第12話 これから
あれからアルクとチャチャは模擬戦をやめ、防具を外しいつものラフな格好になると、いつもと違う夜空を周りを見渡す。
(そういえば、もう一度、周りに灯りがないか見るために木に登ってみるか)
この世界でもゴブリンの体は夜目が利くのでアルクは夜だというのに関係なく木に登り上の世界を見る。
月明りで照らされた葉の海がずっと続いてた。
周りを見渡しても灯りはなく目の前の現実を受け入れていく、しばらくチャチャと一緒にそれを眺めていた。
きっと自分は帰れない、生身ではなくゲームのキャラクターに魂が入ってどこかの仮想世界じゃなく現実世界へ来てしまったんだろう、そう考えた。
「・・・自分だけがこの世界に飛ばされたのかな・・・それともみんなもこの世界に居るのかな・・・。
こんなことになるのが分かっていたらダンジョンを守らせなかったのに・・・ごめん」
アルクは夜空を見ながら、そう呟きギルドのダンジョンを護らせるために置いてきた家族の従魔達の事を考えていると、チャチャが顔を舐めてきてくれた。
「チャチャありがとう・・・まずは、この状況を一つずつ解決して、この世界がどういうところなのか慎重に探っていかないといけないな」
もしこの世界にみんなや他のプレイヤーや意思疎通のできる者がが居れば、友好関係を築きたい。
そしてベラとエリクの親が居れば成長した時、名前と容姿を見ればきっと判るだろう、この世界の住人が体毛全てが金、白みたいな色だったらさすがにビビるが・・・ないと信じたい、干しているバスケットやパンツなどは乾いたらマジックボックスに入れておこう、もしここから旅だってベラとエリクの親御さんを見つけた時思い出の品として渡そう。
アルクはそんな事を思いながらベラとエリクがぐずり始めた声が夜の樹海に響き急いで家に帰った。
一息付き、そういえばと、マジックバッグから前の現実世界なら古いモデルカメラを取り出しベラとエリクのツーショットをパシャリ撮るすぐにカメラから白い紙が出てきた。
うまく機能してくれたと喜び、微笑みながら写真に写った二人を見る。
そして次は3人と1体で撮る。
「ベラ、エリク、チャチャ笑ってー笑ってー、ハイ、チーッズ」パシャリ
アルクはその写真を見て苦笑いをする。
そこには笑うベラとエリク、そしてニタァと、今日のご飯と言わんばかりの満面な笑みでアルクとチャチャが映っていたからだ。
「これは・・・親御さんが見たら顔面蒼白だね・・・」
「クックック」
とチャチャが自分の頭から肩に来て頬擦りしてきたので、アルクも頬擦り仕返しこの子達の成長記録を残そうと写真をマジックバッグへ仕舞うと。
寝室まで二人の入ったカゴを持ち上げ今日は寝る。
まぁ寝れなかったのだが、夜中は大変でベラとエリクは双子か?と思うぐらい息ぴったしに泣き始める。
そのまま休む時間もなく、気づけば朝になり、一息つくと自分の体の変化に気づく、いくつか疑問があったものを浮かべてみる。
疲労がない、あんなに慌ただしい一日だったのに、空腹も乾きも尿意もだ、第三欲求がすべてこない、チャチャもそうだ、ずっと頭にいるのにトイレに行った気配もない。
(やっぱり強制ログアウトもされないか、それしにてもこの体は子育てに便利だな)
今は深く考えずラッキーとか思っておこう、何日かすれば来るかもしれないし。
それよりもこれからだ、まず今必要なのは、アルクを顎に手をやり考え込む、頭の上のチャチャも真似して首をかしげる。
「ベラとエリクのためのクッションを詰めたバスケットをあと4つは用意しておこっか」
濡れたら洗って干して乾燥させないといけないから、現在乾燥機がないのでローテションさせよう、あとは生地は十分にあるから問題はないはず・・・。
クッションに埋もれすぎると窒息してしまう可能性もあるからなるべく硬い床に布を巻いて体を固定して上げないとなぁ・・・。
「・・・パンツは・・・針がないから無理か・・・成長したらふんどしもどきかな。
あと赤ちゃんを抱っこできるような紐だ」
服も無理だし、紐は頑張って結べるようにしよう。
外で行動しなければいけない時が来るはずだ。
「それと、冷蔵庫と冷凍庫か」
時間停止能力がついたチェストは便利だが。
肉とかに香辛料で下味をつけたい時は、さすがに時間停止されると困る、こればかりは自然の流れに任せないといけないかな。
そして冷蔵庫、時間停止能力があっても氷はほしい。
「今は春だと思いたいなぁ」
この世界の夏が来たらどれだけ暑くなるのか・・・さすがに冷えたものが食べたくなるだろう。
きっと。
「ベラとエリクの食べ物はフルーツなどすり潰したり、雑炊でも作っておけば問題ないかな?タンパク質も豆とか潰して入れておこうか」
昨日の殺菌したヤギミルクを、良さそうな容器がなかったからフラスコに数本入れてマジックバッグにいれてある。
今のところは衣食住に問題ないからこれくらいだろう。
(あぁ食事といえば)
アルクは思い出し立ち上がり、台所へ行きマジッグバッグを背負うと、池に向かった。
ついでにまた木に登り周りを確認してみたが夜と色が違うだけでどこからも煙が立っていなかった。
その後は少しだけ池を眺めマジックバッグからマグロを一匹取り出す。
重いくらいか、ヤギのミルクの缶もそうだったが、普通こんなの持てないよね、と考えながら、アルクは自分よりもでかいマグロを両手で掴んで自分の力も変わっているなと確かめると。
両手で抱えているマグロを池の真ん中に落ちるようやさしく投げる。
ドボーーンッ!
と音を立てながら水しぶきがあがり、そこから数秒後。
ドバーーーーーーーーーーーーンッ
と先ほどのモノとは比にならない迫力の音と水しぶきをたて、その高く上がった水しぶきと共に、黒い物体の尻尾らしきモノが輝いて見え池の水面に消えていく。
「よかった、〖ズンナマ〗・・・生きて !ッ」
そう名を言った瞬間。
池の水面が光だし、アルクは何かを吸われている感覚に襲われ、前のめりになるが、なんとか池に落ちないように踏みとどまっていると、チャチャがアルクの顔を舐め心配してきてくれた。
「ありがとうチャチャ大丈夫だよ」
唐突に来た疲労感に驚いたが、落ち着きを取り戻したアルクはそう言いチャチャを胸に抱き、そして見上げてくる顔を撫でて池に目をやると、光は収まっていていつもの池に戻っていた。
また池から黒い物体が水しぶきを上げている、喜んでいるようだったがすぐに池は静かになった。
寝床にもどったのだろうか・・・。
黒い物体の正体は【ズンナマ】と言い、仲間が釣ってきたナマズだ。
この家の新築祝い来た仲間達の一人がアルクの庭がさみしいと言って渡してきた。
その釣ってきた本人【竜田揚ゲ】さんがズンナマと名付け、餌をあげないと死ぬと言われて、それからアルクは3日おきに大型魚を一匹餌付けに来ていたが、世界が変わわった初日の慌ただしさに、もう一人の家族の存在を忘れてしまっていた。
(まだ疲労感は抜けない、もしかして今発動したのはテイマースキルの〖従魔契約〗なのかな?
ゲームの時のエフェクトと同じだから合ってるとは思うんだけど・・・。
でもテイマーのスキル〖従魔契約〗は従魔を既に4体契約していたら発動しなかったはずだから、もしかして置いてきた従魔分のスロットが空いたから発動したのかな・・・
もしそうならこの世界にミース、テマリ、シャクヤは居ないのか・・・)
アルクはそう考え頭を軽く振ると、ズンナマさんに何が起こったの見たくて声を掛けた。
「ズンナマさん顔を出してくれない?」
すると、水面から一本の太いツルが現れる。
一見黒く見えが、深い青色をした
「・・・?もしかして、ズンナマさん顔を出したくないの?」
アルクはそれを見て少し考えると、苦笑しながら聞いてみると、泡が1つだけ浮かんできた。
「ズンナマさんは恥ずかしがり屋さんなの?」
また1つ泡が浮かんできた。
「顔を出してくれませんか?」
と聞くと次は2つ泡が間を置いて浮いてきた。
(言葉は解っているみたいだけど、前の世界だと呼びかけても反応しなかったのに・・・世界が変わって、自由に行動できるようになったからなのかな?)
無理やり顔を出させるのも気が引けたので諦める。
「ズンナマさん自分たちは別の世界に来たみたいだから、何か不自由な事があれば教えてね」
アルクはそう言うと、池の真ん中からポコリと大きな泡が浮いてきた。
それを確認すると、家の周りを確認するために歩きだした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます