第十八話! 今の時代に根性論なんかは古臭い! でも時として根性論に頼らないといけない
同日 午後14時55分 和光第二高等学校 3階
さて。放課後になった事だし、会長の策とやらを聞きに行くか。3階に降りて会長の部屋のドアを開けようとするが、鍵が掛かってた。まただ、もしかして結構早いのかな? 貰った鍵で開けて中に入る。
「今日も俺が一番乗りか」会長の冷蔵庫からオクトコをくすねて、飲みながら椅子に座って待つ事にした。
「ドン・・・ガシャ! ガサガサ・・・」なんか今日は隣が騒がしいな、大掃除でもしてるのかな?
「ガサガサ・・・えなおしてください」
「うるさい! もう決めた事なんだから!」もめてる? そういえば隣ってどんな部屋だっけ? 「お母ちゃんの為なんよ! ほっといてよ!」なんか、つい最近聞いた事あるような・・・
「お待たせ~日脚君」そんな中、会長がやっと部屋に入って来た。
「お疲れっす」入った瞬間、一目差に冷蔵庫の中からオクトコを取って自分の席に腰かける。「それで、例の策なにか・・・」
「ねぇ日脚君」
「なんすか?」
「なんであのお嬢様の連絡先聞かなかったの?」
「誰の事ですか?」
「昨日5万円貰った西高の成田万葉さんよ!」
「あぁ、あの人か。いや、あの時頭にそんな考えなかったし・・・」
「この陰キャ! 聞きなさいよ!」なんか突然理不尽にキレられたんだけど・・・「せっかくさぁ、西高と同盟を結んで先輩のコンビニ奪還する計画を思いついたのに、さっき連絡したら万葉会長は現在校舎にいません。て言われて、じゃあいつなら繋がりますか? って言ったらなんて言ったと思う!」
「俺が知るわけないじゃないですか」
「半年後の月曜日なら繋がりますって言ってきたのよ! 遅い、遅すぎるよ!」えぇ・・・もしかしてうちの会長より、パシリにされてるのかなぁ。
「でも、繋がってところで、素直に協力してくれますか? 一応敵って事ですし」
「私たちの敵は沢渡呉羽率いるみるくてぃーって言うギャルのヤンキー組織であって、成田万葉は違う・・・あれ? 日脚君に言って無かったけ」
「いまいち会長の言ってる事が理解できてません・・・」西高は敵のはずじゃないのか? なのになんで協力関係をむすぶんだろう。
「私も説明不足の所あったし、もう1回説明するね」
「お願いします」
「西高ってね。実はうちと同じでよくヤンキーに絡まれる学校だったの。毎日東高や北高のヤンキーにナンパされたり、お金を取られる被害が多発してたの。それである日、口で言えないような事件に巻き込まれた事で、かなり前の生徒会長が、生徒を守るためのスケバン組織を作ったの。まぁこれが上手く行って、今の生徒会長に引き継がれた時に沢渡呉羽と言うゴリゴリのギャルが入学して、会長に反抗するギャル組織を作ってしまったの」
「ギャルとスケバンの対立かぁ・・・ここだけ壮大過ぎる」
「だから今、西高は2つのヤンキー組織がバチバチの戦争状態。何とか協力関係結べないかな~」こっちが介入する理由が無いし、むしろ貸を作ってるのこっちだからな・・・
「それにしても、今日隣騒がしくない?」会長が説明してる間も、何度か聞こえていた。気のせいかさっきよりもひどくなってる気しなくもない・・・
「そういえば隣何ですか?」
「うん? 月美先輩のアトリエ」
なんだ、どうりで先輩のヒステリックな叫び声が時々聞こえるわけだ・・・「ええぇ! ま隣にあるんですか?!」
「言って無かったけ? 壁一面に絵が飾ってるから、気づいてると思ったけど」
「言われないと気づきませんよ! それよりも耳済ませて聞いてみてくださいよ!」
2人で聞き耳を立てて聞くと「先輩・・・考え直してください! 3年間の努力が無駄になりますよ」
「私ももう無理なんよ! 絵が上手な金持ちのボンボンに貧乏人なんかが敵うわけないのよ!」と涙の籠った言い合いが聞こえる。
「まずくないですか、様子見に言った方・・・」
「あぁこれね、良く聞こえてくるよ。先輩が作業してる時なんかは特に」
「いや怖すぎでしょ! 良くいられますね・・・」
「慣れよ」慣れって恐ろしいな・・・
「でもすげぇ心配なんで、俺見て来ますよ」単身部屋から飛び出し、横のアトリエへと向かう。
アトリエ前では沢山の女子生徒が心配そうに中の様子を伺っている。多分全員先輩の後輩なんだろうけど、多すぎて中に踏み入れない・・・
「日脚君の読み当たってたね」後ろから遅れて会長がやって来た。
「月美先輩って結構慕われてたんすね」てっきりヤバくて近寄りがたい人かと思ってた。
「まぁ極端にヤンキーが嫌いなだけで、普段は優しくて面倒見のいい人だからね。絵の実力もあって、みんな先輩を目指して練習するくらいだもん」
「時々ヒステリックになるのは許容済みなんですね、みんな」会長よりももしかしたらカリスマ性あるのでは?
「失礼な!」
「勝手に読まないでくださいよ・・・とりあえず道を開けるよう、言い聞かしてください」
「開けてどうするの?」
「え?」
「何か企ててるの?」
「そんなの・・・慰めたり、説得したりしてコンエストに絵を描くようにする・・・会長はしないんですか?!」
「・・・それ、返って先輩を追い込んだりしない?」
「しません、とは言い切れないような・・・」
「先輩は確かに実力はあるけど、実は賞やコンテストの入賞率って10%以下。諦めるのも一つの手だとは思うよ」
「な、なんて事言うんですか! だって先輩の不安を消すためにコンビニの奪還計画考えてたんですよね」
「それもあるけど、一番は生徒が安全にコンビニを利用するため。よく聞くのよ、コンビニ利用したいな~って声を。だから申し訳ないけど先輩は芽が出なかったって事で・・・行くよ、いつまでも先輩一人に時間は掛けられないよ」そう言って背中を見せて歩き去ろうとする。
「待てよ」すかさず会長を呼び止める。「先輩を説得すればいいんですよね」
「キミに出来るのかい? 文化系の人間に根性論は効かないよ」
「俺だって好きじゃないですよ、根性論。でも頼らないといけない時があるんです」
「・・・わかった」引き返して来て「どいて、どいて! 月美先輩に話があるから中入らせて!」どでかい声で生徒をかき分けて、アトリエまでの道を作った。
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