髪を掴まれ、テーブルに叩きつけられる。幸い食器はプラだから大事には至らないが、運悪く顔半分が焼きそばの上に落ちてしまった。


 「あ~あ、スマホ壊れちゃったよ。こりゃ弁償だな、ベンショウ」


 「そんなのどうでもいい」さっきまでと声のトーンが違う?! 「やっとになったじゃん、日脚君」


 「あ、あの時のって?」


 「月曜、東高のヤンキー10人が学校に攻めて来てアンタ1人で返り討ちにしたあの時だよ! あの日呉羽先輩の命令でカモ高のイケメン連れて来るだけだったけど、偶然にも喧嘩してたアンタ見てさぁ、思わず感じたんだよね・・・」また髪を掴まれて今度はソファーに投げつけられ、ならぬ顔すれすれ横のソファーに足ドンをされる。「めちゃボコボコにしたいって」


 その目はまるで獲物を狩る捕食者の目、自信に満ち溢れた笑みも重なって不気味さがさらに増す。「あーしさぁ、って奴? 自分より強い奴見ると無性にボコしたくてたまらないのよ。あんトキのアンタの顔、ホン・・・ト良かったよ! 実にボコしがいがある顔! でもいざ闘ったら、女の顔が殴れない・・・」胸倉を掴まれ顔を近づけられる「闘いの世界に置いて、レディーファーストは最大の侮辱! つまんない余興まで開いたんだ次は本気で闘わねぇと、バットハーレイで会長ちゃんボコしちゃうよ」


 コイツ・・・そこまでして俺と闘いたいのか、この変態が。着々と俺の中で怒りが蓄積されている。「いい顔するね! それだよ・・・会長守るんだよね! ね! ねぇ!! ねぇ!!!」


 「そうだよ・・・俺が守るよ」


 「聞こえない・・・なぁ!」


 「そうだつってんだろ!」顔面目掛けて渾身のパンチを喰わすが、後ろに飛んでかわされる。


 「外で待つ、日脚!」そう言い残し、バットを持ってドアから飛び出た!


 「待て!」慌てて追いかけるが、部屋の中のギャルたちに行く手を阻まれる。


 「そう簡単に行かすわけねェだろ!」6人、外からも加勢が入って8人。全員武器もちバットなど、流石にこのごちゃごちゃした空間で相手にするのは不利すぎる。かと言ってドアまで離れすぎている。どうする・・・相手は今にも襲ってくる、待ってはくれないぞ。


 「せ~のでかかるぞ!」


 机の上のマイク、コイツで出せる限界の高音を!


 「せ~の!」


 一か八かだ! マイクを掴み「アァァァァァァァ!!!」目一杯の高音を出す! スピーカーから鼓膜が破れるんレベルの騒音が部屋中に響き渡り。


 「ぎゃあああああああ!」スピーカーに近い奴らから耳を抑え始めた。


 今だ! テーブルの上を走り、一気にドア付近まで近づく。幸いにもドア付近の奴も喰らって、反応にワンテンポ遅れてる。上手くすり抜け、ドアを開けて部屋から出た。


 外では俺の出した騒音で客が慌てた様子で外に出ていた。「******! ******************?!」明らかに俺に何か言っているんだろうけど、さっきの騒音のせいでずっとキーンと言う音が流れて聞き取れない。「*****だ!」払いのけ出入口を目指す!


 「ひ*****ん!」自動ドアを出た途端、会長にばったり会った?!

****! なん******に?!」


 「応援********よ! ******ル達****?!」後ろには西高の制服を着たスケバンの群れ! 正確な数は分からんが、物凄い数だ。

******

 「偶然**********さんに会って、******話したら」


 「悪い会長、やる事が*******!」会長後にして、エレベーターに向かった。1階で止まってる、運よくすれ違ったんだな、ボタンを押して4階に呼び寄せる。


 「どこ行く****! 無視しな***よ! 」後ろから肩を強く揺らされる。


 「これからばななちゃんにケリを付けに行くんすよ!」そう言い残し、エレベーターに乗って1階に降りる。

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