死んだらめんどくさいのでHPを底上げします

ノア

第1話 変わりない日常

~プロローグ~

「俺達はここで終わってしまうのか…」

「ここで諦めるなんてユウタらしくないよ!…」


俺達が置かれている状況はお世辞にも良いとは言えない。

2人ともHPもMPもほとんど尽きている。

魔法は打てても1回が限界だろう。


『仕方ない、これに賭けるしか方法はなさそうだな!』


火と風がその場を駆け巡るが「ヤツ」を倒すには到底及ばなかった。

そんな光景に絶望する2人だが『彼』だけは不敵に笑っていた…


第一章 「全ての始まり」

「今日はどんなクエストをやろうかな〜♪」


俺の名前は「咲芽野 悠太」高校1年生。

最近は流行りのVRMMOにハマっている!

ちなみにゲームの名前は「アドベンチャー・コア」というものだ。

なんというかVRMMOの原点という感じがして俺は気に入っている。


「悠太、前危ないよ…」

「え!?」


ゴツン。電柱に当たった頭から響く鈍い音がその場に広がる。


「痛って〜!もうちょい早く言ってくれよ!」


「前見ずに歩いてる悠太が悪い…」


こいつの名前は「涼谷 柊奈」俺の幼なじみで毎日一緒にゲームをしている。

俺が前線で戦い柊奈は後衛でサポートをして戦っているのだがこれまた柊奈のサポートが的確なのである。これまで柊奈に何回救われたことやら…


「そういえば今日アップデートで新しいミッションが追加されてるらしい…」


「え、まじで!?」


柊奈からの新しい情報に俺は興奮を隠せない。

早くプレイしたいという気持ちが溢れ出てくる。


「じゃあ帰ったら早速やるか!」


「ん、わかった…」


俺と柊奈は走って帰っていく。

だが知る由もないだろうまさかこんなことに巻き込まれるなんて…


「電源コードよし、装着よし、ゲームスタート!」


「ゲームスタート」の言葉に反応して頭に着けた機械が光り出す【システムダウンロード…成功しました。データ読み込み…成功しました。】

機械音声と共にゲームがスタートする。


~柊奈視点~

「ふぅ」


制服をたたみ、水を飲み、心を落ち着かせる。

ベットに飛び込み自分の心中に溜まった気持ちを吐き出す。


「悠太…好き」


自分で言ったセリフで頬を赤らめ、足をバタバタたさせる。

恥ずかしさをを紛らわすために機械を頭に装着する。


「ゲームスタート…」


家に帰ってもゲームの中でも悠太に会える。そんな幸せを噛み締めながらゲームの世界へ身を乗り出した。


---------------------------------------------------------------

「遅いなぁ」


悠太はいつものロビーで柊奈を待っていた。

いつもはもっと早く来るのに今日は何故か遅い。

何かあったのだろうか。

そんな心配をしているとすぐそこで光の魔法陣が現れ出した。


「ごめん…待った?…」


「いや、大丈夫だよ。それより何かあったの?」


もし柊奈に何かあったらすぐにでも駆け寄りたい。俺は昔、そう誓ったのだから。


「服着替えるのに手間取ってただけ…」

「だから何でもない…」


柊奈は少し頬を赤らめ、もじもじとしている。

ほんとに大丈夫なのだろうか?

俺は胸に残るざわめきを覚えながら俺達はロビーを出た。


「今回のクエストってどれぐらいの難易度なんだ?」


「ん、星4って書いてあった気がする…」


「星4!? 星3が最高じゃなかったのか?」


「今回から新しい難易度が追加されたとかなんとか…」


普通、クエストには難易度がそれぞれ設けられてあって星1が簡単、星2が普通、星3が難しい。となっている。

それを超える星4とは…考えるだけで恐ろしい。


「じゃあ早速行こうか!」


「うん、胸が高鳴る…」


このゲームは全部で4人の人とパーティーを組めるが、俺達は2人でパーティーを組んでいる。

べっ、別に一緒にやる人が柊奈以外いないから、というわけじゃないぞ!うん!

そんなこんなで俺達はクエストを始めた。

今回のフィールドは荒地のような場所で随分と広かった。


「さすが星4なだけあって雰囲気あるな…」


ここまで広いと探索に時間がかかりそうだ…


「前方に2匹のモンスター発見!…」


「OK!まとめて倒してやるぜ!」


相手は大きいトカゲのようなモンスターでかなり素早そうだ。

俺は両手を前に出し、魔法を唱える。


「フレアボール!」


火の玉が2体のモンスターに襲いかかる。

しかしモンスターはフレアボールを華麗に避け、猛ダッシュでこっちに向かってくる。


「ん〜ちょっとやばいカナ^^;」


「全く…ユウタは世話がやける…」


柊奈はジト目でこっちを見ながら魔法を唱えだした。


「グラビタ…」


モンスター2体の下に大きな紫の魔法陣が展開される。

するとその直後、モンスターが地面に這いつくばりだしたのだ。

ヒナが使った魔法は「グラビタ」というとても希少な魔法で、展開した魔法陣の中の重力を操れるというものだ。

相手は動けずにただただ悲鳴を上げるばかりだ。


「ありがとうヒナ!おかげで助かったぜ!」


「これぐらいどうってことない…」

「それよりも、早くトドメ…もうこれ以上は持ちそうにない…」


「おう、任せとけ!」


俺は力を片手に集中させ、空に無数の魔法陣を展開させる。

その魔法陣はモンスター2体の方を向き、強く輝く。


「トドメだ!エナジーボルト!」


無数の魔法陣からいっせいに雷の塊が放出される。

ドカン!

爆発と共にモンスターは光の粒子となって消え去った。

俺が使った魔法、エナジーボルトは本来1発打って終わりなのだが俺はこの魔法を極めたので同時に何発も打つことができる。


「ふぅ、結構苦戦したな」


「ユウタが突っ走らずに冷静になってたら対処も容易だった…」


「…」


本当にその通りである…

なんで俺はいつも相手を見つけたらすぐに攻撃してしまうのだろう。

ヒナがいなかったら終わってたな…

俺はそんなことを思いながらヒナと進んでいく。

星4ということもあって道中の敵もなかなかに強かったがなんとか乗り越えられた。

いよいよボスの部屋に到達した。

これまでのクエストとは比べ物にならないぐらい禍々しい扉だった。


「ここからは気を引き締めていこう。」


「うん…」


俺とヒナは扉を開けてその目の前の光景に圧倒された。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る