作戦を立てよう

「もっと本格的に企画をやる必要がある!」


 今までの動画では、俺たちは自己紹介すらしていない。本当に、ただ高校生のイチャイチャを垂れ流しただけだ。


 だがこれ以上興味を持ってもらうためには、もっと俺たちの人格を知ってもらうのが一番の近道だと思っている。


「本格的な企画って?」

「はい!」

 小春が手を挙げた。


「料理や話をする『日常系』、イチャイチャする『ラブラブ系』、ドッキリやプレゼント交換の『企画系』、旅行やデートを撮影する『記録系』、あとは『暴露系』……こんなところかな?」

「詳しいな、小春」

「えへへ、私カップルチャンネル好きだからね!」

 なんと。小春はほっこりする動物園の動画でも見てそうと勝手に想像していたが、カップルチャンネルも見るのか。


「暴露系ってなに?」

 千夏の疑問にも小春は平然と答えた。

「普段えっちをどれくらいしてるかとかを話すの!」


「……ふぅん」

 小春、強いな……。

 千夏も平静を装っていたが、一度だけ唇に触れたのを俺は見逃さなかったぞ。


「翼くんは何するか決めてるの?」

「あ、あぁ……プレゼント交換、質問コーナー、ドッキリ、そんなところか」

「ドッキリは私もよく見るかも」


「でも好感度は下げないようにしないとね! 過激なドッキリは引いちゃうし。やっぱり仲のいいカップルが見たいから!」

 小春の言う通りだ。


「もっとカップルっぽいことは? デート撮影とか、寝ている彼女にイタズラとかしないの?」

 そしてズバズバ指摘してくる。他人に自分たちのチャンネルについて言われると、なんか恥ずかしい。

 それは千夏も同じらしかった。さっきからしきりに唇を触っている。


「こ、小春は、私がもっと翼とベタベタしちゃってもいいの?」

「うん! 私はちーちゃんのデレデレした顔が見たいのだ」

「そんな顔してないし」

 キシシと小春はまたいたずらっぽい笑みを浮かべた。


「結局みんな、翼くんとちーちゃんがどんな人なのか気になってるから。いかに面白く、お互いを大切にしているか、動画から感じさせるかがポイントだね」


「小春、お前カップルチャンネル大好きだな?」

「ふっふっふ、カップルチャンネルマスターと呼びたまえ」

 小春はメロンソーダを空にして立ち上がると、俺の肩をぽんと叩いた。


「これからも、ちーちゃんのいろんな表情を引き出してね」

 そして席を立って、ドリンクバーへ走っていった。


 残された俺と千夏。

「……とりあえず、帰ったら試しに撮影するか」


 千夏は唇を触りながら、こくんと頷いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る