身バレ②

「ビジネスカップル⁉︎」


 俺は冬川のアドバイスに従い、真野と小春には正直に打ち明けることにした。

 それにこの二人は何かと騒ぎ立てる主犯格であり、こいつらが勘違いしたまま暴走するのはやはり避けたいのだ。


 放課後。ファミレスにて、俺は千夏、小春、真野とともに四人でボックス席に座っていた。


「はわわわ……じゃあ、あのいちゃいちゃは全部演技だってこと? カメラを切ったら二人にラブはないってこと⁉︎」

 小春は向かいに座っている千夏の肩をガクガクと揺すった。

「そ、そういうことね……」

「ふーん。……ま、でもいっか。イチャイチャしてる真似だと思えばもっと面白いし」

「こーはーるー?」


 千夏が立ち上がって拳を握り、ウヒャヒャと小春は笑って手で頭を覆った。

 小春は千夏をいじることも含めて、千夏大好き人間なのである。


 一方の真野はというと。

「……ま、ぼくはもちろん最初から気づいてたけどね!」

「嘘つけ!」


 あれだけ騒ぎやがって。

「やっぱり、千夏ちゃんが彼氏とカップルチャンネル始めるとは思えなかったし」

「私?」


「カップルチャンネルは千夏ちゃんの提案だって、きんつばが言ってたから」

「ふーん……?」

 千夏が机の下で、俺の左足を踏みつけてきた。


「お、俺が始めたって言うよりは、ちょっとは本当っぽいかと思ってな……」

「私を言い訳に使ったんだね」

「お互い様だろ」

「ちーちゃんは、翼くんがしつこいからしょうがなく始めたって言ってたよ」

「こ、小春!」

 小春がニコニコとたれ込みしてくれた。やっぱりお互い様じゃねえか。


「しかしお金のためにビジネスカップルなんて、君たちだいぶこじらせてるね」

「だいぶ、何て?」

「いーや、なんでもない」

 真野はニヤニヤ笑いながら立ち上がった。


「でも事情はわかった。さすがにこのことは黙っておいてあげるよ」

「……そもそも、お前がチャンネルを広めやがったんだからな」

「だってザッピングに投稿するってことは、みんなに見てほしいってことでしょ。広めてあげないのはむしろ失礼だよね」


 そう言われると何も言えないのだが。


「これからも動画楽しみにしてるよ」

 真野は朗らかに言って、ファミレスの厨房に入っていった。


「あれ? 真野くんって……」

「ここでバイトしてるんだよ」

 小春がメロンソーダをずぶずぶ飲みながら言った。


「……うちってバイト禁止じゃなかったっけ」

「開けたらダメって扉があったら開けるでしょ、だって」

 いかにも軽薄な真野らしかった。


 だがそれでバレてないなら、千夏もここでバイトすればいいのでは……。


「ところで、今はいくら貯まってるの?」

 小春が聞いてきたので、俺は今広告申請中だと説明した。


「ふーん、ザッパーもいろいろ大変なんだね」

「それに、これからは広告をつけたら再生回数が落ちると予想してる」


 今までは、数十秒の動画が広告なしで見られる、その手軽さが気に入られたのだと思う。だが今後数十秒の広告がつけば、俺たちの動画の長所はなくなってしまう。


「大丈夫じゃない?」

 千夏は呑気にフライドポテトをかじっているが、これは今後にも関わる重要な問題である。


「千夏はテキトーすぎる」

 むっ、と千夏は小さく頬を膨らませた。


「じゃあどうするの」

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