第2話 魅惑の公爵令嬢
◇◇◇
その翌日。学園の前にローズ家の馬車が停まると、生徒たちは思わず足をとめ、リリアが現れるのを待った。
これから学園生活が始まるというのに、初日に婚約破棄されたリリアは、噂好きな貴族たちの格好のネタとなる。
一体どのような顔をして現れるのか。
ニヤニヤとあからさまに嫌な視線を向ける貴族令息。扇でさっと口許を隠しながら、蔑みの表情までは隠せない貴族令嬢。
気の毒そうな憐憫の視線を送る者も多い。
だが、リリアが馬車から姿を現したその瞬間、生徒たちにどよめきが巻き起こる。
(((だ、誰だァァァァ!!!)))
流れるように豊かな金髪は息を飲むほど華やかで、理知的だった菫色の瞳を蠱惑的に彩っている。ほんのり赤く色付いた、ぽってりと魅惑的な唇。手袋を外した腕は、白く、艶かしく。爪の先まで美しい。
そして、ああそして!あの豊かな胸は今までどこに隠していたと言うのだろう。
貴族令息は残らずその魅惑の谷間に釘付けになる。
豊かな胸元と裏腹に腰はきゅっと細く、貴族令嬢は残らずそのくびれた細腰に目を奪われる。
しゃなり、と馬車から降りた令嬢は、自身に注目が集まるのを見ると、こてんと首をかしげた。
「皆様ごきげんよう。あの、私、どこか変ですか?」
うっかり話し掛けられた令息は、ふわりと広がる芳しい香りにくらくらしながら、
「あ、あの、失礼ですがお名前を伺っても……」
思いきって尋ねることにした。
「まぁ!ご無礼いたしました。わたくし、リリア=ローズでございます」
にっこり微笑まれて、耳を疑った。
「ほ、本当に、リリア嬢ですか!?あの、あまりに昨日と様子が違うので……」
令息の言葉にリリアはポンっと手を打つ。
「ああ、そうですわね。殿下との婚約も無くなり、自由の身になりましたので、自分の好きな格好をすることにしましたの。メイドが張り切って用意してくれたのですけど、このようなドレスは初めてで……似合わないかしら」
心配そうに肩を寄せ、目を伏せるリリア。その瞬間、深まる谷間。
遂に令息が鼻血を出して倒れた。
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