かつての僕自身の姿も

だから僕は兄から、憂さ晴らしの道具として使われてた。殴られて蹴られて突き飛ばされて、それで泣いたらもっと殴られて蹴られて。だから僕はいつしか泣くことさえ諦めてたような気がする。


ここでもし両親が少しでも僕に意識を向けてくれてたら助けを求めていたかもしれないけど、両親の目に僕が映っていないことは子供心にも気付いてて、助けを求めても無駄だと悟っていたんだと思う。


そうして僕は、心というものをどこかに置き忘れたような人間になっていった。


だからこそ、沙奈子さなこを見た時に、かつての僕自身の姿もそこに見てしまったのかもしれない。それもあって彼女を見捨てられなかったのかもしれないな。


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