彼女のことが好きなのか?

「お前、霧島さん亮介のやろーと一緒にいたけどよぉ。どうしたんだ……あ、さては別れたんだな!」


 昼休みの終わり頃、教室へと戻ってくると俺の席に各務原修也が座っていた。


「うるせえ!」

「マジか!? ……え」と戸惑う修也。

「ああ、マジだ」

「そ、そうか。す、すまん!」と気まずそうに言い席を立ち上がり去っていく修也。


 空いた席に俺はつく。


 ふと疑問が湧いた。

 あれ……俺は本当に紗倉が好きなんだろうか。

 だから俺はあんなことを言ったんだ。

 そう思いたい。

 けれど……何か今思うと紗倉なんて……。


 ジーっと五人から視線を感じる。


 普段は仲良く話しているのをみたことがないが、ゴホン。

 俺によって五人は昼ごはんを一緒に食べ現在も一緒にまとまり俺を見ているようだ。


 ……なんか恥ずかしいな、おい!



 放課後──。


「私が士郎の隣だから!」

「はあ……?? あたしが……って別にこいつが好きってことじゃ」

「ならいいじゃん!」と俺の右手を恋人繋ぎで繋ぎだす絵梨花。

「そういうことじゃなあああい!!」と喧嘩をしだす絵梨花と美香。


 もう片方の手では。


「シーくんは私と繋ぐもんねぇ〜」

「違います、士郎さんは私とですよね?」


 睨み合う玲奈と裕子。


「じゃ、じゃあ……私が春山さんと!」と恋人繋ぎで手を繋ぎ出す月美。

 何かモゾモゾと指先を動かしていてエロい。


「「あああ──っ!!」」と二人は月美を睨む。


 モテ期……すぎだろ。

 両手にいや両手じゃ足りないほどの花束だ。

 って……そうじゃない!


 俺は両手を振り払う。


「おい、お前ら。確かに嬉しい、嬉しいけどよ! 周りを、周りをみてくれ!!」


 この俺と五人の美少女の光景に横切る水原高校男子生徒たちが舌打ちをしながら何やら陰口をしている。

 それもそうだ。

 一人単体でもすごい人気の美少女を俺は五人連れているのだから。


「シーくん、すごい人気だぁ」

「違えよ! 俺じゃなくてお前らだ!! ……いや、この場合は俺なのかもしれん。確かに人気者だ……じゃ、ねーよ!!」


 まさかここまでイチャイチャしてくるとは考えていなかった。

 現在は俺の家に五人がくることに知らない間になってしまったようだが、六人で仲良く話しながら帰る程度だと思った。

 こうなるとは予想してなかった。

 いやできただろうけどさ。


「本当に嬉しいよ、こんな美少女たちに挟まれてさ。でも……もう少し場所を考えよう? これじゃあ、癒されても癒されても心が傷ついてループしちゃう」

「は、春山くんが傷つくたびに私が癒します!」

「あっ、あたしも」

「私もです」

「はーい! 私も〜!」

「私もそうする!」


 キラキラと輝く五人の美少女の目が眩しい。

 本当に俺のことを大切に思っているんだなと心から思ってしまう。


 なんて俺は幸せ者なんだ。


「本当にありがとう、でもこういうところでは控えて欲しい。ごめんな」

「「「「「は〜い!」」」」」


 まあこれで明日には俺と五人の関係が校内中に広がるんだろうな。

 紗倉の元にも……。

 なんだろうか、この変なモヤモヤは。

 なぜ俺はそんなに紗倉にこだわるんだ?

 ここにはこんなに俺のことが好きな女の子がいるというのに。

 幼馴染だから……?

 別に一人より多い方がいいじゃないか。

 何だか紗倉に冷めている気がする。

 いや気がするのではなく実際冷めてしまったようだ。

 ならこの気持ちはなんなんだろうか。

 ああ、そういうことか。

 ただあいつに神本に復讐がしたいだけなのかもしれない。

 シンプルに俺はあいつが嫌いなんだ。

 もう一つ、疑問がある。


「それでなんで俺の家に……」


 俺の家に来るよりどこかで寄り道するものなのではないのか?


 ピタリと五人の美少女は足を止めた。


 え、なんだ?


「「「「「そんなの復讐計画をするため!!」」」」」


 そしてまるで台本があったかのように口を合わせて五人の美少女を言った。


 ……本当にこの子たちは俺のことが好きなんだな。


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