第4話 「自己愛」のない「自己犠牲」

前回の話から、かつて私に言われ続けられた「素直」と言う自分は無くなった。


中学、高校と進学する中でも、「自己防衛」と言う名の素直な私が当時、これだけは自己主張できた物があった。


それが、私の趣味、好みであった。


特に、好きなアーティストに関する音楽には、誰からも踏み込まれることも無い。理解はされないが、汚される事もない。私にとっては、正に正常に呼吸ができる。そんな感じだったに違いない。


だが、だからと言って「自己愛」どころか、「自己防衛」は無くならない。


だが、高校と短大の生活は、私にとっては、心が楽な時代となった。


そして社会人へとなっていくのである。ここからは、もう、学生の頃よりは、真逆な精神へとなっていく。


その社会人2年、3年位には私の表情は、それまでとは違い、厳しい表情だったようだ。祖母からは、

「穏やかな表情ではなくなった」と言われたものだった。


それ位厳しいものだった。

社会人となったのだから、当たり前かもしれない。だが、私は毎日、納得がいかない事に、精神的にも追いやられる羽目になっていたのだ。


では、何に納得がいかないのか。


私の職業は、保育士だった。つまり子供達相手。また、保護者が相手だ。


この保護者の肩書、職業により、預かっている子供達が差別とも言われるような、考えを上に立つ園長、主任達が持っていたからである。


この納得のいかない場所に3年いた。

一緒に入った同期は、次々と辞め、その辞め方も突然来ない。何人か仲の良いもの同士示し合わせてと言うものだった。


この同期。私は初めは輪に入っていたが、直ぐに入れなくなり一匹狼のようになっていた。


仕事の能力が低い私は段々と輪の中に入れなかったのだ。


だが、その一匹狼が幸いしてか、余計な上からのとばっちりは、受けずにすんだ。


この一匹狼とも言える私の心理。当時から、他人、同僚等との距離をかなり置くようになっていた。


そう、より自己防衛本能が強まっていたのだ。


だが、仕事は辞められなかった。全く違う園に転職も出来ずだった。

3年はと自分で決めた事もあったが、

収入の事があった。月のお給料はすくなかったが、賞与が頂け、初めての賞与を持ち帰った時の母親の喜びようは、かなりだった。


今思えば、家族の為の収入が欲しかったのかもしれない。だが、母親は、その私が得てきた収入を貯蓄させ、結婚資金とさせようとした。また、毎月のように、足りない支払いにあてがっては、返したり。


私は、その収入はどう使われてもいいとしていた。ただ、母親は何かに捕らわれたかのように貯蓄していった。

私もいつかは、結婚するんだと考えていた為、そうしてくれた事には感謝だった。



この仕事をして、収入を得る事で母親の姿を見た私は、何かの役に立つのだと考え、働いてお給料を得る事が頭の念頭に置かれる事になる。


自分の為に貯蓄している感覚はあれども、家族の必要な時に使えると、その考えが浮き彫りなっていくのである。


そうして、違う園へと再び転職し、そこで、最初の年度末に園長に呼ばれる。臨時職員から、正規職員への話だった。


私はすぐさま頭に浮かぶ、収入が増えると。そうすれば、家族の何かに役に立つと。

しかし、正規職員の厳しさを知り尽くしてきた私は、精神と身体が務まるのかの不安が、頭から離れない。

それでも、受ける事にした。


丁度その頃、弟が大学の受験だったからだ。学費の足しにでもなるかもしれない。

私はその思いから、正規職員を受けた。


そうして、正規職員になってから、わずか、2年程で、身体を故障させる事になるのだ。


持病の腰痛が、ついにはヘルニアとなり、この園に来てからわずか4年程で完全に動けなくなり、休職する羽目に。。。



もう、お解りだろうか。

自分の好きな職業ではあるものの、いつの間にか、自分の為の収入を得る基準が家族に使わせると言うものになっていったのである。


自分の体力や、精神を考えるならば、臨時職員で様子を見ながら、働き方も考える事もできたはず。


まるで、「自分が収入を得なければ」と言うものになり、ならば、妹も収入を得ていたのだから、協力すれば良いものの、妹は、得た収入は、自分の為に使い、姉である自分は、常に家族を考えながらになっていたのだ。


その考えになんの疑念もない。


正に、「自己犠牲」と言うものが表に表れた時期であった。


「自己愛」など、全くない、


「自己犠牲」の始まりだった・・・。




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