第10話 これが決定打だ!
ボーとアルクは膝の上のチャチャを撫でながら外を眺めていると。
ベラとエリクが、オギャーとぐずり始めた。
すぐチャチャをテーブルの上に置くが、チャチャは体を起こしアルクの肩にジャンプして頭に上る。
アルクは気にもせず、赤ちゃんのバスケットを覗いたらクッションが濡れていた。
(来たね)
アルクはこの時を待っていた。
赤ちゃん最大の問題!赤ちゃんの下の事情だ。
すぐにアルクは、二つのバスケットを持ち上げ風呂場に向かう。
あかちゃんたちに、巻かれていた布を風呂場で脱がせると、シルクのような肌触りの生地のオムツをエリクが履いていたことにはびっくりした。
ベラは布を巻いているだけだったが、ちゃんと赤ちゃんにもオムツあるんだなと結構文明進んでる?と思いながら。
「ベラは女の子でエリクは男の子と」
そして茶色の物体と濡れてるパンツをみて。
現実を受け止める。
ここはゲームの世界じゃない現実の世界だと。
そこにある少し離れていても臭う茶色の物体が付いたパンツが決定打だった。
Flow of Worldにはある程度、感覚を制限させられている。
そうでもしないと脳へ負荷がかかりすぎて廃人になってしまうからだ。
それにゲームの世界で踏ん張ったら現実世界ではどうなることやら・・・。
こんなぬちょぬちょに濡れたリアルな脱糞を見たことあるか?ないよ、あったらどんだけ力入れてるんだよと、ある意味世界で話題にあがるだろう、脱糞で異世界へ転移したなんて悟りたくもなかった。
元に居た世界に戻れるのなら『脱糞で分かる異世界転移』という題名で小説を書くだろう。
「やっぱり、ここは現実世界か」
今までも目を覚ましてから確認していたものは、チャチャの件とヤギのミルクを温める以外のことはゲームの世界でもできた。
自分の意志で下着の着脱もできるゲームだ、それだけリアルなVRゲームだった。
アップデートが来たのか?ただデータがバグって機能しないのか確かめていっただけにすぎない、頭の何処かで自分はゲーム世界に居ると信じたかったのだ。
今さっき低温殺菌して冷ましているヤギのミルクも無駄になってもいいと思っていた。
ゲームの世界なら病気がなく脱糞もない、周囲の情報を集めながら準備を整え2人の赤子を連れ、食料とあやしながら無理をしてでもこの場所から離れほかのプレイヤーが居ると信じ街へ歩いていっただろう。
それをしなかったのは、この世界は現実だとも思っていたからだ、まだまだ確信が持てていなかった。
だから現実かの確認するためにベラとエリクの便を待っていた。
でも、現実なら話は別だ赤子が病気になったら清潔な場所がない場合死ぬ可能性が増す。
病気に対しての薬なんて持ってない、そして仮想でもない現実世界だと死は終わりだ。
「自分ができる最大限の警戒をしなければいけないね」
アルクは、ベラとエリクを見つめ深刻な顔をし呟く。
今いる場所は樹海の現実世界だ、今後は目立つ事は控えなければならない。
ここが地球なのか、または別の惑星で、どこまで文明が発達しているのか、何が潜んでいるのか分からないことだらけだ。
だって自分はゴブリンだから。
この世界にはゴブリンがいるのか、居たとしてもゴブリンはどういう立場にいるのかも確認しなければ他種族との交流もできない、Flow of Worldと言うゲームをやっていてよかったと思う。
争いごとが絶えないVRMMORPGだったから、嫌でも危機管理能力が身についた。
自分ひとりだったらいろいろバカやってたんだろうなと、赤ちゃんのぷりぷりのおけつをぬるい湯で綺麗にしてあげる。
この子たちのおかげもあって落ち着いて状況を把握できたことに感謝していた。
そのあとは便だけはトイレに流し、びちゃびちゃになったバスケットや布を一旦放置して、二人が入る別のカゴにクッションやぬいぐるみを敷き詰め用意しておき、二人を優しく布でまいてあげた。
リビングに戻ると、ベラとエリクの体勢が斜めになるようにクッションを敷き、人肌まで温度が下がったミルクを少し味見して、問題なさそうだなと思い、ベラとエリクにスプーンですくって、チビチビすこーしずつすこーしずつ飲ませてあげる。
「どう?おいしい?」
「あう あう」
アルクが聞くと、言葉の意味が伝わったのか返してきてくれた。
今まで静かだったチャチャも、それを見て別の容器に入ったミルクを飲み嬉しそうに鳴いていた。
アルクは夕方になった外をみながら考える。
これからの課題がもあるが、この子達が自立できよう必死で守っていこうと心に決め、ベラとエリクが眠るのを待った。
しばらくするとベラとエリクが眠ったのを確認してからアルクは風呂場に向かい、先ほどまで放置した洗濯物をタライに入れて外にある玄関の横の洗い場で洗い、干し終えると。
試したかった事を実行するため台所へ向かった。
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