第4章第17節「縺れ合う絆を解いて」
裏世界から戻ったクリストフ・ラベルツキンは、テレポートによってステルス機『スキャフォールド』に搭乗していた。
彼は月城財閥を解体させることを目的に裏世界へ赴いたが、棺は先客の手によって開けられた。財閥の御曹司である時成がそこで時矢を葬れなければ、ラストリゾートは亡者によって侵略される。もし時成が葬ることができたとしても、財閥が抱える秘密は狙い通りに消えることとなる。結果がどうであろうと、クリストフの目的は既に達成されているのだ。
しかし、クリストフの部下であるポーラ・ケルベロスは違った。
彼女はクリストフを裏切り、獄楽都市クレイドルを滅ぼそうとした。そのために彼女は従うふりをして、博物館から流出した魔具を利用して魔人としての力を得ようとしている。だが彼はそんなことを知らずに、約束通り彼女を迎えに行こうとしていた。
ステルス機にはポータルが設置され、対応した魔具を使えば瞬間移動ができる。とはいえ有効な範囲が定められているため、現地に迎えに行く必要があったのだ。
クリストフが乗るステルス機はN5セクターの港町『いかだ町』の上空を飛ぶ。ラストリゾートを統治する楽園政府ネクサスの目も、外周に位置するここには多く及ばない。その隙を縫って港湾倉庫に回収した魔具を保管していた。
ポーラにはそれらの魔具を守るように伝えている。万が一、アジトの場所がネクサスやDSRに知られたら防衛する必要があるからだ。が、彼女はその目的を達成できなかったようだ。
港湾倉庫は激しい戦闘によって荒れ果ててしまい、『魔胞侵食』によって生まれた草原も焼け焦げている。そんな中に、魔具を任せたポーラは倒れている。ここからでは息があるかどうかも分からない。彼女の周囲には二人の女性と、配送センターでも見たDSRのエージェント浅垣晴人の姿があった。
それをモニター越しに見たクリストフは、険しい顔のまま指令を出す。
「離脱しろ」
彼の一声で、ステルス機はラストリゾートの上空からジャンプして消える。その痕跡は、誰にも掴むことはできなかった。
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