公爵令嬢の華麗な転身~命短し恋せよ乙女……ですわっ!~

しましまにゃんこ

第1話 婚約破棄?謹んでお受けしますわ!

 ◇◇◇


「リリア=ローズ!本日を以て貴様との婚約を破棄するっ!」


 貴族学園の入学記念パーティーでいきなり突き付けられた言葉に、リリアは息を呑んだ。


「で、殿下……理由をお聞かせ願えますか……」


 震える声で問いかけるリリアに、冷めた視線を向けるのは、この国の第三王子、クリストフだ。


 第一王子、第二王子と違い、側妃の子であるクリストフは、幼い頃に定められたリリアの婚約者だ。結婚後は王籍を離れ、ローズ公爵家に婿入りすることが決まっていた。


「理由?そんなのはお前が一番分かってるだろう?なんだその野暮ったい格好はっ!お前には美しさの欠片もない。お前のような色気の欠片もない女と結婚するくらいなら、生涯独身を貫き、王室に残ったほうがまだましだ」


 リリアは固く結わえた髪にそっと手を伸ばす。後れ毛一つなくひっつめた髪は、まるでお堅いマナー教師のようだと周りから揶揄されることは多かった。首元までしっかり隠す古風なドレスは、胸元を大胆に開いた社交界の流行とは微塵も被らない。


 リリアだって、流行のドレスが欲しかったし、華やかな髪型に憧れていた。宝石だっていくらでも買えるのに、我慢していたのだ。


 なぜなら、野暮ったいドレスも、ひっつめた髪も、全てクリストフの母親である側妃の影響だからだ。


「公爵家はいずれクリストフのものとなるのよ。贅沢は慎みなさい」


「まぁ、どこの娼婦かと思ったわ。子どもの癖に派手なドレスを着て!」


 そう嫌味を言われる度に、リリアはうんざりした。だからこそ、文句の付けようもないほど、お堅い野暮ったい姿で過ごしてきたのだ。


 だが、それも今日までのこと。


「承知しましたわ。殿下」


 きつく結わえた髪を一気に解き放つと、蜜色の豊かな髪がふわりと広がる。胸元を軽く寛げ、艶やかに微笑むリリア。


「本日を以て、私、リリア=ローズは、自由の身ですっ!」


 

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