第3話 「素直」と「頑固」

前回の終わりに出てきた「素直」な自分。大人は口を揃えて私の事を「素直で良い娘だ」そう言っていた。


だが、それは、真の姿ではなく、表に表れていた単なる仮の姿でしかなかったのだ。

その証拠に社会人になってから、私はこの「素直」から「頑固」と呼ばれるようになる。そればかりか、家族内では「ごって牛」とも。

この「ごって牛」とは牛が言う事をきかずに動かない姿を表す言葉らしい。


なぜ、そんな自分になったのか?

そんな自分自身になったのではなく、社会人になり、ようやく、自我に目覚めたに過ぎないだけだったのだ。


素直だったころの自分。それは、親の言う事をよく聞き、反抗などするわけもなく、学校でも、真面目で先生の手を煩わせるなんてありえないような子供だった。


そして、それは大人達だけではなく、友達、クラス内でもだ。


友達との関係も相手に合わせ、あまり自分自身を表には出さない。そんな私だった。


今考えるにその頃の私と言う自分は、素直とは呼べず、唯の臆病な自分でしか過ぎなかったのだ。


母親に対しては、絶対的な存在であった為、逆らうなど感覚もなく。


その他の人達には、従順であれば、自分自身の身を守れると言う自己防衛が無意識に働いていたにすぎない。


では、なぜ従順な自分でなければならないのか?

それは、一言で言えば、相手の反応が恐い。ただそれだけだったからだ。


「相手の反応」とは私が相手からの投げかけに対して違う自分の考えがあり、それを言えば当然相手からの反応が自分に帰ってくるからで。


例え、相手とは違う事を言えば、反論を受ける事に。その反論にまた答えると、相手の表情は変わるわけだ。


私は何度かこのような経験があったのだろう。その度に自分自身が嫌な思いをし、時には自分が攻撃を受けることを知ったのだろう。


その典型的だったのが、親の反応だったのだろうと予測がつく。


それは、普段日頃から、親に反抗的な妹と、母親から一心に愛情を受けていた弟。

この妹弟のように、何か母親から頼まれ事をされ、同じように私が面倒くさいと言うような態度に出た時の母親からの反応が違っていたからだ。


子供ながらに二人との母親の反応の違いを私は感じていたのである。


小学生の頃はその親の反応の違いの意味がわからなかったが、中学、高校と歳を重ねていくと、親の心理が見えてくるのだ。


母親のあの反応の違いは、当時高校生位だったか、短大生位だったか、私が母親に話したことがある。


私の考えはこうだった。

母親から見て日常から、素直で従順な娘が自分に逆らったとなるわけである。

これは、自分に服従していた人間が手を翻し反抗したと見なした。


しかし、日常的に反抗する妹、人間にはさほど、反抗されてもそれが当たり前の感覚であった為、母親からは、腹もたたない。


と言うような心理が働くのではないかと。


それを母親本人に話したことがあったのだ。

するとどうだろう、彼女はあっさりと認めたのである。


「自分の言う事をきかない者より、きく方に声はかけるものだ」と。


なんと言うことなのか。。。


実の母親でさえ、そうなのだ、これが他人様ともなるともっと酷い事になると感覚で当時は捉えていた自分だったのではないだろうか。


あの頃の私の「素直」とは、「素直」ではなく、「自己防衛」にしか過ぎなかっただけであったのだ。



育った環境、育てられた者により、私は学習していくのだ、

「自分自身を守る為には。」を


そして、いつの間にかその

「自己防衛」が故の「他者に重きを置く」となり変わり、そして、それが、ついには

「自分の幸せ」ではなく、「他者の幸せを願う」と言うものに変化をとげるのだ。


皆様はここまで読み、この人格形成が不健康であるとは思わないだろうか?


もしも、真に「他者の幸せを願う」そんな綺麗な心の人格形成がなし得るならば、こんな不健康な道は辿らず、


健康的ならば、まずは、自分自身を思いやる、「自分を大事に思う。」

それが土台となるのではないだろうか。


その土台が無い不健康な人格形成がなされ、それは、厄介な事に誰からも気づかれる事もなく、じわじわと広がり、本人ですら、わからないまま突き進む事になるのだ。


次回は変化を遂げた自分自身を見てみよう。

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