第參話! 闘魂技の解放したモンは性格が攻撃的になる! それは体に馴染んでない証拠だ! 少しすれば元に戻る!

さ~てどうしたもんか......別にしたいわけじゃないけど、すぐ出ると怪しまれるし少し待つか。俺は適当な個室の扉に寄り掛かった。


 「ちょっと!」やべ、人入ってた。寄り掛かった個室から声が聞こえ思わず、体を起こす。何考えてんだ俺。すぐに邪魔にならないよう横に移動する。


 水が流れる音と共に中にいた人が出てきた。近藤ほどではないが小太りでくせ毛のある黒髪にふとぶちの眼鏡をかけている。


 「なに......してるの?」そりゃ聞かれるよな。


 「すぐ出るんで」


 「あ~もしかしてあそこでえっちゃん瑛馬に話しかけられた」


 えっちゃん?多分会長のことかな「まぁ、そっすね。それでちょっと避難じゃないすけど」やけにこいつ会長と馴れ馴れしいな。


 「あ~なるほどね」今ので納得したのかドアから出ようとする。「あ、」何か言いたそうに出るのをやめてこっちに戻ってきた。「君1年だよね?」


 「一応」急になんだこいつ。


 「お、俺2年の増田ますだよろしく」握手を求めて右手を差し出してきた。こいつ嘘だろ、俺はすぐにポケットに手を避難させた。


 「いや~でも大変だよね1年も。これから卒業まで他校の先輩ヤンキーに可愛がられるんだもんね」それはお互いさまでは?


 「まぁ、大変ですよね」できれば卒業まで関わりたくない。


 「やっぱ、関わりたくないよね。俺裏技知ってるけど聞きたい?」裏技? なんか怪しいな。「実はね......」まだ俺何も言ってねぇのに勝手に話し始めたぞ「裏門というモノが存在してね、そこを使えば不良に合わずに帰れるんだ」


 「マジすか」なんか嘘っぽいな。この後絶対3回繰り返すよ。


 「マジだよ、マジマジ」ほらな。


 「なんで知ってんすか?」情報源次第では考えてみよう。「実は俺さぁ......あ~本人には言うなって言われてんだけど、えっちゃんとでさ」きもいデレ顔で俺に小指を立てる。


 「なんすかそれ?」俺はその小指にピンと来ていなかった。


 「恋人って意味だよ!」こいつ嘘下手かよ、お前は近藤と同じカテゴリー種族だろ。


 「まぁ、そういうわけで頼れる先輩からの助言は以上だよ、騙されたと思って使ってみな、それじゃ」そう言って意気揚々と出て行った。


 裏門から出れば不良に合わないか......真偽を確かにするには直接本人に聞いてみるか。


 俺は外に出て、会長に歩み寄ろうとした。ショックからは立ち直ってはいる、竹刀と共に凛々しく仁王立ちで立っているが......よほど根に持ったのか、出た瞬間から細い目で睨んでくる。


 ヤバい、これじゃ聞くに聞けない......これ以上近づいたら竹刀で殴られそうだな......俺は静かに会釈して階段を駆け上がって自分の教室に戻った。


 「おう、戻ったか日脚。許可が下りたから食堂使えるぞ」教室に戻ると先生以外誰もいなかった。みんな俺を置いて食堂に行ったみたいだ。


 昼メシは母さんから2千円渡されて好きにしていいと言われたから、帰ってピザかバーガーのデリバリーを頼みたいから早く帰りたい......あ、そうだ、先生に聞いてみるか。


 「先生、この学校に裏門あるってホントですか?」


 「裏門? 校舎裏にあるやつか」一応存在はあるのか。「それがどうかしたのか?」


 「どんな感じすか?」


 「どんな感じって、昼でも薄暗くて、出ると狭い路地につながるから、あまり人気がないんじゃないかな」あの2年が言ってたこと本当だったのか、これ使えばワンチャンあるぞ。


 「なるほど~わっかりました」


 「誰からか聞いたか知らんが、生徒は使用禁止だからな」人気がないんだろ、使ったてバレないはず。先生はそう言い残し教室から出た。


 俺はカバンを肩に掛け、先生に見つからないよう慎重に聞き耳を立てながら階段を降りて下駄箱に着いた、自前の白のスニーカに履き替え校舎を出る。


 裏門は校舎の裏にある。詳しい場所を聞くのを忘れたけど、外からぐるっと裏に回れるはず。ビンゴ! 端まで行くと簡単に裏に回れた。


 裏は陰になってて若干寒い。路地の境目は網のフェンスで区切られていてその途中に出入りできるフェンス裏門がある。校舎側には窓が沢山あって、しゃがんで背を低くしないと、職員室の中の先生に見つかるな。ちょっと情けないけど、地面に手をあててハイハイしながら近づいた。


 マジかよ、裏門には錠前が付いてて開けることができない。ここまで来てこれかよ......俺はおもむろに周りのフェンスを見上げた。フェンスは裏門の少し上まである高さ、普通の人ならまず登れない高さだ。


 この高さなら登れそうだな。小中サッカーをやっていて運動神経が並みよりいい俺なら登れないことはない。網の隙間に靴先を無理やりねじ込み、ありったけの握力で掴み登り始める。


 ヤバい、これ。一瞬でも気が緩んだら落ちる! 先に鞄路地に投げとくんだった......でも、ハァ、順調に登ってるぞ。ハァ、もうすぐで......てっぺんだ! 最後の力で踏ん張り、フェンスを乗り越える。やった! 超え......


 「ぐえ!」


 バランスを崩して背中から地面に落ちてしまった。幸い鞄がクッションになって頭は打たなかったけど、背中は物凄く痛い......


 けど何とか学校からは出れた! 後はこのまま見つからずに家に帰るだけ! 俺は気分上々のまま光が差し込む方を目指して路地を歩いた。


 そして路地を抜け太陽の日差しが降り注ぐ表通りに出た。まぶし! 周りが急に明るくなったせいでとっさに目を瞑った。慣れるまで数秒の間、立ち止まってまぶたの裏を見るはめになった。そして徐々にジョジョに光に慣れた目を開けると。


 「はい、1年確保~」目の前に学ランを着た3人組がいた......


 「え?」


 「俺たち先輩と楽しいタノシイ交流レクリエイションあっちでやろうか」状況が掴めないまま、無理やり首に手を回され、そのままどこかに連れて行かれる。




 連れてこられたのはまたしても薄暗い路地だった。しかし今回は逃げ道のない絶望しかないタイプだ。


 「じゃあ1年。殴られて財布出すのと、脅されて財布出すのどっちがいい?」そんなのどっちも嫌だわ。なんでこの選択肢しかないんだよ。


 「なんで出さなきゃいけないんですか」質問を質問で返すと真ん中の顔の濃い刈り上げパンチパーマがいきなり顔を殴りかかってきた! 右ストレートが鼻辺りに直撃しそのままバランスを崩し地面に倒れこんだ。


 「質問を質問で返してんじゃねぇ、そしてイエスかノーで答えろヤァ!」


 「そうだそうだ!」


 「俺らより偏差値低いからカモ高にしか入れなかったんだろうがァ!」


 俺が倒れると横にいた下っ端みたいな奴に腹と背中を集中的に蹴られる。


 「へへ、コイツ兄貴のパンチ食らって鼻血たらしてやがるぜェ!」


 「いいからさっさと財布探せやァ。ポッケとかに入ってんだろ」


 「ありました、アニキ!」財布が取り上げられると、2人は蹴るのをやめてリーダーの元に戻った。


 「なんだしけてんな、ツー野口2千円しかねぇのかよ」


 マジで......怖すぎるし痛すぎるし、まともに声がでない。鼻血は止まる気配がない、まじなんでこんな目に会わなきゃいけないんだ......


 「うわ!」急に下っ端に両脇掴まれて立たされる。


 「これからな、が見えたら、ダッシュで財布の中身献上すんだぞ。ダチと喋ってる時でも、学校で授業受けてる時でもすぐに金持ってこい。いいなァ?」おでこをくっつけられて低い声で静かに脅すその顔は、ドラマで見るヤクザそのものだった。正直泣いていいなら今すぐにでも泣きたいぐらいだ。


 「アニキそれじゃ足りないっすよ、ヤキ入れましょヤキ」この後ろの奴は何を言ってるんだ、ヤキ?


 「それもそうだな。ヤキやっとくかァ」だから何ヤキって! 一生消えない傷でも入れるのか? それだけはマジでやめて......


 「よっしゃー行くぞ......」リーダーの肩握られ、右手で握り拳を作って俺のお腹の位置にその手を当てる。


 「はぁ~ア!」右手を目一杯引き力を貯めている。


 (!闘魂技発動! !)


 「オラァア!」


 引き切った拳が勢いよくお腹に当たった、いや殴られたのか。物凄い衝撃と痛みがお腹から全身に響き渡り、力が抜けたようにまたその場に倒れた。


 「ヤッパ兄貴のハラパンはいつ見ても凄いっすね!」


 胃の中の物が全部口から流れ出そうになるほどの吐き気。


 「だろ~ もうこいつは俺達には逆らえねぇ、この金で駅前のメックスに行くぞ」


 呼吸も荒くなってきた......肺が口から飛び出しそう。


 「賛成っす、兄貴~!」3人組は俺を置いてスタスタと歩き去ってった。


 今日......俺は初めて不良に殴られた。殴られたから体中が痛い......痛すぎて何もできない。体を起こすのも、顔を上げることもできない。


 ついでに......メチャ怖い顔で脅された。どんな時でも制服が見えたらお金渡さないといけない。なんでそんな恐ろしいことをスラスラと口から出るんだよ。


 怖いよ......


 痛いよ......


 でも......


 でも............


 でも..................


 スゲェーぶち殺してやりてェ! あのゴミカス3人をォ!!!


 なんで俺だけがァ! こんな目に会わなきゃいけねぇんだァ! ボコボコにしてェ! 泣きじゃくってェ! ションベン垂らしながら命乞いするザマを! 


 「味あわせてやるよ、クソったれどもが」 

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