第10話
夕食の時間になってもマリアは食堂に現れず、私が部屋のドアをノックしても決して開けようとしなかった。
「事情はわたしから説明するから、あんまり気にしないで」
カルメンはそう言ってくれたが、気分は塞いでいた。
アンセルモもマリアに聞いたらしく、
「心配せんでも、マリアお嬢様ならいずれわかってくれますだよ。ただ、このことは旦那様には内緒にしておいた方がいいですだ」と言ってくれた。
しかし、やはりこれ以上彼らに甘えているわけにはいかない。
翌朝にでも出て行くつもりで、私はその旨をカルロスに伝えた。
彼の書斎を出てカルメンのところへ挨拶に行ったが、その時ちょうど彼女の部屋のドアが開いてマイクが出てきた。
私に気づくと、無言のまま苦笑いですぐ横を通り過ぎて行った。
私は呆然と立ち竦んでしまい、カルメンのところへは行かず、そのまま部屋へ戻った。
ベッドに入ってもまんじりともせず、窓から射し込む月明かりを見ていた。
何かとても大切なものが手の中から飛び去ってしまったような、そんな気持ちだった。
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