第2話 王立シドゥア学園〈解説有〉
カインは学校に向かって全力ダッシュしていた。別に遅刻しそうだった訳ではなく、ただ体力が有り余っていたからだ。
「おうカイン!今日も風と競争か?」
「うん!リーク様に勝てるようにね!」
「しゃあ!俺も入れてくれ!」
何言ってんだって感じだが、それが彼らの遊びである。
そのまま全力ダッシュで校門を駆け抜ける男子2人。先生に対してもすれ違いざまの挨拶で済ませている。
「先生おはよ!」「おはよーございます!」
「シオ君、カイン君!風と競争はいいですけど、校舎内では走らないでください!」
「「はーい!!」」
返事こそしているが言動と行動は一致していない。
「やれやれ…もう中期クラスというのに、まだまだ子どものようですね…」
〈王立シドゥア学園〉
魔法学の授業に重きをおいている学校。神国アイギスの王によって作られた為王立となっている。現代で言う小学校から大学までの一貫校である。年齢に合わせて下期、中期、上期、専攻の4段階にクラスが分けられている。カインは中期の生徒(いわば中学生)。ちなみにルーカも通っているが彼女は専攻クラス。
カインとシオ(カインのクラスメイト)はそのまま教室へ走り込んだ。
「うぇーい!今日は僕の勝ちー!」
「くそぉ…これで3連敗じゃねえか!」
「まだやってるの2人w」「仲良いね」
女子たちからは笑いの的だが、そんなものは気にしない。
「はい、皆さん席について!出席をとりますよ」
教室に先生が入ってきて、彼らの一日が始まった。
カインはこんな性格だが、意外と勉強好きだ。特に魔法学と地理学が大好きで、その二教科はかなり真面目に受けている。しかし一教科だけ、やる気の出ない科目がある。
数学だ。カインは典型的な文系であり、頭を使うことはあまり好きではないのだ。おまけに担当は朝に会ったあの先生である。
「…であるから、ここが7になるのは分かりますね?カイン君?」「はい!?」
ぼーっとしていたのに突然当てられて慌てるカイン。クラス中から笑いが出る。
(別に笑ってくれる分にはいいけど、あの先生なんで毎回僕にあてるのかなぁ…)
そんなどうでもいい事を考えつつ、数学の授業をやり過ごしていた。
辛い辛い数学が終われば、次の授業は魔法学。シャツとズボンだけの制服の上から見習い魔術士を表す藍色のローブを着て、授業に臨む。担当のおじいちゃん先生は言葉が聞き取りづらいのが難点だが、魔法の技能は現役時代『六大魔術師に匹敵する男』の異名をもっていたと言われるほどだ。
「今日は前回のおさらいもかねて、自分の属性の魔法を発動してみましょう。」
魔法には属性がある。また人によって属性の相性があり、適する魔法を扱う事は魔法使いの常識だ。
「シオは氷だっけ?」
「おう!俺にぴったりだろ?」「そう?」
雑談も交えながら、生徒は自分の属性の魔法を使う。大抵は炎の球や氷の塊、微風程度のものしか出せない。まだ魔力が少ないのだ。しかしカインは違った。
「流石カイン君、風の魔導師に認められただけの事はありますのぉ。」「え、すごっ!」
カインは自分の周りに光のカーテンを作っていた。魔法使い歴半年が使える技ではない。カインは間違いなく才能の塊だった。
「ふむ、次は魔力を一箇所に固めましょう…おや、カイン君はもう完璧ですか」
「まぁ…はい」「すげぇカイン!天才!」
ここは学校。授業は弱い生徒に基準を合わせねばならない。カインが知り得ている情報も教えなければならない。それでもカインは、魔法学が大好きだった。
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