……千夏と対決?

「……千夏。好きだ」


「!」

 思ったより、千夏の表情にあまり変化はなかった。


「……それでは参ります。準備はよろしいでしょうか?」

 すると、校内放送を使って、校舎文字のアナウンスが聞こえてきた。


「……」

 千夏は何も言わずに、教室の電気スイッチに近づいた。

「ライトアップまで、10、9、8……」


 本当はこんなものどうでもいい。早く返事を聞きたかったが、俺は我慢していた。


「3……2……1……」

 千夏が教室の電気を点けた。

 そして。


「ドッキリ大成功——!」


 そう千夏が叫んだのと、俺が千夏以外の人間を教室で把握したのは、ほぼ同時だった。


 薄暗くてわからなかったが、この教室には、あと二人いたのだ。

「よっ、つーくん! 彼女想い!」

「つーくん偉いよ!」

 当たり前に聞き覚えのある声。


 ……真野! 小春!


「いやー、やっぱり専用のビデオカメラ、きんつばに返さなきゃよかったな。そしたらもっとしっかり撮影できたのに」


 ん???????


 千夏は俺を見て、元気よく言った。


「タイトルは『ツンツン彼氏に、好きって言わせてみた』!」


 ……。

 ……。

 はあ⁉︎


「つーくんが全然好きって言ってくれないから、カップルチャンネルを解散させるってを嘘ついて、ようやく本音を引き出すことができました」

「ま……まさか」

「つーくんの背中を押してくれた皆さんには、本当に感謝です」


 え……ひょっとして姉貴のアレも? 講堂の小春のアレも?

 じゃあ、冬川は?

 というか、俺の今の告白は? 全部ドッキリの術中だったってこと?


「ち……千夏? じゃなくて、ちーちゃんか? ちょ、ちょっと、いろいろ聞きたいことがあるんだが」


「よし! とりあえず翼のリアクション撮れたし、エンディングは別のところで撮るってことにしよっか」

「僕たちは?」

「ありがとう、真野くんと小春。二人とも協力してくれて」


 そう言って千夏は、俺に顔を見せないまま、ぐいぐい腕を引っ張っていく。


「ちょ、ちょ、ちょ!」

 真野と小春を見るが、二人はニヤニヤしているだけ。

 俺はなすすべなく、千夏に引っ張られていった。

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