第弐十四話! お金の管理は大切に!

 連れて来られたのはイデヨカ3階のと書かれたコーナー。いつもはま反対にある本や文房具などの売り場を良く使うため、初めてこっちに来た。


 「会長何買うんですか? 一人暮らしでも始めるんですか?」


 「実はねぇ、昨日ここでいい物見つけたんだよね・・・あったあった!」


 「これ・・・ですか?!」片隅にデカく展示されたソファーを俺に見せた。2組のソファーとテーブルの付いたセット商品、茶色のツヤのある色で凄い高級感がある。


 「前々からね、あの部屋にこういう見た目のソファー置きたかったんだけどさぁ、中古でも軽く30万以上かかるから手が出せなったのよね」値札を見ると、アウトレット品に付き70%オフで・・・


 「じゅ、じゅうまん!」


 「すっごいお得でしょ!」


 「いやお得ではありますけど・・・あるんですか? 10万も」


 「あとねぇ、5万円足りないんだ」


 「後5万か・・・うん? その5万ってまさか・・・」


 「まぁ、有効活用だよね」


 「それ月美先輩のじゃないですか! まだ返してないんですか!」


 「だってタイミング逃したんだもん! 今頃絵に集中して忘れてるよ」ホントに外道だなあんた! 後でバレても俺助けてやんないぞ。


 「てかこの4どうしたんですか、いくら何でも一回の食事で全部は使えきれないでしょ!」


 「あぁ、あれね・・・どこ行ったんだろうねぇ~」


 「・・・・・・素直に言わないと帰りますよ」


 「わかったわよ、3万ちょっと残って全て使いました! 4Kテレビが安かったからそれに買いました!」


 「なんで当たり前のように使ってるんですか!」この人私利私欲の塊の具現化だろ、やば・・・「もっとこう、俺や先輩が怪我した時の治療費やもしもの時の為に残しときましょうよ! なんで全部使うんですか?! 」


 「だって32インチの4Kテレビが3万なら買うでしょ!」まぁ確かに買いそうにもなりますけど。「お金は天下の周りもの、使う為に存在する者よ! 貯める奴とかお金に失礼と思わないの?!」


 もう付き合ってられない! 振り向いて帰ろうとするが「ちょっと! 待って!」いきなり背中に飛びついて来た!


 「ちょ! 離れろ!」


 「やだ! 日脚君が乗るまで帰らせない!」首に手を回して大声で店内に響き渡る程の駄々をこね始めた。


 「見てます、他の人見てるから離れてください!」店内のおばちゃんや大学生に冷たい目線が深く刺さる。


 「や~だ! 絶対に買う!」


 「わかった、わかったから離れてくださいよ!」恥ずかしくて死んじゃう・・・


 「ホント! じゃあ後5万ヤンキー共カツアゲして集めて来てね!」言う事を聞いたら素早く飛びおりた。


 「なんでそうなるんですか、バイトするって考えないんですか?」


 「いい子ぶってんじゃないわよ! 散々うちの生徒はカツアゲされて来たんだから、やったって向こうは何一つ文句言えないわよ!」これがいわゆる不幸の連鎖って事か・・・


 「戦争はこうして繰り返されるものよ」


 「俺の地の文に返さないでください・・・」などのやり取りをしていると後ろから女子話し声が近づいてくる。振り返ると、緑色のブレザーを着た女子高生の3人組の集団がこっちにやって来る。


 「なぁ、ソファーなんて安いのでいいじゃん」


 「馬鹿野郎一度見てみろよ! あのツヤツヤとしたあの輝き、今のに足りねぇのはあのソファーなんだよ!」


 「はぁ・・・でも先客がいるみたいだよ」


 「あ? ・・・あぁ!」真ん中の褐色の子が俺たちを見つけるや否や「お前らは! うちらのパクったカモ高のリア充共!」


 「な、なんだよ急に!」誰がリア充だぁ!


 「カモ高の分際で良くここイデヨカまで来れたなぁ」


 「なんだと・・・」見たところ一般人じゃないオーラを感じる、まさかヤンキーか。「やんのか?!」手を構えて臨戦態勢を取る。


 「日脚君、彼女たちは敵じゃない」会長に手を降ろすよう肩に触れられ、構えを降ろす。


 「じゃあまさかあれが、西


 「のは事実だ。で、ここで何してんだ?」


 「何って会長がこのソファー買いたいって言うから、来たんだよ」


 「な、そ、そうはさせねぇーからな! うちらだってそのソファー買いに来たんだよ!」急に焦り始めた。


 「ふふふ、残念。もうこのソファー清算済みです~」


 「いやお金ないからまだ・・・」うっ! いきなり後ろから口を抑えられた。


 「でもさっき買う買わないって揉めて無かったけ」横の不織布マスクを付けた色落ちした金髪のスケバンが会長の嘘を見破った。


 「先輩が駄々こねて騒ぐから聞かれちゃってるじゃないですか」


 「ぐぬぅ・・・」


 「ナイス! あいつの嘘を良く見破った! そんじゃ、うちらが買わせていただくとするか。おい、いくら持ってる?」


 「買うなら自分の金で買えよ」


 「あたしら一円も出す気ありません~」


 「なぁ! お前ら!」向こうも取り巻きと話が合わず買えないみたいだ。「くっそ・・・後5万なのに」


 「聞いた、日脚君。向こうも状況が同じみたいだね」


 「そうみたいすね」こんな偶然あるもんだな。高校生にしては高い買い物だしな。


 「なら考える事は一つ!」急に手を引っ張られて走り出した。


 「あいつら急いで何処いるんだ?」


 「多分向こうも金足りなくて用意しに行ったんじゃない?」


 「マジか、絶対あのソファー買わせんからなぁ!」

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