第8話

 夕食の後、部屋で横になっていると、ドアが開いてマリアが入ってきた。


 両腕に大きなバラの花束を抱えている。


「キレイでしょ。裏庭にたくさん咲いてるの」


「僕に?本当に綺麗だね。ありがとう」


 花束を私に渡し、悪戯っぽい笑顔で訊ねてくる。


「ねえ、アキラ。わたしとカルメン、どっちが好き?」


「どっちって、二人とも好きだよ」


「嘘。アキラはカルメンの方が好きなんでしょ。だって、さっき二人きりであんな楽しそうに話してたじゃない」


「あれは何でもないよ。ニッポンの話をしてただけだ。それだけだよ」


「ホントにそう?」


「うん」


「いいわ。信じたげる」


 マリアは私の隣に座っていたが、静かに立ち上がり、部屋から出て行った。


 ドアを閉める時に言った。


「わたし、アキラが好き!」

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