第3話 中期クラスの天才

魔法学の実習が終わり、カインとシオは教室へ移動していた。

「あ!カイン様だ!」「え、まじ!?」

カインは中期クラスだけでなく、下期クラスの生徒にも認知されていた。

『風の魔導師に認められた才能をもつ天才』として。

下期クラスは現実で言う小学校クラス。つまり彼らは物おじせずカインにも話しかけてくるのだ(一応敬語だが)。

「カイン様こんにちは〜!」

「こ、こんにちは…」

「ほら、ギャラリーのお出ましだぞ?」

「やめてよ…別にそんな頭いい訳じゃないのにー」

「確かに、カインって数学嫌いだよな」

「僕は魔法と地理に特化してるんですー」

「分かってるよ、だからこそ俺らもあんまり気兼ねなく話せるわけだし。ルーカ様とかマジ天の上の人って感じ〜」

「それなぁ。入学テストほぼ満点だっけ?僕確か500点満点中420点くらいだよ?」

「十分すぎるわ、俺270点だぞ!?」

「なんで入れたのw」

ルーカはシドゥア学園に今年から入ってきたが、その頭脳から専攻クラスに編入された。普通、専攻クラスに入るには3年はかかるのだが。その為、シドゥア学園一の天才として、全学生、果ては教員からも認知され、また少し恐れられてもいた。

(ルーカさんも悪い人では無いんですけど、関わりを持とうとしないしちょっと目つきが怖いんですよね…だから怖がられてるんだろな)

カインはルーカと仲良しだが、事情を知らない友達がいる学園内で声をかけるのは流石に気が引けていた。

ちなみにシドゥア学園入学に必要とされる入試の点数は300点以上と言われている。


昼休み。この学校は食堂があるが、弁当でも良いことになっている。

「カイン様だ!こんにちは!」

「あれ珍しい、食堂で食べるの?」

「うん…シオに裏切られた」「まじかw」

シドゥア学園にも部活はある。しかしカインは入っていない。そのため

『悪い、今日昼練だから先飯食ってて!』

というシオの裏切り?によって、いつもはこない食堂に来ることとなったのだ。その結果

「カイン様!お疲れ様です!」

「あ、おいずるいぞ!カイン様、今日ならこれが一番美味しいです!」

下期、中期クラスの生徒に囲まれた。

(うーん…うざい。やっぱり中庭行けばよかったかなぁ…)

カインは陽キャのようで意外と人見知りするのだ。その中、

「よ、カイン」「え?ルーカさん!?」

ルーカがいた。いつもここで昼食を食べていないのでいると知らなかったのだ。

「一人なら一緒にどうだ?」「あ…うん」

どうしようもなかったのでカインはルーカの隣に座る。当然他生徒は大騒ぎだ。

「おい、天才2人が揃ってるぞ!!」

「嘘、あのお二人仲良いんだ…」「やばい」

ルーカは気にしていなさそうだが、小心者のカインは緊張と恥ずかしさで真っ赤だ。

「…ところで、ルーカさんって何でここ入ったんですか?」

「ん?魔法の勉強」

「いやそれはそうでしょうけど、何もここじゃなくても…」

と、続きを聞こうとした時。

「ルーカ!悪いけどまたノート見してくんねぇ!?」

恐らくルーカのクラスメイトだろう、青年がルーカに焦ったように話しかけてきた。

「おう。じゃ、そう言うわけで俺行くわ。」

「え!?あ…」

ルーカは同級生とスタスタと去っていってしまった。

(…結局聴きそびれちゃった…仕方ない、帰ってから聞くか…)

カインも手早く昼食を食べると、ギャラリーから逃げるように足早に移動した。

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