第30話 7日目の重大な問題。

アルクとチャチャはヴィアスを見送ってから、ベラとエリクのお守りをし家事を一通り終えて、ベラとエリクが寝たのを確認してから倉庫でユリティアの服を選んでいた。



「んー・・・。やっぱりあの体格だとローブだよね」



アルクはユリティアの布越しでも分かる凹凸の体型を思い出していると。

チャチャから舌で顔を叩かれ、アルクは変な事考えてないからとチャチャに必死に訴えた。

すぐに落ち着きを取り戻し、目の前に並べたゲーム内で入手したオシャレ衣装を見ていく、全部男物の衣装しかなかったが、まだローブが何着かあるのが救いだった。



「ローブ3着とポロシャツ3着に長ズボン3着くらいあれば問題ないかな?オシャレ衣装の伸縮性能もヴィアスで試したから問題ないだろうし」



そこでアルクは気づく、重大な問題に・・・



下着がないのだ・・・。



「下着がない!」



アルクの下着の所持数は2だ。

2枚しかない、今自分が履いてる物とヴィアスに一枚渡そうとしたら「おれぁ要らねよそんなもん」といい返されてしまった。


その2枚だ。


ゲームで下着なんて買うことなんてほとんどない、ゲームでも脱着可能だった。

疚しい事をするとリアル凸が来て罰金を払わされる。


自分も何故2枚かというとデフォルトでキャラが着けている茶色のステテコパンツと、春イベントで来た桜の花びらが散った柄のステテコパンツだけだ。

初めてゲーム内でパンツを買って履いてみたが、防具とかで隠れてほとんど下着なんてゲームプレイ中で見ることはなかったため、これ要る?となってそれ以降買わなかった。



異世界転移するのが分かっていれば・・・大量購入していただろう。



「上は布を巻いてもらうとして、パンツは・・・自分のと桜柄のパンツを念入りに洗って渡すしかないね。

あれ?人になったからって女性事情は来るのかな?元はヘラジカだよね、ヘラジカに月経はあるのかな?

まぁ、返されたらその時はその時だね。

ふんどしの巻き方なんて分からないから、これからノーパンだな」



アルクの言葉を聞いていたチャチャは首を傾げていた。

そんなチャチャを見てアルクは苦笑しチャチャの体を撫でていると、ある事に気が付く。



「今まで気付かなかった!チャチャはアクセサリーとか着けれるの?」



「ック?」



「ちょっと待っててね」



アルクは今更気づき慌ててマジックバッグから力の増加させる指輪を取り出した。


ゲームでは、従魔にアクセサリーや防具やおしゃれ衣装などの装備ができなかった。

装備できてしまうと職業のパワーバランスが崩壊したりサモナーの召喚モンスターにも!と苦情がくると思われ運営が実装しなかった。

ヴィアスがオシャレ衣装を着れた時に気づくべきだった、人だから何も思わず着せていた。


ゲームじゃなくなった場合どうなるのか。



「チャチャ、じっとしていて」



アルクはそう言いチャチャの指に指輪を通すと、伸縮機能は発動しなかった。



「やっぱり、だめなのか」



そう思いながらも尻尾に指輪を着けてみた。



「これなら着いてるよね、どう?チャチャ変化してる?」



「ック」



チャチャが首を横に振り、それを見たアルクはそっかーと言い残念に思う。



(でもチャチャがよければ、ここから動けるようになったら何か作って着けてあげたいな)



そんなことを考え、ベラとエリクにも試したいが、着けて外すときに変に力が入って体を傷つけてしまいそうだからやめておくことにした。


その後もチャチャにオシャレ衣装のシルクハットを被せて見せるが伸縮しなかった。



アルクは残念に思いながらユリティアの衣装を畳重ねて持ち運ぶ、ユリティアの寝ている寝室の机の上に衣類を置いて、リビングのソファーに座り一息ついた。

アルクは、膝で横になっているチャチャの体を撫でながら、呟いた。



「ここに来て一週間か、落ち着かない一週間だったねチャチャ」



「クック」



アルクは答えてくれたチャチャを微笑みかけ、窓の外を見つめた。



ここに来て一週間、この世界はまだまだ分からないことだらけだ。

ヴィアスにこの世界にドラゴンは居るのか聞いたら、何度か縄張り争いで勝利したとはいってた、ドラゴンは基本、山を縄張りとしているらしく高度が低いところには興味がないみたいだ。



自分たちのことは大体分かってきた、あとはヴィアスにマジックアイテムが着けれるか試すくらいか。



それにしてもこの家も不思議だ、あれから一週間経って分かったことは。

蛇口からでる水やコンロの火にそして灯りなどは魔素で補っているのだろうか、その考えで間違えはないと思う。

一度家に傷をいれてみると魔素が出てきて家を修復してくれた、劣化はしないが汚れが付くと自分で取らないといけない事が分かった。

家を一度に掃除するのは大変だから日を分けて掃除していこうと思ってる。


それだけじゃなく家に置かれていたもの全て劣化や消耗しない事がわかった。

石鹸を使っても泡が出て消耗しない、トイレットペーパーも何度も巻きだしても減らなかった、だけど庭から外には出せなかった。

排水溝もどうなってるのかが分からないが一週間経っても臭いが変わらなかった。

便利だからありがたいが、ヴィアスとユリティアにした従魔契約のように魔素を使いすぎると、周りの植物を枯らしてしまう可能性があるから、できるだけ節約はしていこうとは思っている。


家の日用品には問題ないのは分かったが。

マジックボックスに入ってる物は消耗や劣化してしまうために問題があった。


空腹が来ないのはみんなもかと思っていたら、チャチャやズンナマさんは腹が減るらしい、そして食う量が多い、この世界に来てからズンナマさんの餌の頻度が3日から毎日に変わって、大量に食べさせないといけない。

今は狼でなんとかなっているが、そこにヴィアスとユリティアだ。

まだまだ尽きないが、頑張ってもって4年あたりだろう、尽きないように食料を何処かで調達しないといけないな。



今後の問題は。

樹海はドリアードさん達と頑張って信頼を得るため動くとして。


食料と衣類、歯ブラシといった日用品この世界に本があるか分からないがあれば歴史や薬草や教育のための本がほしいところ。

そしてそれを買うためのお金が必要か。

ここから動けるのは見た目が人であるヴィアスとユリティアだけなので、物資調達のお願いを聞いてくれるだろうか、心配だ。



ベラとエリクの親探しもどうするか。


最初は親元に返さないといけないと思っていたが、自分の体を見てベラとエリクを無事に連れていける自信がない。


このまま自分の身を護れるくらいに成長してから、自立できるまで待った方がいいのでは?と考えが巡る。


自分はここを出られない、もし、ヴィアスとユリティアが樹海の外へ出て食料や衣類の調達をしてくれるなら情報も集めてもらおう。

読み書きは、さすがにみんなできないからその時に考えよう。



よし今後はこれで決まりか。



アルクは今後の方針を決めると立ち上がり、昼食の支度を始めた。



(ヴィアスとチャチャがよく食べるから、焼き肉だとすごい楽なんだけど、ほかの物も食べさせてあげたいしね。

ロースじゃないけど豚肉ブロックでトンカツでも作るか)



アルクはそう思いマジックバッグから小麦粉などパン粉を取り出していく。

まずは豚肉ブロックを少し厚切りに切り分け、塩コショウをまぶし放置する。

その間にフライパンにアブラナの植物油を底から2センチくらいなるように多めに入れ、温めた。

その後はキャベツを千切りにし、卵などを溶いて準備していく。



(うんあとは油が温まったらおkだね。

それにしても調味料なども節約していかないとな、この世界に日本の調味料のお酢とかみりんとか清酒とかあるんだろうか。

なくなったら塩コショウだけの料理になりそう、それだけは避けたいな)



そんな事を思ってると、玄関から風鈴の音が鳴った。



「旦那~腹減った~」



と、ヴィアスが帰ってきたようだ。



「ちょっと待ってね」



すぐにアルクはヴィアスの居る玄関に向かい。



「ヴィアスおかえり、帰ってきてもらってすぐで悪いんだけど、手を貸して」



「おう」



アルクがそういうとヴィアスが不思議そうな顔で両手を見せてきたので。

先ほどチャチャにも試した指輪をズボンのポケットから取り出し、ヴィアスの右手の人差し指に着けようとするが。



「あ、あれ?伸縮機能が発動しない、それなら、小指ならいけそうだね」



伸縮機能が発動しなくヴィアスの指には着けれなかった、ヴィアスは自分より指が太いから、小指に指輪を不自然だが着けてみた。



「どう?力が湧いてくる感じする?」



「んや?まったく感じねえな、旦那これはなんだ?」



アルクは不思議そうにしているヴィアスにマジックアイテムの説明をした。

発動しないのが意外だった、衣装はするのにマジックアイテムは発動しないのか。

やっぱ従魔にはマジックアイテムが装備できないことと何かあるのかな?

まぁ、無理なものはしょうがないと諦めることにした。



「ヴィアス手伝ってくれてありがとう、立たせたままでごめんね。

今昼食を作ってる最中だからイスに座っといて」



「いいってことよ、ああ腹減った」



アルクはそう言い台所に戻る、フライパンにひいた油の温度を測るため。

一度菜箸の先を濡らし、水気をふき取ると、そのまま菜箸を入れる。



(うん、全体からいい感じの細かい泡がでてるな。)



それを確認するとまぶした豚肉をフライパンに入れていく。

パチパチパチパチという音が家の中に響く。



「あぁいい音だね」



「ククククク」



「だ、旦那!?なんだその音!火事じゃねえのか!?」



アルクとチャチャは音を楽しんでいたが、ヴィアスは音にびっくりして立ち上がって大声を出してしまう。

そのせいでベラとエリクが泣き出してしまった。



「「オギャーーーーーーーーーー」」



(あぁ・・・)



アルクは苦笑いしながらヴィアスに火事じゃないよと説明しベラとエリクをおやしながら、トンカツを揚げて行った。

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