第17話 使える魔法・初めての食材
アルクの使う魔法とは声の魔法だ。
声の魔法とは自身の精神力が高ければ高いほど能力を増す魔法だ。
だが、声魔法にはHPを回復させる能力といった魔法が1つもなく、そのためアルクは回復魔法を持たないテイマーだ。
Flow of Worldの世界での一般的な
一般的な魔法を使う職業だと無詠唱でも詠唱時でも呪文を発動させると術者の何処かに魔法陣が出てきて、そこから魔法が飛び出したりするのだが。
声の魔法は特殊で無詠唱が出来ない、それと魔法陣が出ない。
習得していない呪文を習得する度に、NPC教官から自分を声を大にして感情載せて呪文を唱えろと言われる。
え?なにそれ? 恥ずかしいんですけど思いながらも強制的に発声練習をさせられる。
そして声魔法の能力を上昇させる
_______
夕暮れの空の下、アルクは地面にチャチャを降ろして向き合っていた。
アルクは15年ゲーム世界でこの体で過ごしてきたから、なんとなく魔法は発動の仕方は分かっていたが発動するかが疑問だった。
「チャチャいくよ」
「クック」
アルクは深呼吸をして、声魔法を発動させて見る。
〖チャチャ戦え!〗
するとチャチャの体から赤いオーラが出てくる。
アルクは周りも見渡してみるが、野生の動物達は先ほどの事があって戻ってきてないんだろう、反応がない。
「ククククククク」
チャチャは興奮しているようだ、横を向き舌で素振りしている。
(能力上昇の声魔法は機能しているな、あれに当たったら・・・痛いどころじゃなさそう)
そんなことを思いながら自分の使った一時的に攻撃能力を上昇させる声魔法を確認する。
〖
某アニメのように「君に決めた!イッケー!電気タイプのネズミ!十万ボルト!」とか年齢を重ねる毎に恥ずかしくて言えなくなってくる。
それでも、指示は出さないといけないから我慢して言わなければならないのだが。
「発動はしたけど・・・攻撃の声の魔法だとどうなるんだろうか、ゲームではアクティブスキルの加減とか調整できなかったから」
どうしたものかと考える。
もしベラとエリクの鼓膜などが破けてしまったら大変だ、それに周りに感知されても困ると考えやめておくことにした。
「悪いけどチャチャさんにお願いしよう」
「ックック」
アルクが考え事をしている間に、肩に乗って来ていたチャチャが舌で顔を舐めてきた。
「頼むねチャチャさん!」
アルクは言うとチャチャの頭を撫で、ある食材を調理してみようと家に戻った。
_____
もう日が沈む時刻。
台所の踏み台に佇む、小さなドラゴンを頭に乗せた、エプロン姿のゴブリンはある事を考えていた。
(ゲームの世界にあったものがこの世界で実現できるのだ、試すものは一つしかない!)
「ドラゴンの肉を食べてみよっか」
アルクは言うと、マジックバッグからドラゴンのブロック肉を取り出し、まな板の上に置く。
肉の表面にきめ細かく脂肪がついていて、そこまで大きいブロック肉じゃなくて安心した。
「ゲームではそこまで分からなかったけど霜降り肉なんだ、ドラゴンの肉はまだまだあるから、凝った料理より焼くだけの簡単なものにしようか」
目の前の肉をまじまじと見つめる。
ゲームの世界ではどこの部位の肉とかの設定はなかった、豚の肉ならただ豚肉だけとしか表示されなく最初はバラなの?ヒレなの?ロースなの?と疑問を持ったが、目の前のドラゴンの肉もバラだと思いながら、食べる分だけ少し厚く切り分けていく。
「チャチャはどう食べてみる?」
チャチャの目の前に、一口サイズの生のドラゴンの霜降り肉を持っていく、すると一瞬で消えた。
アルクは何度か自分の手と肩に乗るチャチャを交互に見ていると。
「クックック」
満足そうに鳴くチャチャがアルクの顔を舐めまわす。
「共食いだけど・・・そ、そう、おしかったんだね。焼いた肉も食べてみる?」
「ックック」
鳴いたのでマジックバッグから、牛脂とニンニクを取り出しニンニクをスライスしながらアルクは前の世界の事を思い出していた。
(そういえば・・・15周年イベントのためにバイト先に1週間休みを入れて、食料とか買い込んでたのに無駄になってしまったな・・・アップデートは結局何が来たんだろうか中央の島とかいってたけど、きっとそれだけじゃないんだろうな、まぁ今となっては考えても無駄か)
そんな事を考えながらフライパンをコンロに置いて、牛脂を満面なく塗りスライスしたニンニクを入れ軽く炒め、ドラゴン肉に塩コショウをまぶし焼いていく。
ドラゴンの肉にコンロの中火で火が肉に通るのか?と思っていたが問題なく肉に色が付き始め食欲を刺激する香りが家の中に立ち籠めた。
鳥肉並みに両面しっかり火を通したら【ドラゴンステーキ】の出来上がりだ!
きっと問題ないはず鳥並みに火を通したんだし、人生初のドラゴンの肉を調理したのだ不安はあるが実食するしかないだろう。
ドラゴン肉を皿に置いて、チャチャが食べれるよう一口サイズにナイフとフォークを使って切り分けサイコロステーキにしていく。
「・・・すごいナイフのおかげかな?簡単に切り分けられる」
関心しながら切り分けていってるとチャチャが一口サイズのステーキを舌で絡めて口に運んだ。
すると「ククククククク」と興奮して鳴き始め、アルクは横目で。
「あ、チャチャ行儀が悪いよ」
苦笑いでいう、それだけ美味しかったのか、チャチャは気にせず飛び跳ねて喜んでいた。
料理人冥利に尽きるなとアルクは思いながら手を合わせて『いただきます』といってから食べ始めた。
アルクも一口食べると
「う、うまいっ!一度だけ行ったことのある高級料理店の和牛の肉の味がする!」
空腹が起きない身になってもこれだけの味覚があるのは喜ばしい限りだ。
(能力の上昇は・・・してないな、さすがにゲームの時のリストに載ってない調理法だったから?)
アルクはそんな疑問を考えていたが興奮して出した声のせいでベラとエリクが泣き出してしまい。
急いで「ごめんねごめんね驚かせちゃったねー」と言いながらあやし、落ち着くとロングテーブルに戻ったのだが、皿の上にはなにもなくなっていた。
チャチャを見るとチャチャはこちらに背を向け丸まっている。
「チャチャ・・・全部食べちゃったのかぁ」
アルクは呆れながら、そっぽを向いているチャチャに手を掛ける、ビクリとするチャチャの体を無視して優しく胸に抱いてあげ頭を撫でる。
「まぁ、あれだけ美味しかったんだ、しょうがないよね、でもほかの人の物は取って食べちゃだめだよ?」
撫でながら語り掛け、チャチャも謝っているのだろうアルクの手をチロチロと舐める。
(まぁ、いつも同じ味の物を食べてたしね)
アルクは苦笑し今回は仕方がないと思っていた、今までチャチャには従魔用のご飯か、ベラとエリクのミルクと果物しかあたえていなかったのだ、今後はいろんなものを与えようと考えていた。
料理の疑問も忘れ、すっかり暗くなってしまった外を一度見ると家事を済ませるために動き出した。
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