第24話 【東の主】
日が沈み切った樹海の中、葉擦れ音と虫の鳴き声が響き、月明りがこぼれる木々の間を、ザ、ザ、ザ、と最小限の音を立て飛ぶように駆けていく集団がいた。
木々の僅かな間の通りを過ぎ去っていく、その数は一桁、否、二桁どころではない優に三桁は居るだろう狼の群れが大移動をしていた。
先頭を走っていた一匹の大きな狼が止まると。
後ろをついて走る先頭の一匹に劣るがそれでも大きい狼たちもピタリと止まる。
先頭の一匹が鼻を鳴らし周りを見渡した。
(ここに来るまでに我の物が11、雑魚の物達相手に負傷してしまったな、まぁ者達の糧になってくれたのだ物でも光栄だろう)
そしてニタァと笑い。
『これより先は鳥の縄張りだがヤツはいない!倒されたのだろう、
そして戦っていたやつも負傷しているはずだ!今攻め込めばここは我が土地となろうぞ!』
と自分の周りの物を見る、震えている。
それを見てまた大きな狼は鼻を鳴らす。
(腑抜けどもめが)
我の能力【狂狼の遠吠え】はまだ使えない相手にバレてしまう。
バレて逃げられたくはない、強きモノを我が食えばまた強くなれる。
と進むべき方向へ、ゆっくりと歩いていく・・・。
しばらく歩くと強者を感じとり動きを止めた。
この先に居るのだろう本能が言っているが、大きい狼は戸惑う。
(これは、なんぞ?化け物・・・か?嗅いだことのない臭い、・・・何故こんなものがこの樹海におるのだ?いつ現れた?前に感じた魔力はこやつのか?)
王は、しばらくの間考える。
また、熊や鳥や鹿の前にした時のように尻尾を巻いて逃げるのか?
・・・我は認めぬ。
認めぬぞ!
あの時とは違う!
こちらには数がいる、相手の情報を掴むため、物は減ってもいい、やつは前の戦いで疲労しているはずだ。
そしてこの数が相手ださらに疲労してそこを突いてしまえばいい・・・物はまた増やせばいいのだ。
雲で月明かりが消えると同時に一息。
フンッと鼻を鳴らし物達に合図を送るが。
物達は動かない、腑抜けがと思い、隣に居た物の首を嚙み千切る。
それを見た物共が震えながら三方向に別れ動き出した。
そして大きい狼は【狂狼の遠吠え】を発動させるため、吠えた。
〖アオオオオオオオオオオオオ〖こぉおぉおおおおおおおおレエエエエエエエエエエヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''〗
何の声なのか解らない、声ではなく今まで聞いたことのない轟音が我の声を遮り、樹海に響き渡る。
耳を通り脳まで響く音を瞳を閉じて耐えていると、いつの間にか鳴り止んだのか分からないが、静まり返った森の奥から、
パキ
パキ
と音が耳鳴りと共に微かに聞こえ、なんだ?と思い思い瞼を開け、周りの状況を確認してみると、目の前の不自然な景色に頭に疑問が浮かぶ。
目の前の行動を開始した物達が止まっている、動いていないのだ。
時間が止まっているのか?否そんはずはない、だが気配を感じない、こんなにも物がいるのに本物の置物のように止まっている。
そんな事を考えていると雲に隠れた月が顔をだし、目の前に景色に光が射し込み色が解った。
それを見た狼が目を見開く、木や草や灰色の物が青白く月光でキラキラと幻想的に光っていた。
ヒューっと風の音が聞こえると、視界に見える物が1体視界から消えた。
パリーン
狼にとってその音は世界が真白くなる季節にしか聞かない音だった。
なぜ?としか頭に浮かばない・・・。
目の前から気配を感じて見つめていると、人影が現れた。
緑の物と白い物がこちらに歩いてくる、そして小さいが何か聞こえる。
「・・・これは、また・・・これが自分の力か・・・何故引き返してくれなかったんだ・・・話し合いは無理そうですね・・・この狼が主ですか?・・・そうですか、ありがとうございます・・・・・・生きてるんですよね?・・・はい、連れていきましょう・・・」
しゃがれた声が止むと、視界が変わる。
途中、風と共に視界か消えた物が視界に映り、それを捉えると胴体が二つに離れていた。
それは我の知る状態ではなかった、血が出てなく赤い結晶が周りに散らばっていた。
そして我は緑の物に担がれているのだろう、温度を感じないがそれが解った。
話している緑のしゃがれた声が聞こえてくるが。
我はすれ違う物たちを見て、話の内容が頭に入ってこない。
(こやつはゴブリンではないか・・・もう1体は南の主か、手を組んでおったのか。
して南の主にこのような力はないはず、では我はゴブリン如きに負けたのか?
何故我を運んでいる?生かすつもりか?・・・ッフ愚か物め、我の体が動くようになれば、隙を付き、お主を喰らい力を頂こうぞ!そして更なる高みへ昇るのだ)
我が今後の事を考えていると、茂みから拓けた場所になった。
瞬間。
視界の端に黒い何かが映り込み、我の体を奪い、視界が高くなっていく。
下に居るより小さくなった緑を捉え、その顔は蔑んでいるようだった。
(なんだ?我の体が地上から離れていく!?緑の物は我を笑っておるのか!?体が動くようになれば喰ろうてやるわ!必ず噛み殺してやる!絶対に殺してやる!)
そしてまた我の視界が変わり。
水?黒い周りに水が映り込んでいる。
ペキベキベキグシャ
音が聴こえ。
青黒いなにかが開いた。
開いたところは白く、暗闇の底は目を背けたくなる恐怖があった。
その中に赤い物がボタボタと垂れていく。
なんだこれは?
我が長年見てきた自慢の立派な尻尾と足が目に映る。
何故我の立派な尻尾と足が白い穴に入っていく?我の物ぞ?我は王ぞ?返さぬか!
そして次の番が回ってきたんだろう、暗闇で底の見えない白い穴が近づいてくる。
アレの中に行けば死ぬ、そう理解したくないが、理解でき。
感覚など感じないが、ソレから逃れたく必死にもがく。
必死になってる中で目元の温もりだけを感じる事ができた。
アノ、ヤミノナカニ、イキタクナイ!イギダグナイィ!我ハ王ゾ!グルナァァアアアアア!
ワレワァアア
オウ
暗闇に包まれた瞬間。
ザバーーーーーーーン
水の音が樹海に響き渡った。
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