第150話・意趣返し
「いやー楽しかったな」
「俺らの陶器、結構売れたな!」
「僕らが作った茶碗、ちゃんと使ってくれるかな」
ポトリーたち即売会組は売れた自分たちの茶碗を思い出して夢心地。
「では、報告書は明日までに」
「ああ。よろしく頼む」
アイゲンたち展示会組は来訪者と、接客によって知った好みや考え方やなんかの情報を把握している。
そしてぼくたちは。
「……ふはあ」
アパルとサージュと三人そろって、その場に座り込んだ。
「町長?!」
「あ悪い気にしなくていい」
駆け寄ってきたポトリーに、ぼくは手をひらひらさせる。実を言うとこのひらひらもきついのだ。
頭を使い、考えに考え、心底休まる暇もなかった三日間。
ぼくが町長の仮面を外せたのは寝る時くらい。
……うん、よく頑張ったと思うよぼくたち。
「
ヴァダーが近くにしゃがみこんで聞いてくる。
「生きてる~でも死にそ~」
「ミアストの嫌がらせだろ」
「そ~」
ヴァダーが肩をポンポンと叩いてくれる。
「生きてる? あなた」
サージュの奥さん、ファーレがトレイにハーブ茶を乗せてやってきた。
「ほら、落ち着くお茶よ。飲みなさいな」
「おー……」
「すいませんファーレさん……」
「ありがとファーレ……」
三人そろって力なく声を出し、カップを受け取る。
独特の、だけどいい香りのするお茶を一口すすると、心臓のドキドキが落ち着いてきた。
「しっかし驚いたぞ。グランディールがスピティに向かって動き出した時は」
しゃがんで視線を合わせたまま、呆れたようなヴァダーの声。
「サージュがソルダートとキーパにだけこっそり頼んでおいた仕込みで助かった。でないと町民が何人かエアヴァクセンにひっさらわれていた」
はあ、と息を吐くと。
「お兄ちゃんー!」
耳をつんざく高い声。
どどどどどと足音を立てて……たったったじゃない、どどどどだ……アナイナが駆け寄ってきた。
「お帰りお兄ちゃん! 疲れてるね! アナイナの元気で元気になろっ!」
「ごめん、今元気をお前に吸われてる……」
「アナイナ?」
ファーレがアナイナを呼ぶ声には、少し強い響きがあった。
そこでぴたりとアナイナの動きが止まる。ファーレ、シートス、フレディの三人は、甘やかされて育ったアナイナや、自分が一番、
だけどすぐに気を取り直すのがアナイナのいい所でもあり悪いところ。
「空飛んでるのはもう少し秘密じゃなかったっけ?」
すぐに自分を取り戻して聞いてきた。
「空飛んで帰らないと、ミアストが何処まででもくっついてきそうだったからなあ……。やむを得ずの方針変更」
「今は追ってこないの?」
「追ってこれる人もスピティには居ただろうけど、意表を突いたからね。グランディールを追わなくちゃと気を取り直す前には見えなくなったと思うよ」
やっと町長の仮面を外せた気楽さもあって、ぼくは手をひらひらさせた。
「それより、町の中を整えないと」
「整えるって?」
「空飛ぶ町を脅威に思われないように、展示会で会った人は基本的にグランディールに招待することにしたんだ。もうちょっと町らしくしないと」
「なんで呼ぶの?」
アナイナのきょとん顔。
「空飛ぶ町を招待して好意を持ってもらおうというのもあるけど、もう一つ」
「何?」
「ミアストへの嫌がらせ」
「ぶっ」
真顔でそう返すとヴァダーが噴き出した。
「だって、わざわざ設定した面会時間をだよ? すっぽかしてだよ? 帰る時だけ顔出してだよ? 追いかけてくる気満々で、途中まで護衛しようかとまで言われたんだよ? 意趣返しをしても問題はないだろう?」
「じゃあミアストは来る気満々だったわけだ」
「そう。ぼくが大勢の前でそれはないって言ってやったら真っ青になって真っ赤になって真っ黒になったけど」
「あー。わざわざ「ミアスト町長以外の方は、また近いうちに」ってったのは嫌がらせの一つか」
「うん。だけどミアストはスピティを無事に出られるかな」
「?」
「ミアストは詐欺をしてたんだよ、スピティだけじゃなく、たくさんの町で」
そのやり口を教えてやると、元エアヴァクセン組は揃って嫌な顔をした。
「スピティにもやって、それでしれっと町の中に入って来てたの?」
頷くと、アナイナは聞こえない小声で多分ミアストへの文句を言っている。
「だから、グランディールには入れないよと念を押したのか。他はいいけど、お前はダメって。そりゃああの男怒り狂っただろ」
「いやー、その後スピティの人間に袋叩きにされてないかと心配で心配で」
「心配? 何でお兄ちゃんがミアストの心配するの?」
「いやー、ぼくがボコる前にスピティの人たちがとどめ刺しちゃわないかと心配で心配で」
「ああ、そっちの心配」
「確かにそれは心配しないといけないな」
アナイナもヴァダーも納得。
「ミアストを相手にするには尻尾のない
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