第6話 師匠からの試練
「それで、話ってなんですか?」
「んー」
そう言いつつ、リークは紅茶を飲む。焦ったそうに待つカインを見て苦笑いすると、ようやくリークは話し出した。
「ただ旅に出てもらうだけじゃ面白くないかなと思って、カインには僕から『試練』を出そうかなって」
「試練ですか?」
「うん、一応ルーカにも出すつもりではあるけど。それで内容だけど…」
そういうと、リークはカインに向けて手をかざす。その瞬間、カインは強烈に後ろに引かれるような感覚を覚える。何かを力尽くで奪われるような、そんな感覚を。
「よし。今カインの魔力を制限させてもらった。君にはこの状態で旅してもらうよ」
カインはショックを受けた。
言われてみれば、今まで手にあった感覚が消えた。何をしようとしても答えてくれなさそうな感じがする。今まで使えていた魔法も使えなくなるのだろうか。
「ショックそうだね」
リークは慰めとも嘲笑とも言い難い口調で話す。カインはそれに応える気も無くなっていた。
「君は紛れもない天才だ。でも、天才だけじゃ六大魔術士は務まらない。これを機に、君に足りない物を見つけてきな」
リークはそういうと、台所へいった。カインも心ここに在らずという顔で食卓を立ち、自分の部屋へ戻った。
(あんなに魔法使えてたのに、急に使えなくなるなんて…なんかショック)
部屋に戻った後も何もする気が起きず、ベッドの上で転がっていたカイン。
(確かにこれでシオ達と同等…でも)
今まで魔法が使える事が彼の唯一の自慢だった。顔もいい訳でもなく、頭もそこまで良くはない。ただ魔法だけでここまで成り上がってきた。それを全て奪われたのだ。
(……この国を出てみようかな)
ふと、カインは思った。旅とはいえ神国にいては彼の名が知れ渡りすぎて、魔法が使えないとなればどうなってしまうか分からない。その点他国ならただの見習いだ。しかしどうやって国を出るのか。
(ダメだ、考えすぎて頭痛い…そうだ)
カインはふと立ち上がり、リークからもらった本を開いてみた。そこには『試験』と称していくつかのお題が書かれていた。
【カインへの試験】
・『祠王級』の魔物3体の討伐
(うち一体は光、または空属性の魔物にする事)
・他国に魔導機械無しで向かう
パスポート発行から到着、帰還まで全て自力で行う。行き先は不問とするが夏休み中で往復できる所。
・ルーカと協力してアイテムを収集する
カインの指定アイテム
○闇精霊の羽×10
○天龍の鱗×7
○幻獣の毛皮×1
「…普通に難易度高くない?魔力制限されてるのにこれ…?」
『祠王級』はこの世界だと中位くらいの魔物。それでも魔力のない一般人では到底太刀打ちできないとされている。そこに加えて彼の苦手な属性指定。非常に面倒臭い。他国移動は特に難しい事はないが、何よりアイテム収集が問題だった。
「今のままじゃ何も倒せないよ…魔力を増やすことってできるのかな?」
カインの今までの魔力は割と生まれつきで、魔力を増やすという事は考えても無かった。友人達も増やしてる様子はない。一体どうすればよいのだろうか?
(……わからん!とりあえず今日は寝よ…)
カインは思考を放棄し、明日の出発に向けて眠りについた。
その頃、ルーカにも試練が課されていたが、気づく事もなく。
蒼穹の魔術師 Naz_ @Naz_328
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