第216話・大体決まった
「あれだけの広さだと掃除も大変そうだな」
「西の人たちが毎日磨き上げるよ」
「と言うか、町がこの先どれだけ広がってもあれ以上広げる必要ないな」
はい。謎の小部屋や不必要な廊下とかいっぱいだし。
「で、成人式に話を戻すわけだが」
サージュが反れた話題を戻した。
「会場に町とのつながりがなければ、何処の町からもどれだけでも入れられるし、探られても痛くない」
立派過ぎる神殿をどうやって作ったかは気にされるだろうけど、半隔離された空間だから、町の重要ポイントは見られない。
「だから、少しばかり豪華にした方がいいのではないかと思う」
「予算、ある?」
「今まで貯まるばかりで使うことはあまりなかったから」
「そうなの?」
「だって、今までもらうばかりで、他の町に金を払ったことがあるか?」
えーと、お金が入って来たのはスピティで家具を売った時と陶器を即売展示会した時……。使ったのはスピティから食料を買う時……それも人が増えたら畑も家畜も増えたから自給自足できるようになったし……。ああ、エキャルや宣伝鳥を買った時も払ったか。でも……日常的に払うことはないなあ。町の中でお金を使うこともないし。
「でも、後からいるんじゃない?」
「お前、まさか今余っている予算全部突っ込む気でいるのか?」
え?
サージュの謎の問い。
「妹だけじゃなくてお前の金銭価値もどうかしてるのか?」
「え? ぼく、何かどうかしてる?」
「……ああ、悪かった」
気付いたようにアパルが言った。
「
「あ、そう言えば」
サージュが手をぽん、と叩く。
「今まであまりにもうまく町長業を務めていたので忘れていた」
「うん。財政はこっちで見てたから」
「何々? どゆこと?」
「うちは結構稼いでるって意味だよ」
どこで? いつの間に?
「陶器通りで毎日窯が稼働してるのは何故かって思ったことはないか?」
そう言えば、陶器通りの方からは毎日煙が上がっている。それは陶器を焼いているということで……でも何で?
「展示即売会終わってから、町の方から飾り皿や来客用の豪華な食器なんかの依頼が結構来ているんだよ。空飛ぶ町の最高級陶器って」
「最高級?」
「完璧な陶土に完璧な職人。陶器の町ファヤンスからグレードアップした新・陶器の町。金なんかバンバン入ってくるぞ」
「それでも
「……知らなかった」
「報告してなかったからな」
「そう言うのって町長に報告するもんじゃ……」
「倒れました。フォーゲルに人助けに行きました。西に民を助けに行きました」
サージュが指折り数える。
「いつ言えた?」
「ごめんなさい」
「町長として無駄な仕事は何一つしていないが、報告する時間も作って欲しかった」
そうだよね。うん、ぼくが悪い……。
「エアヴァクセンくらいの成人式なら開けるぞ?」
「主役四人でも?」
「十分」
気付かないうちにぼくはどえらい金持ちの町の町長になっていたようだ。
「ちなみに今、町のランクは幾つ?」
「知りたいかい?」
アパルがにっこり笑って聞いてくる。
「成人式でスピティの鑑定士に頼んで全町民の前で鑑定してもらおうと思っている」
「あ、それいい」
「いいだろ」
「Cランクを下回ることだけはないだろうからね」
「ヴァローレじゃなくてスピティの町鑑定士に見てもらうことで、自称Cランクと呼ばれることもなくなる」
じゃあ、どうしようかと言う話になって。
成人式はエアヴァクセンだけじゃなく全町で、大体流れは決まっている。まずは町長の開会宣言。新成人の紹介。そして鑑定式。その後大人になった記念の宴会。
大体そんな感じ。
……ぼくは宴会とは無縁だったけどね。宴会に出られるのは成人以上で、成人になったら鑑定式の途中で追い出されたからね!
「でも宴会ってクイネ一人じゃ厳しくない?」
「西から来たのに何人か料理スキルを持っているのがいて、あと元からの町民の中にいる料理スキル持ちが手伝いに立候補してくれた。畑も総出で収穫を早めて、家畜系が野豚や野鶏、水牛なんかを集めまくってる。足りなければ買う」
「町長の開会宣言っている?」
「いるに決まってるだろう」
「新成人、鑑定士、町長がいなければ成人式にならないんだ」
面倒~。
ミアストみたいに出たがり出しゃばりじゃないのがつらい、とこの時初めて思った。
それ以外にも色々話し合い。この時点で成人式を行う月は半月後に迫っている。
成人式は
スピティにお願いして、ぼくがスピティの成人式に出席するのと引き換えに一日・二日・三日の間グランディールを近くに停泊させてもらうことにした。
よし、何とか回りそうだぞ、と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます