第十話! 人生一度決めた事は例え何があっても最後までやり抜け! 諦めるぐらいなら最初から抱くな! 

 いきなり目の前に現れたのは、ばななと名乗る頭のおかしい西高の女子高生。


 薄いピンクにブリーチされた長いストレートな髪、両耳にトゲトゲのピアスが3つ付いてある。白いシャツにパンツが見えそうなぐらい丈が短いスカート、腰に髪と同じ色のカーディガンが巻いてある。黒い分厚い靴下ルーズソックスに茶色い革靴を履いている。そして片手にはシールまみれの木のバット。もう片方には金髪どものメガホン拡声器パクって使っている。


 「すぐ黙らせて来ます」会長を体から引き剥がして、静かに女に近づこうと歩き出す。相手も目つきを変えて正門を踏み越える。


 「日脚! 日脚がいるってホントか!」この声は・・・止まって振り返ると島根先生が驚いた顔で校舎から出てきた。「日脚お前、なに勝手に病院抜け出してんだ!」


 「いや、抜け出したって言うか、正確にはって命令されて・・・」おでこに血管浮き出して、かなり怒ってらっしゃる。


 「お前のせいで今病院パニックになってるぞ! そしてなんで東高の生徒が倒れてるんだ!」


 「それはコイツらが悪いんすよ! 俺が来なきゃ会長誘拐されてとこだったんすよ!」


 俺と先生の口論に水を差すように小さな声で「日脚君、正しくはだから」会長が割り込んできた。


 「なんすかその新手の変態は・・・」


 「わかんない・・・でも凄く怖かった」


 「と、とにかく、生徒を守るのが教師の役目なのに、誰も止めようとしないじゃないすか!」


 「それを言われると何も言い返せないが・・・でも何度も言うが、それを建前に正当化する理由にはならん! 現に石浦はお前の入院がきっかけで、ヤンキー活動の終了を宣言したんだ」


 「な、ない?!」どういうことだよそれ!


 「日脚君が入院した次の日に臨時で全校集会を開いて、そこで・・・」


 「冗談じゃない!」


 「ヒィ・・・ごめんなさい!」会長は頭を深く下げて「私の独りよがりの勝手な行動で日脚君を巻き込んんで大怪我までさせてホントにごめんなさい!!!」涙の籠った声で俺に謝罪してきた。


 「そんな謝罪受け付けませんよ・・・俺に謝る暇があったら! 俺と一緒に最後までやり遂げてくださいよ!」


 「ひ、日脚君・・・」


 「俺もっと強くなります! 会長を守れるぐらい絶対強くなります! だから! 最後まで俺の傍にいてください! お願いします!!!」何を思ったのか勢いそのままに膝を付いて地面に頭を下げていた。


 「日脚君・・・」今、俺は完全なる土下座を会長に向けてやっている。「ごめんね・・・」やっぱりだめか?「私、勘違いしてた、のことはもう乗り越えて変わったと勝手に思い込んでた、けど違う! 私はなにも乗り越えてないし変わってもいない!」頭を上げると、頬の絆創膏を思いっきり剥がして地面に叩きつけた。


 「だから今! 石浦瑛馬はつらい過去を乗り越えた! そして新たな石浦瑛馬に変わった! だから、私の傍にいてくれるな? 日脚君!」俺にピン!と張った右手を差し伸べてきた。


 やっぱ会長は、さっきまでの落ちぶれた会長より、このうざいくらい明るい会長が良く似合う「ってェ! 俺がお願いしてるのになんでお願いで返すんすか!」その真っすぐな右手を掴んで立ち上がる。


 てっちょ! 立ち上がった瞬間会長がまた俺の胸に飛び込んでき。でもそこには「ぎゃああああああ!!! なんじゃこりゃ!!!」会長の鼻水が・・・「えーん・・・かおにはなみずがついた!・・・」すぐに突き放されて、ポケットティッシュで顔を拭き始めた。


 「そのティッシュ俺にもくださいよ! まとわり付いてて気持ちわりぃんすよ!」


 「鼻たれ小僧にやるティッシュはねぇ!」


 「鼻水の持ち主の言われたかねぇよ!」なにがなんでもそのティッシュを奪い取ってやる! 必死に抵抗されるも諦めず何度もトライしてやる。


 「石浦! 日脚!」しばらく存在が忘れかけていた、島根先生に突然大声で名前を呼ばれた。「・・・ホントにやめるつもりはないんだな」


 「はい、先日の発言は撤回いたします」曇った表情で俺たちを睨んでくる。俺たちの意思はもう揺らがない。


 「・・・そうか。掃除道具持ってくるから、ちゃっと綺麗にしろよ」そう言い「もうすぐ授業始まるぞ、教室戻れ!」と関係ない生徒に注意しながら校舎に入って行った。


 「しょうがないよね、私たちが汚したんだから後始末も仕事の内だから」


 「まぁ・・・それもそうすね」今回だけは文句の一つも言わないでおくよ。


 「じゃあ先生来る前に学生証抜いて東高の人たち追い出そっか」


 「了解っす」


 会長と手分けして作業に取りかかる。「やっぱコイツ新井真澄2年か。おい、起きろ金髪」ぐうすか伸びきってる金髪の肩を起きるまでポンポン叩く。


 「うっ・・・5秒ホールドしてやるからしっかり撮れよ・・・」コイツやっぱ気色わる。「は! 貴様!」やっと起きたと思ったら貴様呼ばわりかよ。


 「俺が勝ったんだから、さっさと帰れ」


 「ふざけんじゃないわよ! 第2ランドだ、次は絶対勝つ!」


 「負け犬はとっとと帰れ! また後日出直してこい!」必死に奴の巨体を学校の外まで押す。


 「く、クソが! この屈辱・・・必ずお前にも」


 「うるせぇ!」思いっきり道に突き飛ばすと、せこせこと走って去ってた。「これ奴の学生証です」会長に渡す。「他は全員帰りました?」


 「うん、会釈までしてすんなり帰ってったよ」


 「そうすか」これ以上入ってこれないよう門を閉鎖する。「またあのオカマに喧嘩売られると思うと、一気に気が重くなるな・・・」


 「ちな、あいつノンケな左耳にしかピアス付いてないから」


 「見るだけで胃もたれになりそう・・・」


 「この先もあんな訳の分からん変なキャラの不良に出会うのか・・・ そういえば西高のあの、なんでしたっけ? 食べ物みたいな名前の女」


 「なんだっけ・・・あ!タコス総督!」


 「ばななちゃん!!! 何を聞き間違えたらばなながタコスになるのよ! てか総督ってなに?! 人間なの? タコスなの?」絞めた門の外側から凄い勢いでこっちに割り込んでくる。


 「ごめん適当に言っただけだから」


 「てかお前! 完全にあーしのこと忘れてたろ!」


 「うん」ピアスの話で割り込んでこなきゃ一生忘れてた。「てかヤンキーなら空気読まずに割り込んでくればいいじゃん」


 「今回ばかりはできんかったわ! お前できんの? 向こうでメチャ重要な会話してて突然って言える?!」


 「俺はできないけど、会長はできます」


 「急に私に振らないでよ・・・」


 てことは、コイツばななちゃん今の今までずーと待ってたわけ。「だいたいお前タイミング悪いんだよ! 病み上がりなんだから来るなよ」


 「病み上がりだから狙って仕掛けに来たんだよ! わかる? 頭悪いの?」


 「頭は悪いよ! だって怪我したんだから! とにかく今日はもうパス」


 「逃げるんだ?」


 「拒否だ!」


 「ちっ! あーそう、そっちがその気なら明日もっかいさせてやる。覚悟しろ本田日脚!」ばななちゃんは腹いせに門をバットで殴って、怒ってどっかに行った。


 「・・・」


 「・・・とりあえず掃除しようか日脚君」


 「そうすね」

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