第7話 【緋色のずんぐりした体の小鳥】
そこは太陽の光が所々に差し込んだ、静かな樹海の中、緋色のずんぐりした体の小鳥は木の枝にとまり羽を休めていた。
(あのバカ共が騒がないから、今日も静かよのう)
少し前に樹海で他所から来た強い気配の魔獣が西から現れたせいで樹海に争いが起った。
既に居た西の主と戦ったのか、こちらまでは来なかった。
その時負った西側の樹海へのダメージは大きかったが、徐々に回復し最近は大きい争いもなく、今日も気持ちいい風が小鳥の体に当たり目を細める。
だがそんな樹海に変化が訪れた。
音もたてず、地面が白く光り始めたのだ。
魔力も何も感じない、なのに白い光が強まっていく。
(何が起こっておるのだ!こんなものは見たことがないのう!)
すぐ緋色の小鳥は行動を起こし、羽を広げ飛び立った。
飛んだ小鳥の姿はみるみると形を変えていく、大きくなっているのだ全長は優に10mは超えその姿を見たものは怪鳥というだろうが、嘴は丸く目はつぶらで丸みを帯びた体と立派すぎる翼が赤と緋色で見るものすべてを虜にしそうな美しさだ。
緋色の怪鳥はある程度高度をとると、自分がいたところを見る。
樹海の全体が光っているわけではなく一部が光っているようだった、それに怪鳥は気づき最小限の殺気を出し近くに居る魔物たちを逃がした。
(何が起ころうとしておる・・・)
しばらくすると白い光が収まり見たこともない現象が起きていた。
白い光が収まっていくと、先ほどまでとまっていた木や周りの木々もなくなり、そこには家や池に一本の木が生えていた。
(・・・なんなのだあれは、人が住む家のようだのう)
緋色の怪鳥はそれが何か知っていた。
時々、人の世界を見ているからだ、さらに高度を上げ、上から光っていたところを見守る。
(ここまで距離をとっておると、さすがに気配を察知はできんのぉ・・・ここにも永いこと留まれん、バカ共に見つかったら大変じゃ)
緋色の怪鳥も距離があるため詳細なものは分からないが、さすがに痺れを切らし高度を下げ、相手に警戒されないよう先ほどの小鳥の姿になって近づいていく、そこには2つの気配があった。
カゴに入った人族と魔族の赤子が二人居た。
緋色の鳥はカゴの縁に止まり赤子を見つめる、同じように紅色と水色の4つの目もわしを見つめて返してくる。
緋色の小鳥は人族や魔族の街に行ったときに、好奇心で赤子と遊んだりしていたから警戒心はない、赤子には悪意がないからだ。
子供になると好奇心で捕まえてくるから面倒で逃げている、こちらに来る大人は悪意しかない。
(人族の子と魔族の子かのう・・・。
こんなにも愛らしく思えるのに成体になると何故悪の塊になってしまうのか・・・。
して赤子と、この場は一体なんなのだ、転移でもさせられたのかのう?)
緋色の小鳥は人という者達と深く関わったことはない。
樹海の縄張りに足を踏む輩が多く、争いが絶えないのだが、緋色の小鳥は一匹何故か分からないが、この場所が好きで、ずっとこの場所の平穏を守っているだけなのだ。
そんな事を思っていると赤子達の顔がゆがみぐずりはじめてしまった。
(おっとと、今まで鍛えた技を披露する時が来たかのう)
そしてピロピロ鳴くと共に羽を広げバスケットの縁にジャンプする。
(どうだのう!これが長年培ってきた奥義よのう!)
さらに緋色の小鳥はこれでもかと力を入れ体を動かす、すると赤子達は笑い始めた。
満足のいく結果が見れて緋色の小鳥も嬉しそうに鳴く。
突然、後ろから人族とも魔族とも違うしゃがれた男の声が聞こえた。
「お客さんかな?こんにちは面倒を見てくれてありがとう」
小鳥は今まで感じなかった強い気配が突然現れた事にビクっとする。
(な!何処から現れた!)
すぐに声の主を見る、ニタァと笑う顔が二つあった。
昔、見た不快な生物のゴブリンと、その頭に乗る緑色の翼がない小さなドラゴンだ。
ゴブリンの頭に乗るものは小さな体で底の見えない暴力を持っていた。
もう一方のゴブリンからは何も感じない弱き者なのだろう、だが、そんなはずがない頭の上のモノが違うと危害を加えたら殺すと目で訴えていてその者を護っていた。
硬直が解け焦って飛ぶ、久しく味ったことのない脅威を恐れた。
初めて敵に背を向けたが、プライドなんてものはない、ただただ今はあの悍ましいモノから逃げたかった。
(なんじゃぁぁあああああああ、あの化け物は!?)
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