第4章 積乱雲
第一話
オセアニアやニチリンの人々はレボルシオに対し、敵意を露わにする。
「レジスタンスの連中か……」
ザンコック中佐が攻撃部隊に命じた。
「……奴らを石器時代に戻してやれ!!」
レボルシオの艦隊が前へと向かう。
「なんとしてでも目標を取り戻すのだ、アレさえ手に入ればドゥームズデイ様が全てを導いてくれるぞ!」
アルベルトが周囲の兵士を鼓舞し、ドゥームズデイが静かに開戦を告げた。
「……全砲門開け。砲雷撃戦、用意!」
砲撃が飛び交う中を縫うように、サンナの護送機が飛んでいく。
「……人間というのはいつの時代も変わらぬのじゃ……」
後ろでマカツはそう言った。
サンナは震える手で操縦桿を握っている。
それでも彼女は折れない。アリスを救うため、この悲劇を止めるために前へと進んだ。
「……ニチリン船団に着艦する」
ニチリン船団に強行着陸したサンナたち。その目の前で、ジョンや海賊達がニチリンの人々にリンチされていた。
「そんな……」
サンナはニチリンの青年を掴んで、投げ飛ばした。
「なにっ!?」
そして彼の頭にライフルを突きつけた。
ニチリンの兵士たちは彼女に銃を向ける。
サンナは言った。
「待って、本当に撃つよ……?」
兵士の一人がサンナを見て言った。
「サンナ姫か……やはり報告通り生きていたんだな……」
「お前は人を撃てまい。そして、こっちには人質がいるんだよ」
そういって、兵士はジョンに銃剣を向ける。
サンナは彼を睨んで言った。
「本当に撃つ!」
「撃ってみろってんだ!!」
兵士は銃剣でジョンを突き刺そうとした。
それを見たサンナは飛び出して、ジョンと兵士の間に割って入り……。
銃剣はサンナの右腕に突き刺さった。
「っ……」
「バカなっ」
兵士は目を見開き、後ずさった。
「きっと、怖かったんだね……大丈夫」
サンナはその銃剣を抜き、溢れる血を抑えながら兵士へと近づいた。
兵士たちは震えている。
自らの武器がサンナを突いた事。流れる血。そして、そのサンナが慈愛の表情で近づいてくることに。
そうして、兵士たちは武器は武器を取り落とし、その場に崩れ落ちた。
サンナはそんな彼らを撫でて、労った。
「姫様、止血を!」
マカツが包帯を持って来て、サンナの治療を始める。
「聞いて……オセアニアは、アリスという女の子を利用して世界をメチャクチャにしようとしてるの……」
「この船をおかしくしたように、彼らは強い兵器を求めてる……でも、そんなものを作ったら、世界はまた滅びちゃう……だから……止めて……」
サンナの落ち着いた、しかし力強い言葉に、集まってきたニチリンの人々は耳を傾けた。
再び、強い叫びのような感応波が辺りを覆った。
「アリス!?」
サンナは痛む右腕を抑えながら立ち上がり、ふらふらと歩きながら格納庫へと向かった。
「止めさせないと……止めさせないと……」
包帯が巻かれた腕は赤く染まっていく。
「姫様!」
「私を止めないで!」
マカツは飛行帽とフライトジャケットを手渡した。
「姫様、その格好のままじゃ示しもつかないでしょう」
サンナは涙を流しながら感謝する。
「行ってくる……」
迎撃戦闘機ゲイザーイーグル。
無尾翼で比較的平面な形状の小型の機体。
ステルス性が重視されており、推力偏向ノズルを搭載され、目視内での近接格闘戦も得意だ。
ニチリンがオセアニアの傘下に入ったことで、防衛用に数機配備されていた。
全身に包帯を巻きながらジョンも立ち上がる。
「俺も行く……サンナ、お前一人じゃ心配でな……」
「無茶だ!」
その痛ましい姿に海賊の部下たちが心配する。
「無茶だからこそ、おもしれえ……そういうもんだろ、お前ら」
サンナは彼を見て頷く。
「……ありがとう」
ニチリンから2つの機影が飛び出した。
オセアニアの目付役たちは通信で彼らがオセアニアを裏切ったと報告をする。
「ふん、やはり所詮は野蛮人共か……よろしい、ならばレジスタンス共々潰してやろう」
ザンコック中佐が
レボルシオの兵士たちは早足で司令室を去るドゥームズデイとアルベルトを追いかける。
「司令、どこへ!」
彼女らは兵士たちに制止のハンドシグナルを出した。
「いよいよ本格的なドンパチが始まる。貴様らが指揮を取れ、我々は奴らを根絶やしにしてくるさ」
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