第六話! 大塚会の掟その壱、大塚会の辞書に恋愛と言う文字などない! 恋人は大学に入ってから作れ!

 「あ? おめェなにガン飛ばしてんだよコラァ」会長の指示で嫌々正門に着くと、いきなり学ランを着た同じ身長程の茶髪のヤンキーに睨まれる。


 「そ、そっちこそ勝手に人の目見てんじゃねぇよ!」俺も何故かムキになって睨み返す。視線を逸らせばいいんだが、なぜか逸らすと負けた事みたいに思ってしまって離せなくなっている。


 「大体お前誰よ、そこいられちゃ1年カツアゲ出来ねぇんだけど」集団の一人であろう東高の1人が言ってきた。「だったら中入って直接カツアゲすればいいだろ」なんでわざわざこっちに誘ってんだ俺。


 「入れねぇんだよ。うち東高の校則で入ったら退学になんだよ!」


 「なんでヤンキーが律儀に校則守ってんだよ!」


 「退学なったら大学入れないだろうが、そしたら女子大生お持ち帰りできなくなるだろがァ」茶髪が言った後周りの東高のヤンキーが一斉に「そうだ、そうだ!」と口を揃えて連呼し始める。


 「お前ら気色悪・・・」お前ら全員大学落ちてしまえ!


 「気色悪いのはお前もだろォ!」茶髪がいきなり大声を荒げ「お前何なんだよ、ずっと俺にガン飛ばしやがって! 喧嘩か? 俺と喧嘩がしたいのか、アン?」俺に詰め寄る。喧嘩って、それしか方法がないのかよ。今日はこれ以上痛い目に会いたくないんだよ。


 「誤解を招くから訂正するが、お前から先にガン飛ばして来たんだからな!」何とか喧嘩以外で追い払いが、なぜかさっきから相手を挑発してしまう!


 会長早く来て! 今にもコイツと喧嘩おっ始まりそうなんだけど。「お待たせ! 日脚君!」会長の声だ、咄嗟に後ろを振り返る。


 「ここで応援してるから、あんな不良ボコボコにしちゃえ、日脚君!」来たはいいが、俺と会長の距離は体感で5メートルぐらいも離れてるし、なんか手にPOLICEと書かれた透明な板みたいな物も持ってる。


 「な、なにを持ってるんですか・・・」まずはそのをツッコむよね。「あぁ大丈夫、これ偽物レプリカだから」だから何のレプリカなんですか! すると後ろの不良の一人が「あれ警察の盾じゃね? 俺ドラマで見たことあるぞ」ボソッと言った。


 「なんで、盾なんか持ってるんですか! ズルいですよ1人だけ!」


 「だって私ヤンキーじゃないもん! 身を守るためにはこれぐらいいいでしょ!」1回でもいいから警察に捕まれ!「それよりまだ追い払ってないの? 私が来るまで時間あったよね、さっさと喧嘩しちゃってよ」なんで、どいつヤンキーこいつ会長も喧嘩しか頭にないんだよ!


 「なにこいつら」


 「俺たちにリア充アピかよ」


 「喧嘩だけがすべてじゃないんすよ、人間は知性ある生き物なんではな・・・」会長と口論している最中、後ろから誰かに右腕を掴まれ、そのまま思いっきりどこかに投げ飛ばされた。


 「ぐはッ・・・」強い衝撃と共に痛みが背中に広がる。急になんだ? 状況が掴めない。次の瞬間、猛スピードで靴の裏らしきものが目の前に現れる。本能が避けろと命令したのか反射的に左に避ける。


 「はやい!」靴は乾いた音と共に勢い良く壁にぶつかった。あぶねぇ・・・頭が壁にめり込むとこだった。一体どこの誰だ!


 「日脚君!」目の前の東高のヤンキーの奥から会長の声がする。学校の向かい側まで投げ飛ばされたのか俺。


 「よく避けれたな、お前」茶髪が驚いた顔でこっちを見る。犯人はこいつか。「サッカー部出身は伊達じゃないんだよ」なにサラッとカッコつけてんだ俺!


 「お前、いよいよマジでナニモンだ?」流れてきに名乗るしかなくなったな。


 「俺は、ほん・・・」


 「1年1組本田日脚! この和光第二高校最強のヤンキーよ!」


 「なんで会長が名乗るんだよ!」美味しいとこ全部取るなこのアマ!」全員会長の方向いちゃったじゃないか!


 「カモ高和光第二高校のヤンキーだって? おい聞いたか、こいつらとことん俺らのこと舐めてるよな!」後ろから表情はわからないが、キレてることだけはわかる。


 「あらそう、じゃあこれ見ても舐めてるって言えるわけ?」会長が何かをヤンキーに見せると、一斉に俺の方を向き「なんでお前らが柴田たちの学生証持ってんだよ!」茶髪に言い寄られる。詳しく学生証見てないからわかんないけど、恐らくパンチ頭の事だと思う。「なんでって、絡まれたからシメただけだ」


 「嘘つけ!」証拠があるのに嘘つく必要あるか。「お前みたいな1年が返り討ちにできるわけないだろ!」と突然殴りかかってくる、さらりとその攻撃をかわす。


 「避けんな!」避けない奴が何処にいる。茶髪が放つすべてのパンチを俺はよけ続けた。


 「まて、吉田茶髪」集団の1人の背の高い坊主が茶髪の肩を叩いて止まる。


 「止めんな!」


 「俺に任せろ、おい1年!」坊主が俺に話しかけてきた。


 「な、なんだよ」


 「ちょっとツラ貸してもらうぞ」この流れってまさか・・・


 「嫌と言いたら」言い終わると逃げられないよう背後に2人回られた。


 「ついて来い」やっぱり喧嘩の流れだよなぁ・・・坊主の先導のもと何処かに連行される。「後1年の彼女石浦瑛馬、お前も来い」


 「私彼女じゃない!」彼女にしたくもない・・・


 半強制的に連れてこられた場所は学校近くの公園。ブランコや滑り台の基本的な遊具がある広めの公園、夕方になるとよくヤンキーが喧嘩してるのを見たことがある。公園に着くとヤンキー同士で固まり、対立する形でお互い向き合う。10人の学ランを着たヤンキーの集団はなかなか足が竦むなぁ。


 「今副会長に連絡したから、1年は安全に下校できるよ」来る途中ずっと携帯をいじっていた会長がそっと後ろから耳打ちで知らせてくれた。


 「じゃあダッシュで逃げていすか?」任務は追い払うことだからこれでいいはず。


 「ダメよ、ここで逃げたら軟派モン卑怯な奴のレッテルが貼られる」10人も一斉に来られたら勝ち目無いって・・・


 「イチャイチャすんなリア充!」遠くから茶髪に叱られた。


 「「リア充じゃないってば!」」なんでお互いハモルの。


 「1年・・・いや、本田日脚! 俺とタイマンで勝負だ!」茶髪が前に出て俺に宣戦布告してきた。「いいよなァ」横の坊主頭は縦に頭を振る「柴田の仇撃ちだ、前に出ろ!」


 「行かなきゃダメっすか」会長の方を向くと、高速で頭を縦に振っていた。行くしかないのか・・・仕方なく1歩前に出ると、茶髪がいきなりダッシュでこっちに走って蹴りかかって来る。あぶねぇ! ギリギリのとこで左に避ける・・・《いや避けちゃダメだ!》》 


 「キャアァァァ!」会長の悲鳴が公園に響きわたる。蹴りが盾に当たり、会長は大きく後ろに吹き飛んだ。「しまっ!」会長を気にした一瞬の隙に、茶髪の殴りが左頬に直撃した。「がはっ・・・!」そしてその場に倒れこんだ。


 「タイマンは目が合ったら開始の合図だ。覚えとけェ!」しらねぇよ、初めてのタイマンなんだもん。それより会長は! 吹き飛んだ会長の方を見ると、左腕の二の腕部分を抑えて痛みをこらえる表情をしている。


 「」茶髪が会長に言うと、睨みながら立ち上がる。


 今だ! 不意を突いて、倒れたまま足払いで茶髪を転ばせる。倒れた隙に立ち上がって「」似たセリフを言ってやったぜ。


 「このガキ!」すぐに起き上がり、また蹴りかかって来る。正面から脚を上げて力いっぱいに蹴る動作は至極単調でかわしやすい。その後の攻撃もさらりとかわし、相手の体力を一方的に奪うっていく。


 「ぜぇ・・・ぜぇ・・・ぜぇ・・・ 避けてねぇで真面目に戦えや!」パンチ頭柴田も同じこと言ってたっけ?「コイツで終わりにしてやる!」


 (!闘魂技発動! !)


 吉田は空に飛び、空中で右脚を高く上げてそのまま踵落しを決めに来る。さっきと比べて早いけど、これも単調な動きで、さらりとかわす。


 「また避けやがってェ!」ムキになる茶髪。なら俺も終わらせてやる!


 (!闘魂技発動!)


 茶髪に向かって飛び、空中で左脚を上げて踵落しを頭目掛けて振り下ろす。が、1歩後ろに避けられる。「勝手に俺の真似してんじゃねェ!」それはどうかな、左脚が地面に着いた時には、姿勢は低く右脚は頭の位置までもう引いてある。


 「な、なに?!」


 (!闘魂技! !)


 引いた右脚を勢い良く顎を下から蹴り上げるシュート、歯と歯がぶつかり合う音と共に茶髪は後ろに吹き飛んだ。地面に倒れた頃には、既に気絶していた。


 「よ、よっしャー!!!」何とか勝ってやったぞ! 「やったね、日脚君!」後ろからは会長の喜ぶ声も聞こえる。


 「おめでとう、日脚君」


 「ありがとうございます!」嬉しさのあまり近づいてきた坊主頭にも礼を言ってしまった。「勝った奴は負けた奴の学生証を奪うのがタイマンのルールだ」と親切に吉田の財布から抜き取って俺に渡してくれた。


 「あぁ、どうも」俺は学生証を受け取った。「じゃあもう、これで終わり?」


 「まぁそうだな」よし、帰ろう。「吉田とのタイマンがな」え・・・「こっちは後9人も控えてるんだぞ。全員に勝つか、お前が負けるまで続く」


 「ちょっと待てそんなの一言も聞いてないぞ! こっちは1秒でも早く終わらせたいんだよ!」


 「ならお望み通りすぐに終わらせてやる!」早い、突然服を掴まれた!


  (!闘魂技発動! 


 「うわっ!」服を掴んだまま宙に浮かされ、次の瞬間には地面に投げつけられ茶色い土が見えていた。しかしそれもつかの間、靴底に後頭部を踏まれ、地面に叩きつけられる。頭が勝ち割れそうになるほどの痛みがおでこと鼻と唇にのしかかり、息をすると地面の土が鼻の穴に入り込んで凄く苦しい!


 「1年にしてはなかなかよくやった方だ。1日で3年を2人もシメたんだからな」コイツ徐々に力加えてやがる! 地面にめり込んで顔に小石が刺さる!・・・「入る学校が違えばもしかしたら俺の横に立っていたかもなァ」苦しい・・・い、痛い「どうだ、俺と取引しないか?」


 「な、なにを!」


 「降参して学生証を渡せ、そしたら俺のツテで卒業まで特別扱い不良に絡まれなくしてやる。残りの時間、真面目に授業を受け、バイトに勤しみ、彼女とイチャイチャする理想の青春スクールライフを送らせてやる」ダメだ、痛みで意識が薄れ行く・・・「世の学生が羨む理想の青春を約束すると言ってるんだ、死ぬ前に決断しろ」なに、え、えらそうに・・・


 「学生書はまだ待ってないの!」か、かいち・・・「まだ発行されてないの! 降参するから早く足をどけて! このままじゃ日脚君が死んじゃう・・・」


 「・・・じゃあお前発行してこい」


 「えっ?!」


 「事情を話せばすぐに発行してくれるだろ。ここで待ってるから取りに行ってこい」


 「・・・チッ」


 「・・・ほら、これで交渉成立だ」


 ・・・・・・! かるい、いきが・・・すえ、「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ!」


 「日脚君!」かい長が・・・きゅうにかけよって来た。なにこれ、甘い、いや鼻からちが出てるだけか。けっこう大りょうに出てる。


 「これだけ出てると何だかわらえてくるなぁ・・・ハハハハ」


 「しっかりして! 日脚君!」


 「酸欠で少し混乱してるだけだ、直治る。それより・・・」


 「キャア!・・・」かい長? 急にひめいの様なこえと共にはなれて行った。何がおきたのかゆっくり振り向くと、一瞬だけだが坊ずに髪を掴まれているのが見えた。


 「確かお前の声、どっかで聞いたことあると思ったら、入学式で俺たちに怒鳴ったバカ女か」


 「だったら何よ・・・!」


 「不良の世界はな、お前じゃ想像もつかない厳しい世界なんだよ」何してんだよはげ・・・


 「そんなの・・・わかってる!」


 「いや、1ミリもわかってない。さっき思い知らされただろ、女だろうと構わず平気で蹴られて血を流す殺伐な世界なんだ・・・」やめろ・・・はなせや!会長を離せ・・・


 「離せ言ってんだろうがーーー!!!」回復した数少ない力を振り絞り、勢い良く立ち上がって坊主に突進する。坊主と一緒に倒れこむと直ぐに奴に跨り「てめぇ調子乗んな」すぐに胸倉を掴み、奴の顔面に鼻血を垂らしながら「勝手に会長いじめてんじゃねェよ! 何様なんだよお前!」怒りのあまり叫んで声が裏返りながらも「ハゲの分際でなに調子こいたことやってくれてんだよ、お前そんなに偉いのかよ偉くもなんもねぇだろ! なんで偉くもねぇ奴にいじめられなきゃならねんだよ・・・なんで偉くもねぇ奴に殴られなきゃいけねぇんだよ・・・なんで偉くもねぇ奴に! 怯えなきゃいけねぇんだよ!」右拳を空高く挙げ、鼻血まみれの坊主の顔面を殴りつける。


 が、それよりも速く坊主に顔面を殴られた。殴られた衝撃でくらみ、髪を掴まれ振り落とされた。


 「だらだらだらだらと、鼻血垂れながらだらだらと。何をほざくかと思えば不平不満ばっか、何様だお前はだ? お前よりは上の存在だバカヤロウがァ!」


 「うぐっ!」坊主に頭を蹴られる。そしてまた髪を掴まれ、何か冷たい出っ張った金属の上に載せられた。


 「俺が? いじめられる奴お前に比べたらみんな偉いんだよ!」


 「がっ、!アァァ!・・・」こめかみを蹴られた。一方は硬い靴底で蹴られた痛み、反対側は冷たい金属が食い込んでとてもじゃない痛みが双方から襲ってくる。


 「いじめて何が悪い!」また蹴られ、頭の中に金属音が反響し始めた・・・


 「いじめってのは偉い奴の特権だ!」また蹴られ、今どは泣き声とひ鳴が入り混じった声が遠くから聞こえる・・・

 

 「権力を振りかざして何が悪い!」また蹴られた、いったいこれはだれの声だろう・・・ 


 「悪いのはいじめられるだけの存在のお前だ!!!」またけられた、あたまのなかでなにかぐちゃっておとがした・・・なんかしたにちがながれていく・・・あぁ、そうか・・・このこえ・・・かいちょうのこえ・・・か。

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