4高統一編
第七話! 本田日脚の噂はすぐに広まった! カモ高が産んだ悲しき線香花火として、ヤンキーどもの記憶の片隅にこべり付くだろう!
「日脚君!!!」私はすぐに日脚君の元に駆け寄った。日脚君の頭からは大量に出血していて、その血が滑り台のスロープ部分を真っ赤に染めていた。「そんな・・・いや・・・イヤァァァァァァァ」私はその光景を見て思わず悲鳴と涙が出てしまう。
すぐさまスロープから頭を降ろして、ポケットにあるハンカチを傷口に当てて止血を試みる。私に適切な医療知識なんかないけど、血が止まらない時の対処法の処置ぐらいならわかる。今はこの浅はかな知識に頼るしかない。「ひ、日脚君・・・しっかりして・・・死なないで・・・」すぐにハンカチは赤黒く染まってしまったけど、血は一向に止まる気配がしなかった。
「大河さん。流石にヤバくないですか、あれ?」
「平気だ、人はあれぐらいじゃ死なない。でも念のために救急車呼んでけ」
「おねがい・・・止まって。止まらないと日脚君が死んじゃうの!」全然血が止まらない。どうしよう・・・どうしたらいい?。パニックで頭が回らない、何か大事なことを忘れてるような気がする・・・ そうだ! 救急車! 救急車呼ばないと、片手でスマホを地面に置いてロックを外そうと画面を叩くが「なんで?! なんで開かないの!」スマホが全く言うことを聞いてくれない。血の付いた指で必死にタップしても、少し反応してはしなくなるの繰り返し。
そうか、汚れてて反応しないんだ。手に着いた血をスカートで拭いて、画面はブレザーの袖で急いで拭き取る。「これなら・・・よし!」さっきとは嘘のようにスムーズに反応しロックが外れた。「は、早く電話しないと・・・」ダイヤルの画面が開けた時、急に私の頭が真っ白になるような感覚に襲われた。
「救急車って何番だっけ・・・」あれ? なんで私わからないの・・・? パトカーは110番。消防車は119番。救急車って何番だっけ?・・・なんでこんなのも忘れるの?! 国民の常識でしょ! なんで忘れるの・・・
「あと5分で着くそうです」
「そうか、お前たちは先に行け」
どうしよう・・・思い出せない。思い出せないと救急車呼べないよ・・・
「
「え、ホント?」私は奴の方を向いた。不覚にも奴のことが一瞬神様のような存在に見えてしまった。「これで・・・これで日脚君が助かる」私を圧迫していた何かが少し和らいだ感じがした。
「それはどうかな。見た感じ息してないし、半目だし、死んでるように見えるけどな」
「ふ、ふざけないで! 日脚君は死んでない! ちゃんと生きてるもん!」この状態でまだ私を追い詰めるつもり!
「そうだ、一つ忠告してやる。そいつがそうなったのはお前の責任だ」
「私のせい・・・」
「ヤンキーを舐めるからこうなるんだ。あ~あ、かわいそうに。1年を戦陣に立たせといて、自分は一歩後ろで高みの見物とは」
「う、うるさい! 仕方ないじゃん! ヤンキーになれなかったんだから、こうするしか・・・」私だってヤンキーになれてたら、今頃アンタを半殺しにしてやる!
「なら俺がヤンキーにしてやるよ」急に頬を突き出してきて「ほら、一発だけ殴らしてやるよ」と自分の頬を殴るよう私に挑発してきた。
「どこまでも人をこけにして・・・許せない!」私は感情の動くまま奴の頬を思いっきり殴った。「ど、どうだ! 日脚君の仇だ!」殴りなれてなくて、右手の拳部分と肩と肘の関節がズキズキ痛い。
「仇ねェ・・・!」がはっ!・・・奴が私の頬に殴り返してきた。もろに受けた反動で、血だまり上に手を付いて倒れてしまう。
痛い・・・生まれて初めて殴られた。歯が痛い、絶対何本か折れてる。痛みで瞑った目を開くと「イヤッ!・・・」私日脚君の横に倒れたんだ。
「なにが仇だ、そいつの仇にしてはまだまだ全然足りねェよ!」
「うぐっ!・・・」私の頭を掴んで血だまりの地面に顔を押し当てる。「いや、やめて!」押し潰されるたびに日脚君の血が私の口や鼻や目に入ってきて苦しい・・・
「コイツがどんな思いで戦ったのか、お前にわかるのか? コイツがどんな痛みを背負ったのか、お前にわかるのか! 後ろで偉そうに見てた、お前がわかるのか、ええ! わかりもしねぇで勝手に仇とかほざいてんじゃねぇぞクソ女が!!!」私の頭を持ち上げた後、再び地面に勢い良く押し付けられた。
「ご、ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」地面にぶつけられた私は、完全に怯えながら謝ることしかできなかった。「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
「日脚のためだ、もう二度と
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」浅はかな考えでヤンキーの世界に踏み入ってしまってごめんなさい・・・
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」私のせいで大怪我をさせてしまった日脚君・・・ごめんなさい・・・
ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・
4月11日 午後12時31分 和光第二高等学校 生徒会長室
あの後、奴の言う通り救急車が公園に来た。私と日脚君は和光市民病院に送られた。私は頬の痣程度の軽傷で済んだけど、日脚君は10針も縫う重症で意識が戻らない。そして今も入院中。
あの後、私は
次の日には噂はすぐに学校中に広まった。私が無理やり闘わせて病院送りにした。
間違ってはいないけど・・・いや、事実。全校生徒の私に向ける冷ややかな視線は耐えきれず以来1日中この生徒会長室に籠っている。
ここはいい。嫌な視線や陰口から守ってくれる最強の要塞。スマホも充電しながら使えるし、のどが乾いたら冷蔵庫にキンキンに冷えたオクトコもあるし、トイレも廊下出てすぐの所にあるから漏らす心配もない。
最初は「なんで近くにトイレあるの! 私生徒会長よ!」とか文句言ってたけど、この時の為にあったんだ~と今はメチャ感謝してる。
さ~て、皆はお昼ご飯だけどそんなの私には必要ない! 溜まりに溜まった海外ドラマここで一気見しよ~
コンコンコン・・・
て、誰よ! こんないいタイミングでノックしてくる輩は!「1年クラス委員の安西拳市です。少し時間よろしいですか?」
1年のクラス委員? なんで私に用が?「要件はなに?」
「クラスの何名かが本田日脚君に手紙を書いたので届けて欲しいです」
「手紙ぐらいなら、病院に直接送ればいいじゃない」
「学校が切手代出してくれないんで郵送できないんですよ」あのタヌキオヤジめ・・・「とにかく開けてください。じゃないと昼休み食えないんですよ」
「あ~もう、わかったわかった。今開けるから」私は重い腰をどうにか持ち上げてドアを開けた。
部屋の前には確かに一人の生徒が立っていた。高身長で女子が虜になりそうな容姿をした男子。「あなたホントに1人、先生の指示で私を連れだすのが目的じゃないよね」
「まぁそれもありますけど、後から足されたって言い方が正しいですかね」
「どういうこと?」
「始まりは、手紙を書いたから俺に届けて欲しいだけだったのに、本田君の知人を名乗る生徒から差し入れの本を送ってほしいと足され、そして一連のやり取りをたまたま見ていた島根先生が、届けるなら生徒会長にやらせなさい引きこもってるからいい運動になるって、そしてついでに会長の様子を見てほしいと、雪だるま式に足されに足され今に至ります」
「お、おう・・・それは、ご苦労様です」私の後継者彼にしようかな・・・「あ、ありがとう。でも大変言いにくいけど・・・私だけお見舞いできなくなってしまって・・・」
「・・・マジすか」
「だからごめんね。届けるなら自分たちでお願い」こういう時の生徒会長なのに、今の私全く使い物になってない。
「わかりました。そういうことなら仕方ないですね。自分が行きます」
「あ、ちょっと待って!」その場を立ち去ろうとする1年を呼び止める「その、日脚君の様子見てきてくれると助かるんでけど・・・いいかな?」
「あぁ、いいですよ」
「ホント! ありがとう。えっと・・・」
「安西拳市です。困った時はお互い助け合いです。では」一礼して階段を降りて行った。
安西君か・・・ 1年なのに校長みたいに落ち着いてるなぁ。私がこんなんじゃなかったら生徒会に興味ある? って勧誘してたかな。
でも今は、ここを出たくない。
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