第2話おかしな1日

~前回のあらすじ~

ユウタとヒナは新たに追加された星4クエストを攻略することにした。

ボスの部屋まで苦戦しつつも何とか到達することができ、いざ扉を開けると…

---------------------------------------------------------------

「…」


「…」


俺達は完膚なきまでに固まっていた。

というかこんなことあっていいのかってレベルだ。

結論から言おう、相手はスライムだった。


「…さすがにバグだよな?」


「そうじゃなきゃおかしい…」


俺達は顔を見合わせスライムを倒そうと向き直る。

だが、そこにいたはずのスライムが消えていた。


「ユウタ、後ろ!…」


「!?」


ギリギリで攻撃を交わし、その有り得ない光景に俺は絶句してしまう。

さっきまでこの部屋には俺達とスライムが1体

いるだけだったのにそのスライムがいなくなり、代わりに巨大な『ドラゴン』がそこにいる。


「こんなドラゴンさっきまでいなかったはずだぞ!?」


「何かがおかしい…」


「グルル…グォー」


ドラゴンが上に向かって火を吹き、それはやがて隕石のように俺たちの方にめがけて落ちてくる。


「ヒナ、何とかできるか?」


「ん、任せて…」

「マジックカウンター!…」


俺とヒナに飛んできた隕石が全て跳ね返り、ドラゴンに向かっていく…がドラゴンは全ての火の玉を雄叫びで破壊した。


「く!さすがに無理か。」


「相手に攻撃を入れるのは至難の業…」


ドラゴンは続けざまに炎の玉を打ってくる。

その数なんと40以上…スペック高すぎだろ


「ユウタはなるべく多くの炎の玉を落として…」

「取りこぼしはヒナに任せて!…」


「おう、やってやらぁー!」


俺は炎に強い水魔法を詠唱する!


「Ey su ruhu, gücüm ol və düşməni məhv et!」


俺が呪文を唱えた瞬間、大きな魔法陣が現れ何発もの水流弾が炎の玉を捉える。


だがユウタはヒナより魔法を苦手とするため、全部が命中する訳ではなかった。

だがこれだけは言わせて欲しい…

ヒナの魔法が強すぎるだけなんだよ(泣)


「ヒナー!」


「ん、任せて!…」


手から水の魔法陣をだし、炎の玉を正確に狙う。


「ウォーターブレス…」


全ての炎の玉は消えドラゴンの姿を捉える!

ドラゴンはMP切れのためか少し疲れているように見える。


「チャンスだ!一気に決めるぜ!」


ユウタは目を瞑り精神を最大限までに集中させる。

そして光をまとったユウタは手に力を注ぎ込みドラゴンに突進していく。


「これで終わりだー!」

「輝きの拳、神空拳!!!」


攻撃はドラゴンに命中し、ドラゴンがよろめく。

その隙にヒナが必殺魔法で畳み掛ける。


「アイスエッジとテラサンダーを交合させた究極魔法…」

「氷雷の混沌!…」


氷雷の渦がドラゴンを襲いダメージに耐えきれずそのまま倒れた。

そしてドラゴンは光に包まれ消えてしまった。


「はぁー、はぁー、勝ったん、だよな…」


「ふぅ、ふぅ、その、はず…」


2人ともMP切れでその場に崩れ落ち、ドラゴンがいないことを確認する。


「よかった。何とかクリアできたぞ!」


「今まででいちばん苦戦した…」


「そうだ!宝箱っと、あった!」


このゲームでは持ち帰るまで宝箱を開けることが出来ない仕組みになっている。

だからこそクエストが終わるまでワクワクが止まらないのだ。


「よーし、何とか倒せたことだし一旦町に戻るか」


「賛成、宝箱楽しみ…」


俺たちは町までワープして戻った。

これで宝箱を開けてハッピー、そう思っていたが災いはもう既に始まっていたのだ。


「どういうことだ?」


「町が燃えてる!?…」


こんな事は今回が初めてだった。

いるはずのプレイヤーやNPC達がこの町から消えている。

何かがおかしい


「ハハハ、ようやくお戻りかい?」


「ったくいつまで待たせんだよダリー

なー!」


空から声が聞こえてきた。

そこにいたのは見覚えのない2人組。

1人は男性でニコニコしていて大きな白い翼が4つ生えている。

もう1人は女性で大きいツノが2つ生えており、こっちを見て睨んでいる。


「お前らは何者だ!?」


「この場所では魔法は使えないはず…」


そう、このゲームでは町でトラブルが起きないように魔法は使えなく設定されているのだ。

だが2人は飛んでこちらを見下ろしている。


「ハハハ、挨拶がまだだったね☆」

「僕は轟・天使の夜那月(よなづき)」


「アタイは轟・悪魔の紫珠那(ゆみな)」


奴らはそう名乗り、真紅の瞳で俺たちを見つめた。

いや、どちらかと言うと俺たちを見下しているようにも見えた。

どっちにしろ油断ができない奴らだ。

そもそも轟(ごう)ってなんなんだ?全く検討がつかない。


「それじゃ早速だけど僕達の世界へ来てもらうよ〜☆」



彼がそういった途端、半径5m前後の星の形をした空間が生まれ、俺とヒナは吸い込まれてしまった。


「うわぁー!」

「うわぁー!…」


「ハハハ、いい反応だねぇ☆」

「ったく面倒くさそうな奴らだったな、ダリーなー」


ここから始まってしまうのだ。

運命という名の抗えないの物語

そう、最悪の物語が…


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る