五人の美少女
ほら、やっぱり誰も来ないじゃないか……。
午後五時になろうとしていた。
放課後になってから一時間ほど経っているというのだ。
だがいまだに誰一人と屋上にはやってこない。
ちなみに昼休みこそ屋上は人気だが、放課後になると誰一人いない人気のない場所へと変わるのだ。
「夢の見過ぎだな……くそ……」
もしかしたら、誰か一人くらい来てくれると思った。
もちろんそんなことはなかった。
ふと、フェンス越しに──。
「…………くそぉ」
紗倉と神本が恋人繋ぎで仲睦まじく下校している姿が目に焼きつくされた。
「めちゃくちゃ幸せそうじゃねぇかよ……」
俺と過ごした時間はなんなんだよ。
少なくとも神本よりも長いはずだ、なのにあんな楽しそうな顔。
俺は一度も見たことねえよ!
「……よし、死のう。これ以上二人の恋愛を見る前に」
本当に楽しい人生だったな。
将来、紗倉と結婚して子供を産んで楽しい家庭を築き上げていくものだと思っていたな。
「くそ、くそ、くそ、くそ──ッ!!」
紗倉……俺は一生お前を許さないからな。
死んで霊なって呪ってやるからな。
と、その時だった。
ガチャリ──。
背後からドアノブがあいた音がした。
「ちょっと、あなたたちは誰なの!?」
「そっちこそ誰なんですか……?」
「あたしはシローに会うために来たんじゃないんだからね!」
「わ、私は春山くんに!」
「私もでーす!」
五人の女子の声がした。
それも誰か知っている。
え……?
いやそんなはずない。
聞き間違えか?
慌てて後ろを振り向いた。
そこには──。
「ねえ士郎、この子たちは!?」
「士郎さん、これは?」
「べっ、別にそっちがそうなら」
「こ、こうやって話すのは初めてですね」
「しーくん、これはどういうことなんですか〜!?」
右から、神崎絵梨花、黒崎玲奈、西園寺美香、石川月美、白宮裕子。
──俺が告白した五人である。
なんで……。
一人なら、そう思っていたのに。
二人でも三人でも四人でもなく。
全員がここに……?
あれ、もしかしてもう俺死んじゃったとかそんな感じか?
ここは極楽浄土ってか?
おかしい。
絶対におかしいだろ。
「なんで……」
? と五人の美少女は俺を不思議そうに見る。
一人でも破壊級の美少女だ。
それが五人揃ってしまうなんて……。
いや、違う。
そうじゃない。
これは俺をからかいに来たんだ。
きっとそうだ。
紗倉に振られ挙げ句の果てに浮気されたこの俺がそんなにモテるはずなんてないのだから!
でもでもでもでも、一人ぐらいならとか。
気づけば、自殺しようという気持ちが薄れつつあった。
「なんでって何よ!?」
「そんなの理由は一つしかないじゃないですか……」
「べっつに付き合うためにとかなんかじゃないんだから!」
「ぜ、ぜ、ぜひ私と付き合ってほしく」
「そんなのオッケーだからに決まってるじゃないですか〜!」
ははは、死んでいないのなら夢だ。
夢に違いない。
多分紗倉と神本の姿を見てショックのあまり気絶したんだ。
「そうか〜。うん、そうか! はははははは!」
はあ……いい夢を見れた。
よし、これで悔いはない。
目を覚ましたらさっさと自殺しよう。
よーし、目を覚ませ!
俺は思いっきり自分の頬をビンタする。
「いってぇええ!」
が、痛かった。
ありえないくらい痛かった。
……夢じゃない?
んなはず……いや、夢じゃないぞこれは。
じゃあ、これは現実……?
信じられない、だがそういうことだ。
「あの……もしかしてみなさんは俺のことが好きだったり……? ここに来たってことは付き合うということで……あってる?」
すると戸惑いもなく五人の美少女は一斉にコクリと頷いた。
「まじすか……」
どうやらモテ期が来てしまったらしい。
ひとまずだ、修羅場と化してしまったなこれ。
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