第21話 南の主の能力とは?
「能力について聞きたいことがあるのですが、南の主さんはどういった能力が使えますか?」
『私が使える能力ですか、言葉で説明するのは難しいので簡単な物でよろしいでしょうか?』
「お願いします!」
分かりましたと南の主が返事をすると、白い膜が南の主を包んだ。
アルクは見たことない結界を見て興奮する。
「おーーー!それはなんですか?どういう効果があるのでしょうか?」
『これは結界です。物理魔法の両方の攻撃を防ぎ、中の者の気配を消すことができます』
なるほど、だからチャチャも南の主さんの強さを聞いたとき分らなかったのか。
「すごい能力ですね!その結界を広げることはできるのでしょうか?」
『魔力の流れで気配を消せないのが欠点ですが、そうですね強度をたもったままになるとこれくらいでしょうか』
南の主を包んでいた膜が膨らみ、家を包むくらいのデカさになる。
「こ、これはすごい!」
『ア、アルク様にそこまで褒められるとは光栄なのですが、私の力などアルク様には到底敵わないでしょう』
「そんな事はないですよ!自分は結界を使うことができませんから!他にはなにができるんですか!?」
アルクは、新しいオモチャを買ってもらった少年のように南の主に詰め寄る。
『は、はい、ほかには傷を癒す治癒能力と植物を操る能力です』
「治癒能力に植物能力が使えるんですか!?治癒能力は相手にも使うことが出来るんですか?」
『はい、出来ます』
「試してもいいですか?」
『はい』
「ありがとうございます、少し待ってください」
アルクは治癒が相手にも使えると聞き、別の世界から来た自分にも治癒能力が発動するのか気になったので、返答をもらうとすぐマジックバッグからナイフを取り出して来ると、右腕を切り南の主に向ける。
「すみませんが、お願いします」
『はい、では失礼します』
アルクは、南の主の治癒能力を眺める。
(ゲームでも可愛い系の魔獣は大体治癒能力が使えたな、自分の仲間にも使える子がいたけど、みんな今頃なにしてるだろうか。
自分がこっちに来たせいで消えちゃったのかな、ハヤテ、クルモ、キュルキュ)
向こうの世界に置いてきた3体の従魔を思い出し、南の主が使った治癒能力はゲームの世界とほぼ一緒だったが違うところもあった。
ゲームでは、緑の光だけだったが、南の主が使った治癒は、傷のところに青い粒子が集まり緑の光に変わっていった。
アルクは従魔契約の時にも見た青い粒子を聞いてみることにした。
「その青い粒子はなんですか?」
『これは魔素といい能力や魔法といった力を使うための源ですが?』
(こちらでも魔素と呼ばれているのか、従魔契約の時に地面から出てくるのは魔素確定か)
腕の傷が治り、アルクは興奮しているチャチャを撫で続け落ち着かせる。
「南の主さんありがとうございました。
チャチャダメだよ、自分たちは教わっているんだから」
チャチャに小声で伝える。
『蔑んだ訳では・・・ですが、アルク様も能力を使われてますよね?』
「そうなのですが、自分たちは・・・」
アルクは今まで隠してきたが、隠してても話が進みずらいと思い。
南の主に前の現実世界の事は話さず、ゲーム世界の話をし魔素を感じなくても魔法や能力が使える人々がいる別の世界から転移してきたと話す事にした。
『そうだったのですね、ですから傷口から血ではない物が出ていたのですね。
それに、魔素を感じなくても魔法や能力が使える世界から・・・不思議な世界ですね』
南の主は、転移して来たことに驚かず、不思議がっていた。
「えぇこちらの世界に来てからよく思います、あまり驚いておりませんが、もしかして転移してくる者が居たのですか?」
『はい昔、アルク様の住処のように、ここの近くダンジョンが突然現れたことがあるのです』
爆弾発言にすぐに食い気味に聞き返す。
「え?それは何処に!」
『残念ながら消えてしまい、もう残っておりません』
何か手掛かりがあると思っていたアルクは、それを聞き肩を落とす。
「・・・そうですか、何年前にあったか分かります?」
『私は、そういうのは数えておりません。
お力になれず申し訳ございません』
「いえ、気にしないでください、きっとほかの何処かにまだダンジョンがあるかもしれませんから」
アルクは慌てる、こちらが教わってる側で、それに聖獣と言われそうな容姿で悪いと思われると、こちらの気が滅入る。
これが今後続くとなると小心者の自分には辛い、殺す気はさらさらないし、まぁ自分が逆の立場なら南の主さんのようになるか、どうすることもできないか。
「ダンジョンから現れた者達は、どういう容姿をしていたんですか?」
『私が出会ったのは青い体のホーンラビットに似た魔物や赤い体のハウンドとかです。
ご存じですか?』
アルクは、聞いてみたものの、ゲーム世界の魔獣か判らず、どうしたものかと考えていると「そういえば!」と思い出し、「少しお待ちください」と言うと書庫へ向かい分厚い本を5冊持つと、また南の主のところへ戻った。
アルクが手に持った本は、ゲーム世界のモンスター図鑑だ、1年毎にある大型アップデートに前の大型アップデートで追加されたモンスターがゲーム公式の書店で販売され、それをアルクは楽しみに購読していた。
(図鑑買ってモンスターに出会ったか確認してたんだよね。
こういう時に役立つとは買っていて良かった、でもバージョン15の図鑑買えなかったのは残念だったなぁ)
そんな事を思い南の主の前に本を置いてパラパラとめくっていく。
「この本の中に見たことがあるモンスターが居れば教えてください」
『ホン?とはすばらしい物ですね、まるで水面に反射した姿が写っております』
(そういえば南の主さんは本を見るのは初めてか、人工物なんてなにもない場所だし、魔獣だった)
念話に慣れてしまったせいか、人と会話している気分になっていた事にアルクは少し笑いそうになってしまい、誤魔化す為に声をかけた。
「どうですか?見たことのあるものは居ました?」
『いえ、見た事のないものばかりですね・・・あ!止めてください』
反射的に大きくなってしまったのだろう南の主の念話に驚き手を止め、1枚ページを戻して確認する。
『それです!』
アルクもその止めたページを見ると、そこに写っていたのはスライムだった。
「このスライムを見たことあるのですか」
『はい、間違いありません。
そちらのスライムはコアがあり日差しの場所に自ら入っていったのでよく覚えております。
こちらの世界のスライムはコアがありません、そして日差しの中を自ら入っていく事はしません』
「ありがとうございます・・・やはりここにも自分と同じ境遇の者達が居るのか」
アルクは念話を聞き礼を言うとボソリと呟き、ゆっくりと本を閉じた。
(状況は非常に最悪だ、自分と同じゲーム世界から来た者が居るは確実。
ダンジョンが現れどれくらいの月日が流れているのかが分からない。
樹海の外は争いが絶えない場所かもしれない、より慎重に動き、樹海の外の情報を集めなければならないな)
アルクは、一呼吸し心を落ち着かせる。
「南の主さん、最後に植物の能力を見せてもらえませんか?」
『分かりました、見ていてください』
南の主からの念話が聞こえると、南の主の前の芝生から植物の根が4本出てきてウニョウニョと動きながら地面から出てくるが、ちょっと怖い。
「す、すごいですね!植物を自由に操れるだなんて!派手に動かすこともできるのですか?」
『ありがとうございます、派手に動かす事もできますが・・・植物を操る能力を使うと草木に無理やり魔力を送くり動かすため、規模が大きいとそれだけ膨大な魔力になりますので草木が耐えられず朽ちて死んでしまいます。
それでもよければ行いますが、どうされます?』
「そ、それは、やめておいてください、見せていただきありがとうございました」
どうされます?ってそりゃ一択でしょ!?
え、植物を操るって草木に魔力を送り無理やり変えるから膨大な魔力を送りすぎると朽ちて死ぬの!?
スゲェ便利な物かと思ったけど複雑すぎるよ!
「あと、植物を操る能力で食べられる草を種から成長させると食べても美味しく育つのですか?」
『はい、美味しい物になりますが、それは植物を操り使う者達からは禁忌とされております』
「何故、禁忌とされているのですか?」
『その植えた周辺の土の栄養を急激に吸い取り成長してしまうので土の栄養が乏しくなり、次にすぐ植えても美味しくなることはありません。
それを繰り返してしまいますと、
「万能ではないのですね」
『はい、以上が私の使える簡単な能力です。
私は攻撃も得意なのですがご覧になられますか?』
「いえ、十分です、ありがとうございました。
次は、念話について教えてください」
アルクは、さすがに南の主の攻撃の能力で何か壊れてもと思い、念話について教えてもらうことにした。
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