SS パパのお仕事は青い星を見届けること(五重虹 錦視点)

 わたしは転勤てんきんぞくいえ

 ママは防空ぼうくう団地だんち建設けんせつになっている防空ぼうくう建設けんせつ公社こうしゃ

 パパは日本にほん空軍くうぐん通信つうしん司令しれいはたらいている軍人ぐんじん

 半年はんとしか、一年で転勤する。

 いまみなみ硝海道しょうかいどう空域くういきをレーダーでモニタリングして、あおほしとして表示ひょうじされる跳躍者ちょうやくしゃ安全あんぜん監視かんししている。


 ママはずっと単身たんしん赴任ふにんだったけれど、仕事ワーカー中毒ホリックのパパとは結婚けっこんつづけられないって宣言せんげんして、離婚りこんした。

 ママはわたしをれてきたかったけれど、パパがわたしをはなさなかった。

「離婚するなら、にしきいてせろ」って、パパのこえわすれられない。

 でも。

 パパでかった。

 国際こくさい支援しえん政策せいさくで、ママは今南米なんべい大陸たいりくで防空団地建設のお仕事をしている。


 今のいえも、湿々じじりょうも、空軍基地きちがい

 でも、十歳ととせそのものがおおきな基地。

 どこにも、は無い。



 早速さっそく、アリスにたのまれたとおり、パパに電話でんわをかける。ない。最悪さいあく。だったら、職場しょくばに電話してやる。

「もしもし、五重虹ごじゅうにじ のむすめにしきです。

 ちち私用しようの電話番号ばんごうにかけてもつながらないので、こちらにかけました。

 いそがしくても、『アリスちゃんから伝言でんごんたのまれた』とつたえてください」

 <もしもし!>

「あのさー、パパ。自分じぶんの娘よりもアリスが心配しんぱいなの?

 まあ、いよ。

 さっき、アリスに『湿々寮のトイレして』って言われたから、貸したよ」

 <……>

 嗚呼ああ、パパ、だまっちゃった。

「伝言はね。

午後ごご一時から、『kokoniココニ』がジャミング負荷ふかこわれた。これから、飾戸かざりど帰還きかんするから、湿々の跳躍台ちょうやくだいりる』だって。

 ねえ、パパ。

 アリスが出撃しゅつげきしたってことは、わたしたち小学五年生も徴兵ちょうへい対象たいしょうになりえるってこと?

 なんで、大人おとななのに、子どもをたよるの?」

 <伝言、いたよ。

 ありがとう。

 それじゃあ>

 はぁ?

 パパって、本当ほんとうに、仕事しか出来できない。可愛かわいい娘が電話してあげてるのに、すぐ電話をろうとする。




「わたし、一年半まえみたいに、パパたちのせいで、またイジメられるの?」




 <……>

「アリスが極秘ごくひ作戦さくせん参加さんかしていた少年兵しょうねんへいだって、子どもでもってるよ」


 おや軍人ぐんじんか、軍人では無いか。

 ものも。

 学校がっこう先生せんせい態度たいども。

 クラスメイトからの無視むしいやがらせ、イタズラも。

 全部ぜんぶ左右さゆうされちゃう。

「わたし、パパたちがきたえたアリスみたいにつよくないから」

 <……>

「パパは良いよね。暖房だんぼうがきいてる部屋へやみんなの通信に応答おうとうすれば良いだけだもん。

 北部ほくぶ方面部ほうめんぶにはアリスがいるもん。

 わたし、アリスに頼まれなかったら、パパに電話なんてしてないから」

 プツッ。

 わたしは一方的いっぽうてき通話つうわ終了しゅうりょうした。

 パパからの着信ちゃくしんは入らない。

 まだ、仕事中しごとちゅう

 ずっと、仕事中。

一条いちじょう 白黒ものくろ有栖ありすからの伝言」は聞くがあるのに。


 きっとじゃない。

 絶対ぜったい

 パパはわたしがんでも、通信司令部の仕事を続ける。

 つづける青い星を見届みとどけるのがお仕事。



 もう、おこってたら、ますますおなかがすいちゃった。

 はやゆうはん、食べよう。

 冬休ふゆやすみのあいだ自炊じすいしなくて良いかららくだなー。

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