第6話 状況を確認しようか

アルクはベラとエリクが寝ている間に状況を整理するため、まずは目に映るものを確かめていく。



フィールドマップがない、もちろんステータス画面など、ウィンド画面などそんなものも出てこない、HPMPバーだってない、ログアウトもできない。



自分の容姿を改めて確認するため池に近づき水面に映った自分を見る。

そこには凶悪そうなゴブリン顔と、頭に乗ってるチャチャが映り、チャチャはペロリと長い舌を出しアルクを舐め始めた。



落ち着かせるために舐めてくれたのだろうが。

アルクは気にする余裕がなく、どうすればいいんだと頭を抱え込んでいた。



(自分は・・・ここは何処だゲームのバグ?アップデートが来たのか?それよりここはゲームの世界なのか?ゲームの何処かに転移したのか?)



いろんな考えが頭をめぐるが、頭の中にあることが浮かび顔を上げた。



(そ、そうだ長時間プレイをすれば強制的にログアウトさせられる機能があるんだ!それを待とう!)



そんな時泣き声が聞こえた。



あ・・・



慌ててすぐに赤ん坊のところへ戻っていると。



「ん?」



いつの間にか、赤ん坊のバスケットに緋色のずんぐりボディの可愛い小鳥がバスケットのふちに止まっていた。

自分の感性では可愛いかもしれないが、狂暴かもしれないと思い焦り走る。

近づくとピロピロピロ鳴き翼を広げ赤ん坊をあやしてくれていた、ベラとエリクも嬉しそうにしている。



「あーうあーう、あーうあーう」



アルクは、ほぅと胸を撫で下ろし緋色のずんぐりボディの小鳥に近づき声をかけた。



「こんにちはお客さんかな?面倒を見てくれてありがとう」



と普通の人なら声をかけるなんてしないだろう、だがアルクは違うテイマーだからだ、いつも従魔に話しかけてるせいで癖になっていた。



そう笑顔を向けると、ゴブリン顔のせいだろうか?、緋色の小鳥さんはこちらに顔を向けると一瞬固まり、すぐにピロロロロロロロっと羽ばたいていってしまった。



(ゴブリンフェイスのせいで驚かせてしまったかな)



アルクはしばらく鳥さんが飛んで行った方向を見つめ、

気を取り直しベラとエリクを見つめた。



まずこの子達をどうにかしなければ、ここが何処なのか分からない、寝ている間にゲームのアップデートが来たのかもしれない。

NPCの赤ちゃんだが、それでも死なせたりするのはごめんだ、ここは何処でとかは後回しにし、見た事もない森という助けも呼べない危険な場所でどうするかを考えるしかない、すぐにバスケットを持ち上げ家へ向かった。



アルクは家に戻ると、まず食料の確認をするため家の地下の食糧庫に行き、壁にあるスイッチを押して照明の灯りが点くのを確認し、食糧庫に入り木製の宝箱のようなマジックボックスを見つめた。



マジックボックスにもマジックバッグと一緒の能力があり時間停止がある。

違うのは容量の大きさだ、マジックバッグの5倍の量を入れられる便利なボックスだ、それが食糧庫の棚にいっぱい敷き詰められている。

全部を食べようと思ったらどれだけあるのか、一般成人男性一人で1日三食、食べてどれだけもつのか想像できないくらい様々な食材が家のアイテムボックスに入ってる。



アルクはそのままマジックボックスを開けて、その白い膜が張っている中に手を突っ込むが。



「リストがでない・・・」



いままでは、マジックバッグやマジックボックスに何が入ってるか確認するには、白い膜に手を突っ込むと入ってる物がなにかリストになってでてくるが、それがでない。

だが、何か触れている感触があるので掴んで出してみると。



「おぉ、ブリか、よかったアイテムとして出るみたい」



アルクは白い膜から顔を出したブリを見つめ、一先ずホッとするとブリをマジックボックスに戻した。

特定の物を取り出すにはどうすればいいかと悩み、開いているボックスの縁を掴み立ち上がろうとすると、ツルっと手を滑らせアイテムボックスにそのまま顔面ダイブしてしまった。



「うぉ!」



マジックボックスに胸を打ち付けてガタンッと音がし、痛みが来る!と思って目を瞑っていたが来るはずの痛みがこない。

なんだろうとゆっくり瞼を開くと目の前の光景に痛みのことなど忘れてしまった。



そこは真白な世界で、自分が今まで入れていたであろうアイテムが小さくなって敷き詰められていた。

アルクは興奮しながら目の前にあるアイテムを手を取り確認していく。



「チャチャこれはすごいね!」



「ックック!」



と自分の肩に乗っているチャチャも興奮気味に鳴く。



(やっぱり、チャチャに感情というのが芽生えているのかな?願っていたアップデートがついに来たんだ!でも・・・今は止そう、まずはベラとエリクの事が先だ)



アルクもそれを見て嬉しく思うが、それとは別に不安にも思っていることがあったが、その考えを止め改めて確認していく。



自分のマジックボックスの中に赤ちゃん用の粉ミルクとかなんてない、そうなるとヤギのミルクが必要になるだろう。

親戚が生後間もない赤ちゃんに牛のミルクはだめだと話していた覚えがあった。

さすがにゲームだからと侮ってはいけない、変なところで凝ってるところもあるので現実的に対処していくことにした。


ヤギのミルクもここ数か月で大量に集めていたので、ヤギのミルクと書かれたラベルの缶を見つけ手に取ると。



「みんな、ごめん約束守れなそうにないかもしれない」



届かない声がマジックボックスに響く。

チャチャにも自分の不安が伝わったのだろう、顔を舐めてきてくれた。

アルクは一瞬ビックリした顔をすると、チャチャに感謝を述べて、改めて気持ちを切り替え、アルクはミルクをマジックボックスから取り出した。

すると小さかったアイテムが本来の大きさに戻り、両手で持たないと支えきれない大きさになっていき、アルクは落とさないように両手で缶を支える。



(おっとと、これ何リットルあるんだろう)



アルクより少し小さい缶を持ち上げ、少し重いなと思いながら台所へ向かった。

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