常識に囚われてしまっていた

それは、玲那の実の母親が、老朽化した物干し場がそこから転落して亡くなったという事故がきっかけになったと思う。


両親を激しく憎んでいた彼女だったけれど、穏やかな毎日を過ごせているうちに、


『せめて葬式くらいには出た方がいいかもしれない』


と考えられるようになってしまったんだ。その時には彼女の過去を詳しく知らなかった僕は、『それくらいなら』という軽い気持ちもあって、引き止めるまではしなかった。


でも、思えばその判断が間違っていたような気もする。


『親の葬式くらいは出るのが当然』


みたいな常識に囚われてしまっていたんだろうな。


彼女の境遇が、そんな常識では全く測れないものだったことを知らなかったとはいえ……


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