第弐十話! 覚悟の後半戦! 行って蹴散らして来い!

 もしかして・・・失敗した?! 怒って出て行ってようにも見えるが・・・どうなんだろう。「やったね、日脚君!」廊下で見ていた会長が入ってきて、背中を強く叩いてきた。「ヤンキーを蔑むあの目! いつもの先輩に戻ったんだよ!」


 「ほ、ホントです・・・か」気が楽になって一気に体から力が抜けてその場に倒れてしまった。


 「大丈夫?! まぁ大丈夫だよね。さぁ喜べ、美術部諸君! 我校の生徒会長とその側近の日脚君が無事、月美先輩の説得に成功したわよ!」うぅ・・・倒れた俺なんか気にもしないで手柄独り占めされたんだが・・・しかも取り巻き全員会長に拍手送ってるし。


 「それで会長。先輩はどこ行ったんですか?」


 「さぁ、どこだろう。多分何処かには行ったんだと思うよ」


 「その何処かを俺は知りたいのに」


 「ははぁん、残念だったね。愛の告白はもうちょっと先になりそうだよ」冗談きついぜ。あんなヒステリック、スタミナがいくつあっても足りねぇよ。


 「あの、もしかしたら。お母さんに一言伝えに行ったかもしれないです。多分泊まり込みになるかもしれないので」廊下の女子生徒が言ってきた。


 「じゃあだから、10分で戻って来るか。邪魔になるとあれだから。そろそろ私と日脚君はここでおいとましますね・・・ちょっと! いつまで寝てるの」やめろ、ネクタイ引っ張るな! 


 「起きます! 起きますよ!」ネクタイの手を振りほどいて、立ち上がって部屋から出る。「てことは会長の部屋使えなくなりますね」


 「いや、別に苦情は来た事は無いけどね。でもポテチ食べながら映画見てた時はやたら壁ガンガンなってたけどなぁ」


 「会長。それ苦情ですよ・・・」終わるまで怖くて近づけないなぁ、筆を洗ったきたねぇ水ぶっかけられそう。


 「という事で先輩の件はこれで一件落着! また何かあるまで、町のパトロールよろしく。最近さぁうちの正門前にのゴミポイ捨てするが多くてさぁ、見つけたら二度とポイ捨てできないようシメちゃっていいから」


 「へいへい・・・」疲れたからもう今日は帰りたいなぁ。見えなくなったらこっそり帰ろうかな・・・コンビニ、ヤンキー。


 何かが引っかかる・・・「あ・・・あぁ!」


 「ど、どうしたの? 急に」


 「忘れてた・・・コンビニ、ヤンキーで思い出した。昨日コンビニで喧嘩しようと東高のヤンキー呼び出したんだった!」


 「え?!」


 まずい! もし執念深く待てるんだったら、月美先輩が絡まれてまた振り出しに戻るかもしれない! 急いで階段を駆け降り、学校を出た!




 同日 15時43分 アッとホーム 駐車場


 遅かった・・・めちゃ誰か囲んでる。アレ絶対先輩だよ。コンクリの壁挟んで様子を伺う。


 「あんたさぁ・・・何やってんの」


 「アァァァァァ!」急に後ろから肩をポンって掴まれたァ!


 「急に人んちの前で叫ぶな!」な、なんだ。先輩か・・・びっくりした。


 「なんでここにいるんですか? コンビニ行ったんじゃ?」


 「う、家から道具取りに来たんだよ。やべ、コイツに自宅喋っちゃったよ・・・」コンビニの隣のアパートが先輩の自宅らしい。


 「別に誰が何処に住もうが興味ありませんよ。気づかれる前に早く学校に戻りましょう」じゃあ一体誰を囲んでるんだ。


 「や、やめてください・・・もう、お金無いですよ」


 「うっさいんじゃ! 金だけ盗ったってわしの気は収まらんのんじゃ!」集団で蹴られてるのか、何とか這いつくばって抜け出して姿が見え、あれうちの制服かよ・・・なんでコンビニなんか来たんだよ!


 「助けてやらないのかよ・・・」


 「今は先輩が優先です。学校まで送り届けた後にまた助けに来ます」秒でこの先輩送って戻って来るから、それまでまっ・・・!


 「どぅわはっ!」いきなり後ろから突き飛ばされた! 「なにするんすか!」


 「あんた生徒を守る為のヤンキーでしょ! 生徒守んないでどうすんだよ!」


 ちょっとは自分の状況も考えろよ! 「あぁもう! ダッシュで学校戻ってくださいよ!」


 「断る!」

 

 「いやなんでよ?!」


 「こ、ここであんたの犬死する様を見届けてやる!」なにあたおかな事考えてんだよ! 開いて10人はいるんだぞ!


 「馬鹿! 数も数えられねぇのかよ! 絡まれてまた落ち込む羽目になるんだから!」

 

 「その時はまたあんたが励ましなさいよ・・・」


 もうやだよ、2人きりで話すのはァ! 「よう・・・日脚!」いってクソロン毛、コノヤロウ! 手なんか踏みやがってェ! 「人様を突然勝手に呼んどいて、姿現さねぇのはどういうこった!」


 「まずその汚い足どけろよ!」指の関節が地面に喰いこんでスゲェいてぇ!


 「はい、そうですかってどかすわけねェだろう! 舐めてんのかキサマ! まず謝罪しろや! って言えや!」


 なんでヤンキー如きにそんな丁寧な謝罪しなきゃいけねぇんだよ! 死んでもやだね! 「・・・わかったよ。土下座してやっから足どけろや」


 「ちっ、どこまでも態度のでけぇ1年じゃ! まぁお前の頭に置くまでのと考えればいいっか」


 「くそおもんない造語作ってんじゃ・・・ねぇ!」離れて油断した隙に立ち上がってキモロン毛の顎にアッパーを決める!


 「ぐふっ・・・!」


 「先輩!」体が仰け反った瞬間にさっきボコられてた生徒を救出し、引きずりながら先輩の方へと連れて行く。「そいつ頼みましたよ。なるべく近寄らせませんけど、ヤバかったらすぐ学校に逃げてくださいよ」


 相手は10人。あの力士みてぇ奴がいねぇから、何とかなるかもなぁ。


 「ヤンキーがイキってじゃねぇよ! ぶっ殺してやる!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る