第2話 怪盗と名探偵の日常その2
その時、ガイストの足元に銃弾が跳ねた。
「うっ!」
思わず飛び上がってガイストが飛び退く。
「先生! 大丈夫ですか!」
「コバヤシ君」
駆けつけたのは美月ロアの頼れる助手であるコバヤシ少年だ。見た目は小学生だが頭脳は大人。実年齢も小学生。
オートマチック拳銃の銃口をガイストに向けている。
「ガイスト! ロア先生は、超射撃下手だけど、僕は違うぞ。ちゃんと当てるぞ」
「おいっ! コバヤシ!」
ロアがとんでもない形相になっている。
次の銃声でガイストのマントに穴が開いた。
「おいおい、小学生が拳銃持っていいのかい?」
「大丈夫です。これは麻酔弾ですから」
「いや……そういう問題ではないのだが」
「とにかく神妙にお縄につきなさい!」
若干戸惑っているガイストにロアがビシッと指さした。
ガイストは、待ってましたとばかりに柵の上に軽々と飛び乗ると高笑いをしてみせた。
「わはははは、君たちの相手は本当に楽しいよ。だがこれまでだ。私はそろそろ失礼させてもらう」
そう言ってガイストは身を翻すとビルから飛び降りてしまう。
「あっ! よせ!」
ガイストの無謀な行動にロアとコバヤシ少年は、慌てて駆け寄った。
だがしかし、ガイストは飛び降りたのではなく、小型のハングライダーらしきものを使って飛び去っていく。
「あいつ、まだあんな仕掛けを!」
ロアは悔しげに飛び去るガイストを睨みつける。
「追いますか? 先生」
「もちろん! でもまず警部に連絡よ! 警察のヘリに追跡してもらい……ん?」
「先生、どうしました?」
ロアは、足元に転がっているダイヤモンドを拾い上げた
「あっ! それは、もしかしたら盗まれたダイヤモンド【アフリカの星】ではないでしょうか?」
手渡されたダイヤモンドをじっくり調べるロア
「どうやら、そのようね」
「あいつ逃げるのに慌ていて落としたんでしょう。ざまあみろだ!」
「でも……」
ロアは、何か気になったのか宝石をじっと見つめている。
「先生?」
「え? ああ、そうね。そうかも。さあ、警部たちのところに持っていきましょう。きっと喜ぶわ」
「そうですね」
「先に追跡の連絡も忘れないでね」
「もちろんです」
非常口に向かう二人。
二人が去った後、屋上は風の音としか聞こえない。
だが、しばらくすると柵を誰かがよじ登ってきた
それはハングライダーで飛び去ったはずのガイストだった。何とか柵を乗り越えるとそのままへたり込む。
「ふう……やっと行ってくれたか」
『タケル様、ご無事ですか?』イヤホンマイクから通信が入る。
「ああ、カトー。なんとか逃げ果せたよ。ロアのヤツ、しつこさがましてきている。だんだん美月警部に似てきた」
『それは結構』
「簡単に言うな。これでもロアの追跡をかわすのが大変になってきてるんだぞ」
『そのロア様はどうしてらっしゃいますか?』
「それなら僕の姿を模したバルーンを追ってる。”アフリカの星”も無事にロアの手に渡った」
『それは上々ですな。では、もうタケル様を回収いたしますがよろしいですか?』
「ああ、もう疲れた。欲しいものは手に入れたしね。もう夕飯にしたい。」
ガイストは、そう言ってUSBをぽーんと手の上で放り上げた。
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