第五話! 東高と南高は学ラン! 西高と北高はブレザーだ!
同日 午後12時52分 埼玉埼玉県立和光第二高等学校 会議室
重苦しい空気の中、急遽島根先生との面談が始まった。お硬い顔で腕を組んで机の向かい側に座っている。
「日脚......なんであんな馬鹿なことをやったんだ」もう過ぎた事なのに、まだ心臓がバクバク動いて脚も小刻みに震えてやがる。「先生言ったよな、不良まがいにはなるなって。なのになぜ2年生に暴力なんか加えた」
「......アイツが俺に言ったんです、裏門から出れば不良に絡まれずに帰れるって。けど全部嘘だったんです、すぐに学ラン着たヤンキーに殴られて財布の金全部取られたんです」
「灘波工業高校の生徒が嘘を着いた可能性だってあるぞ」
「いえ、ヤンキーが増田って言ってたんで」俺が言い終わると島根先生がわかりやすく頭を抱えた。
「なぁ日脚、うちの学校の校則には目を通したか?」
「いえ、まだ......」生徒手帳に書かれてある校則の事か。中学の時と同じで、ほとんど見ていない。
「最初らへんに書いてあるんだが、校内で暴力行為を行った生徒は即刻退学処分とする、と書かれてるんだ」
まじで......「じゃあ、退学ですか俺......」なんでそこだけ厳しいだ、普通は停学なんじゃないの。
「今回増田側にも非はあるが、殴ったお前にも勿論ある。けど俺も退学はちとやり過ぎだとは思ってる。今裏で校長先生が会議をしてるから、退学を取り消すよう抗議して来るから!」そう言って足早に会議室から出て行った。退学か、まさか自分がなるなって思いもしなかったな......母さんにはなんて言おう。受験が失敗した時でさえ号泣して飯も食えなくなったのに、入学初日に2年生殴って退学になりましたなって......心臓止まるんじゃないかなぁ。
そしてしばらくするとドアが開いて、島根先生が戻ってきた。心なしかさっきよりかは緩んだ顔だ。その後ろには封筒を持った生徒会長がいる。なんでこんな所にいるんだろう。
「すまん、日脚。校長先生さっき入れ違いで学校出てしまったんだ。けどな、もしかしたら退学免れそうかもしれん」免れるかも......?
「生徒会長の石浦です。私も会議に出てて、今回悪いのは日脚君だけじゃないしな~どうしようかな......とか曖昧なことぬかしてたんでで多分免れると思います!」
「はぁ......」校長が曖昧な決断して大丈夫なのかこの学校。
「とりあえず、今日は書類に名前書いてくれればもう終わりなんで」会長が俺の前にスッと書類とボールペンを出しくれた。
一面に難しい言葉が書かれていて理解できない。「これに名前書いたら終わりですか?
「多分」じゃあ書くか、一番下の書く場所に自分の名前を書き始める。
「石浦、日脚が書いてるのってどんな書類だ?」
「PTAに出す書類です」
「PTAに? ちょっと見してくれ」丁度書き終わったタイミングで島根先生に書類を取られた。
てか待てよ、よく考えたら正門にまだヤンキーいるから帰れないじゃん。裏門も安全じゃないのもわかったし、マジで八方ふさがりじゃん......
「ねぇ日脚君。お昼まだだよね、私もまだなんだよね~ よかったら一緒に行かない?」会長が俺の所にやってきて、左腕を掴んで無理やり椅子から立たせてきた。
「いや......でも俺金なくて」
「大丈夫、生徒会長はツケで飲み食い出来るから奢ってあげるよ。ささ、行こ行こ!」なにもそんなに焦らなくても、半ば強引に俺を連れ出そうとする。
「石浦」会長がドアを開けた所で呼び止められた。「これ、お前が書いただろ」
「やめてくださいよ。いくら
「校長の品川の川はこっちの河だぞ」
「嘘!」
「嘘に決まってるだろ! 石浦! これお前が作ったな!」
「ちょっと! 生徒騙すなんて教師としてどうなんですかネチネチ!」裏でこんなかわいい呼ばれ方されてるんだ島根先生......
「なんて書かれてるんですか? 先生」
「この書類によると、本田日脚は
「な、なんだってーーー!!!」俺がヤンキーだって!
「なお拒否した場合、本田日脚を即刻退学処分とする......だって!」た、退学?! ヤンキーにならなきゃ退学って頭おかしいにも程があるだろ!
「ちょ、ちょっと会長! これどういうことですか! かい......」まだ喋ってる途中なのに、強引に腕を引っ張られ会議室から連れ出された。
「どういうことすっか! 説明してくださいよ!」色々と理解が追い付かない! なんで俺は今生徒会室でオクトコーラ片手に立ってるんだ?
「それじゃあ! 私たちの出会いとこれからに! カンパーイ!」そんなカンパーイ! って言われても乾杯する気になれねぇよ。「なんだなんだ、ヤンキーの癖に陰キャなのかキミ?」
「うっせぇし、ちげーよ! 状況が呑み込めないんだよ。けどカンパーイ! したら骨の髄までしゃぶられそうな気がする」ここの生徒のトップはこんなにも危ない人なのかよ。
「まぁわかんないよね、あれじゃ」
「頭からケツまで俺が理解できるようにもっかい説明してください」俺も机に缶を置いて、近くの椅子に座る。
「キミがネチネチと面談してる裏で、私とシナッちゃんでキミの処遇について議論してたの」
「まずシナちゃんって誰ですか......」
「あぁごめん、校長先生のこと」もしかして校長舐められてる? 「事件現場に私といて全部見てたから凄い怒って即退学だーなんて言ってたから」
「まぁ2年生ボコボコにしちゃったからな......そういえばアイツどうなったんですか?」
「全身痣だらけ、たんこぶ切れて血流しながら保健室で横になってる。それに増田だけじゃなくて、東高の上級生3人もボコしてるからね、キミ」
「なんでわかるんですか、校長には言ってないのに」
会長の上着から3枚のカードを「これ見せてきたよね。私に肩ぎゅうしながら」目を尖らせながら俺に見せきた。
「あ、それ! ......肩のことはすいません」あの時は頭に血が昇って訳わかんなくて......「え?なんでそれだけで逆にわかるんですか?」
「この地域ではね、ヤンキーが喧嘩に負けると学生証を奪われるって言う謎のルールがあるの。校長10年もここにいるから、すぐわかったみたい」
不良にもルールが存在するのが不思議なんだが......
「で、そんなすぐ退学させたい校長に対して待ったをかけたの。せっかく現れたヤンキーを退学にするのは勿体ない! って」てか俺もうヤンキー扱いなんだ......
「そしたらさらに怒り出しちゃって」当たり前でしょ。「で、私言ったの。彼は私が待ち望んでた存在なんですよ! 私と一緒にこの学校を変える
「は、恥ずかし過ぎて死にそうになってきた......」人生で初めてだよきーぱーそんなんて言われるの......サッカー部の時だって言われなかったもん。
「勿論校長も最初は反対したけど、粘り続けたら例の条件が飛んできてね」退学の件か......「日脚君の退学の保留を認めよう、そしてキミの言うヤンキー活動も認めよう。その代わり日脚君がヤンキー活動を拒んだ場合、日脚君と一緒に退学してもらうよ。って言われて、私は複雑な気持ちで書類作らされて、どっか行っちゃったよ」普通校長が書くものなんじゃないのそこ......「今頃東高で土下座してる頃かな~」それこそ会長にやらせればいいのに。え? 一緒に退学?
「今、一緒に退学って言いませんでした?」
「うん。言ったよ」
「どういう意味ですか......?」
「そのまんまの意味だよ、私も一緒に日脚君と退学するのなっちゃった......」
「え......ええ!!!」イカれてる......気づかない所で他人の人生背負わされてた......
「でもホント良かったよ、キミがあの書類に署名してくれて」残ったコーラを一気に飲み干すしてるけど、俺この人に騙されたんだけど! 確かPTAに出す書類とか言ってなかったけ?!
「よく読まなかったキミが悪いじゃないの!」なんで読まれた! 急にこっちを睨んで逆ギレしながら缶潰してる! 「私もまさか退学賭けられるなんて思ってなかったし。まぁでも今日中にヤンキー見つけなかったら、私解任されるんだったわ。まぁ仕方なく飲んであげたかな」常にギリギリなんだなこの人......「まぁともかく、私のお陰でキミは一時退学は免れ、私は今日中にヤンキーを見つけて手駒にすることが出来た。Win-Winな関係じゃん!」
どこがWin-Winだよ、一方的にヤンキーにされて挙句の果てアンタの人生まで背負う羽目になるなんて......「なんかもう退学したい......」
「ちょっと、その退学って言葉! 私も心に来るんだから喋らないで! 次喋ったらオクトコあげないから!」別にいいよ、俺ケシコ派だし。「因みにこの学校の自販機オクトコしか売ってないから、ケシコとぺシコが欲しかったらコンビニまで行って買ってね」生徒会長の権力くだらないことに使ってんじゃねぇよ。
「じゃあ次は日脚君のヤンキー活動について説明するね」
「具体的に何をすればいいんですか?」
「正式名所は和光第二高校の地位回復活動。日脚君の目標はこの学校を他校に舐められない学校にすること。その為には、まずは町を巡回してわが校の生徒がヤンキーに絡まれてたらそれを助ける」それ俺じゃなくてお巡りさんの仕事なんじゃ......「そして2つ目、こっちが重要。東西南北すべての学校で番はってる奴を倒す!」
「ば、番はってる奴?」聞いたこともない
「
「ヤンキーってただオラついて絡んでくる輩じゃないんですか?」その中にも強い弱いがあるのかよ。「ヤンキーは組織で出来ているの。群れない1匹狼なんて存在しないの」
「具体的どんな組織があるんですか?」
「4つ組織があって、東高の
「全員倒してもらうからね、じゃないですよ! 俺一人でじゃ絶対無理っすよ」
「キミ一人に全部背負わせる訳ないじゃん」さっきアンタの口がそう断言した気がするんだが。「私だって日脚君以外のヤンキーをバンバンスカウトするつもりだから! 見つけたら」
「いるんですか、俺以外に......」
「なんかね、それっぽい人はちらほらいるのよ」
「じゃあもしいるんだったら、俺以外のヤンキーもスカウトしてくださいよ絶対に!」
「モチ!」俺に満面の笑みと一緒にサムズアップしてきた。
「大まかな説明も済んだし、早速初仕事してもらおうかな」マジ、お腹空いたんだけど......
「あそこの正門見える?」会長の席の後ろにある窓の外を指さし、俺に見るよう促す。「あそこのヤンキーのせいで1年が帰れなくなってるの」
「はぁ、」嘘、まだ帰ってないの......「だから、1年が帰れるよう追い払って欲しいの」
「え、俺1人で?!」数は昼前より減ってるけど、それでもまだ10人くらいいるぞ。「無理ですって! 1人がやっとなのに、10人なんか相手にしたら死ぬって俺!」
「大丈夫だよ!
「内、二人命乞いしたんですよ」
「うるさいな! つべこべ言い訳しないでほら、行った行った! 私も後で応援
に行くから」会長が俺の押して無理やり行かそうとする。
「ほ、ホントですね! 絶対に後で来てくださいよ!」来なかったら後で覚えてろよ、職権乱用女。
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