第十参話! この状況で入れる保険あるんですか? あります。その名も「闘魂技ベストバリュー+」最大1週間の入院費を全額保証! 1週間過ぎたら自分で起き上がれ馬鹿野郎ガァ!
同日 午後11時50分 4階 1-1教室
授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り響く。
「じゃあ今日はここまで、明日小テスやるからきちんと復習しとけよ」今日が初めての授業なんだけど、今立ってるのホントに数学の先生なのか・・・腹が出ててそれを隠すようにグレーのスーツを着てる。おまけにグラサンなんかかけてるから、入ってきた瞬間マジモンのヤクザがカチコミに来たのかと思った。
もう昼か。みんな一斉に教科書とか片づけ始めた。確か昼は自由だった気がする、家から持参するのも良し。食堂に行って食べるのも良し。学校から出て外で自由に食べるのも良し、まぁ少ないんだけど。
弁当の奴は何人かで集まって机を繋げて仲良く食べ始める。俺はどうしようかな・・・見た感じ俺のいない1週間である3~4つほどのグループが出来ていた。互いに干渉せず、個々で楽しむ平和なコミュニティが出来上がっていた。あのデブでさえオタクのコミュニティ属していて楽しそうに隅で弁当食べてる。
・・・てことはボッチか、俺。でもこの方が気楽でいい、アホみたいに群れてろ。いつかバカを見る事になるんだ。
今でも今日は食堂に行こう・・・明日からはおにぎり作って持ってどっか人のいない所で食べよう。俺は教室を出ることにした。
食堂は1階にあって結構広い。外から見ても沢山の人でごった返してるのがわかる。1年から3年、よく見ると生徒に混ざって先生も食べてる。
物凄い数だな・・・やっぱ入るのやめよう。何とは言わないが、無理だ。振り返って去ろうとした時「あっ」
「入らないのか?」ダンボー、じゃなくて安西が多数の女子を引き連れてる。
「いや、いい」取り巻きの女子が一斉に睨んで来た。どうせ入ったらこんな目で見られるし。
「一緒に食べるか? ここのきつねうどん定食はかなり美味しいらしい」
「結構・・・だぁーあ!」通り過ぎようとしたら無理やり腕組まれて、強引に中に連れられる。「離せよ! ホモだと思われるだろ!」強引に腕から抜け出す。こんだけ大声で叫んだら悪目立ちするわな、また全員俺に鋭い視線を向ける。
「早く並べよ、後がつかえるだろ」
「てめぇ・・・」ここまで来たら並ぶけどさ! 後で覚えてろよ。そしてすぐに順番が回って来た。
「何にシマすか?」どこかカタコトな日本語を話す濃いおじさんに注文を聞かれる。
「じゃあ、きつね定食というの一つ」
「きつねテイ一つね、300円です」やす! 財布から300円渡して、88番と書かれたプラのコインみたいなやつを渡された。出来るまで席で待てと。座る席が無いか周りを見渡す。
出入り口の近くの長机が空いていた。遠いけど、あそこでいいか。席の合間をぬって静かに歩き出す。
「またあの1年だぜ、何しに来たんだよ」
「食堂使ってんじゃねぇよ、飯がまずくなるだろ」
通るたびに小声だが俺に向けた心無い言葉がしっかり耳に入って来る。こうなる事ぐらい想像がつくだろ、なのに無理やり連れ込みやがって・・・席に着いた時には、微かにあった食欲が吐き気で完全に消え去ってしまった。
安西たちはまだ来ない。同じぐらいに注文したのに、女子に囲まれてウォーターサーバーでたむろしてる。このまま別の席に座ったりして・・・それはそれでいいけど。
うん? あれ会長か? 安西いる近くで女子数人で食べながら仲良く談笑している。会長、友達いたんだ。てっきりボッチかと思ってた。
「あ、気づかれた」気づいたら無意識のうちに少しの間ずっと見てしまった。こっちに手を振ってくれたので、そっと会釈して返した。
今度は安西を見つけて話しかけた。まさか、会長も安西のファンなのか・・・白い何かを受け取った安西がこっちに来た。「遠すぎるだろ、もう少し近いとこにしろよ」
「嫌なら別のとこ座れよ」全員座れそうな場所ここしかないんだもん。
「石浦会長がこれをお前に」俺に? さっきの白いのを受け取った。綺麗に四つ折りに折られた紙を広げると、リクトモのIDとついかしてと書かれていた。
「お、おう・・・」渡すの今・・・つーかこれ個人情報だろ。
「なんて書いてあるんだ?」
「教えるわけないだろ!」見えないとこで処分しよう。追加して・・・っと。なんて送ろう・・・無難に{日脚です。追加しました」でいいか。送信してスマホをしまった。
「88番! きつねテイの88番!」
「呼ばれたぞ」わかってるよ。立ち上がって取りに行こうとする・・・またかよ。立った瞬間全員が俺を見る。なんだよ、立ったらダメなのかよ。おめぇらには関係ないだろ! 黙って飯食ってろよ! 1歩が出ない・・・
「そんな目で見るなよ・・・うっ!」吐き気が! 急いで口を押えて食堂から出た。トイレに駆け込ん洗面台で吐いた。
「おえっ・・・ハァ、ハァ、ハァ」ふざけんなよ! なんで吐くんだよ、今! 「みんなあんな目で俺を見やがって!」全ての怒りを洗面器にぶつけてトイレを出た。
「平気か?」外に安西が立っていた。今すぐにでもお前をぶん殴ってやりたいが、今はそんな気も起きない、コイツを無視する。
同日 午後12時18分 1階 正門前
結局300円無駄にしちゃったな・・・今になってきつねうどん定食がどんなものなのか気になってしまった。
とりあえずコンビニ行こう。スニーカーに履き替え、正門に近づく。「あれ?」昨日は10人も東高のヤンキーがいたのに、今日は誰もいない。なんでだろう・・・まぁいいや。踏み越えて外に出た。
ここか・・・治安わるいな。コンビニの前の駐車場は大量の東高のヤンキーによって占拠されている。入りたくねぇ・・・諦めて裏の
「何てめぇガン飛ばしてんだ、アン!」最悪、絡まれたし。
「誰がいつどこで何を見ようがかってだろ!」うわ、何人か立ってこっちに来る。
「うん? 誰かと思えば真澄をヤッタ、カモ高のヤンキー日脚君じゃないか。フウセン切れちゃって買いに来たのかな~?」なんだこの、青白い顔したキモイロン毛は。周りの1年よりも痩せ細ってる。
「黙れキモロン毛。お前に用はない」払って店に入ろうとした時。
「そうはいかねんだよな~」急に力士みたいにデカいヤンキーが自動ドアの前に割り込んで来た。マジで2メートルはあるんじゃないかってぐらいでかい図体に前にも横にもデカデカと膨らんだ脂肪をぶら下げたデブ。
「ここはワシら東高のシマなんだよ。カモ高の制服着た奴が入っていい場所じゃない」
「見つけ次第半殺しにするのが東高の掟なんでね~」
こっちは腹が減ってんのに・・・朝からのストレス、全部コイツらにぶつけてやるか。いや、ぶつけないと俺の気が収まらない。
「今日は朝から機嫌が悪いんだ。今のうちに生命保険入っといたらどうだ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます