第012話「一生ついていくのじゃ」
万策尽きた……。
オレは無力感に苛まれた。
願い事を言えばなんだかんだとはぐらかされ、肝心な時には役に立たない。
「それなら、オレを不老不死にするとかは?」
シェンがふっと顔を上げた。
「おお、そんなので良いのか?」
「えっ、できるの?」
おいおいおいおい。人類の長年の夢がこうもあっさりと叶うのか?
「仙境に住んでおった頃、庭先に仙桃の木が生えておったのじゃ」
自生しているのか不老不死の妙薬。
仙境凄ぇ!
「これでお主様は永遠の命を手に入れ、我様は永遠に恩返しができるのじゃな」
えっ、これが永遠に続くの。
無限地獄――空恐ろしい。
「やっぱり、永遠の命ってのはなしで!」
そう言うとシェンは「そうか」とちょっとだけ残念そうな顔をした。
「そうか、まあ、永遠の命なんぞ得たところでロクなことがないからのう」
そうなのか。オレにはよく分からない。
「安心せい。我様はお主様に一生ついていくと心に決めておるのじゃ」
一生憑いていくの間違いじゃないのか?
「しかし、まあ永遠の命も考えようによってはただの苦行じゃがな」
「そうなのか?」
オレの言葉にシェンはうんと頷いた。
「永遠に死なぬということは……終わりがないということじゃ。仕舞いがあるから今がある。今世をいかに生きるかが大切なのじゃよ」
なんか急にもっともらしいことを言いやがった。シェンのくせに。
「まあよい。お主様の願い事が尽きるまで我様はここにおるでな」
「そうか……って、なんだって?」
「だから、お主様の命尽きるまで共におると言っておるのじゃ」
いやいや、ちょっと待て。
なんてこと言っているんだ。この神狐は?
願いが尽きるか命が尽きるか……って究極じゃねえか。
しかも、大抵の願い事なんて叶いそうにないし。
――いや待てよ。
オレの脳裏にある考えが浮かんだ。
「あのなぁ、じゃあ逆に聞くけどどんな願い事だったら叶えられるんだ?」
「そうじゃな」
シェンは少しだけ考え込んだ。
「我様ができることは【奇跡】を起こすことじゃ」
「………………はい?」
神狐様は何やらとんでもないことをおっしゃいました。
□■□■□■□■用語解説□■□■□■□■
【仙境】
仙人が住むという所。また、俗界を離れた静かで清浄な土地。仙界。シェンが一〇〇〇年仙境で修業したと言っているが信ぴょう性は皆無。未だ修行のせいかとやらを見たことがない。ペーパードライバーならぬペーパーゴット?
【仙桃】
仙境にあるとされる不老不死をもたらすとされる桃。西王母が管理する桃園に実るとされているが、ここでは仙境のあちらこちらで見られるらしい。有名な日本の伽話「桃太郎」にも桃が出てくるが実は桃の中から生まれたのではなく、桃を食べ若返ったおじいさんとおばあさんがハッスルしちゃった結果生まれたのが桃太郎となったとか……
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